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'''春雨物語'''は、[[上田秋成]]による小説集。収録されるのは、「血かたびら」「天津処女(あまつをとめ)」「海賊」「二世の縁(にせのえにし)」「目ひとつの神」「死首の咲顔(しくびのゑがほ)」「捨石丸」「宮木が塚(みやぎがつか)」「歌のほまれ」「樊噲(はんかい)」の十篇。
== 概要 ==
 
[[上田秋成]]による小説集。収録されるのは、「血かたびら」「天津処女(あまつをとめ)」「海賊」「二世の縁(にせのえにし)」「目ひとつの神」「死首の咲顔(しくびのゑがほ)」「捨石丸」「宮木が塚(みやぎがつか)」「歌のほまれ」「樊噲(はんかい)」の十篇。
 
 
== 諸本 ==
刊本ではなく、写本により伝えられる。(1) [[富岡鉄斎]]旧蔵本(五巻本)、②(2) 漆山又四郎旧蔵本(十巻本)、③(3) 桜山文庫本(十巻本)、④(4) 西荘文庫本(十巻本)、⑤(5) 田原本などがあり、本文は諸本によって異なる。このうち、②③④ (2)(3)(4) は、奥書から、文化5年に成立したテクストに基づいていることが分かる。 (1) は、秋成自身により、その後大幅に改稿されたものである。
 
刊本ではなく、写本により伝えられる。①[[富岡鉄斎]]旧蔵本(五巻本)、②漆山又四郎旧蔵本(十巻本)、③桜山文庫本(十巻本)、④西荘文庫本(十巻本)、⑤田原本などがあり、本文は諸本によって異なる。このうち、②③④は、奥書から、文化5年に成立したテクストに基づいていることが分かる。①は、秋成自身により、その後大幅に改稿されたものである。
 
 
== 内容(部分) ==
; 海賊
 
海賊<br>: 土佐国司としての任期が終え、京へと進む[[紀貫之]]の舟へ、海賊が追いかけてきた。海賊は、貫之に『[[続万葉集]]』の名義、『[[古今集]]』[[真名序]]の内容や撰歌のあり方に疑義を呈する。また、[[三善清行]]の[[意見封事十二箇条]]を引きながら、社会批判をも行う。滔々と論じる海賊に、周囲の舟人らも賛同し、本来、歌文の道を事とする貫之は言い返すこともできない。海賊はさらに帰京後の貫之に書状を送りつける。見れば、一部分は三善清行を讃える史論であり、また一部分は貫之は漢字の字義から考えれば「ツラヌキ」と読むべきだと難癖であった。後に聞けば、海賊は放蕩狼藉が原因で都を追われた文屋秋津であるという。
; 目ひとつの神<br>
<br><br>
: 相模国小余綾(こゆるぎ)の浦で育った若者が、歌を教わりたいと考え、京を目指す。途中近江老曾(おいそ)の森で、夜中、修験者、一つ目の神、法師、神主、獣らによる宴に出くわす。神は若者に、「京では芸道という枠組みにより、個人の才能の発露が制約されており、そのような環境で歌を学んでも益はない。東国でしかるべき師匠を見つけ、自身が歌を深めていくことこそ大事である」と説くのであった。<br>
目ひとつの神<br>
相模国小余綾(こゆるぎ)の浦で育った若者が、歌を教わりたいと考え、京を目指す。途中近江老曾(おいそ)の森で、夜中、修験者、一つ目の神、法師、神主、獣らによる宴に出くわす。神は若者に、「京では芸道という枠組みにより、個人の才能の発露が制約されており、そのような環境で歌を学んでも益はない。東国でしかるべき師匠を見つけ、自身が歌を深めていくことこそ大事である」と説くのであった。<br>
 
 
== 評価 ==
 
秋成晩年の思想・認識の到達点がうかがえる作品。物語の持つ、歴史的要素(正史としての性質)と虚構的要素(寓言としての性質)のどちらにもとらわれず、両者を自由に駆使しながら作品を形成している。文章は極度に省筆されている。
 
 
== 活字本 ==
* [http://opac.ndl.go.jp/recordid/000001448428000002452854/jpn 『新日本古典文学全ISBN:4-09-658078-3]
 
* [http://opac.ndl.go.jp/recordid/000002452854000000961167/jpn 『新編日本古典文学全集ISBN:4-09-658078-3]<br>
* [http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000961167000001448428/jpn 『新潮日本古典文庫集成』]<br>
<br>(以上、[[国立国会図書館]]OPACへのリンク)<br><br>
[http://opac.ndl.go.jp/recordid/000001448428/jpn 『新潮日本古典集成』]
<br>(以上、[[国立国会図書館]]OPACへのリンク)<br><br>