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{{分割改名提案|宇宙マイクロ波背景放射|宇宙赤外線背景放射|宇宙X線背景放射|date=2009年1月}}
'''宇宙マイクロ波背景放射'''(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ、cosmic microwave background (radiation); '''CMB'''、CMBR)とは、[[宇宙空間天球]]の全方向からほぼ[[方的]]に観測される、さまざまな[[周波数]]の[[電磁波]]の[[放射]]を指す。'''宇宙背景輻射'''と呼ぶ場合もある。最も代表的なものは'''宇宙[[マイクロ波]]背景放射'''ある。その他に[[X線スペクトル]]は2.725[[赤外線ケルビン|K]]背景[[黒体放射などが知られ]]に極めてよく一致している。
 
単に'''宇宙背景放射''' (cosmic background radiation; CBR)、'''マイクロ波背景放射''' (microwave background radiation; MBR) とも言う。黒体放射温度から3K背景放射、3K放射とも言う。宇宙マイクロ波背景輻射、宇宙背景輻射など言う(輻射は放射の同義語)。
==宇宙マイクロ波背景放射==
'''宇宙マイクロ波背景放射''' (Cosmic Microwave Background; CMB) は宇宙全体から観測される[[マイクロ波]]の背景放射である。その周波数分布は2.725Kの[[黒体]]放射にほぼ完全に一致している。詳しくは後述する。
 
==CMBとビッグバン==
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[[Image:Firas spectrum.jpg|thumb|right|250px|COBEで観測された宇宙マイクロ波背景放射のスペクトル]]
 
以下では宇宙マイクロ波背景放射(CMB)について詳述する。
CMBの放射は、ビッグバン理論について現在得られる最も良い証拠であると考えられている。[[1960年代]]中頃に CMBが発見されると、[[定常宇宙論]]など、ビッグバン理論に対立する説への興味は失われていった。標準的な[[宇宙論]]によると、CMBは宇宙の温度が下がって[[電子]]と[[陽子]]が結合して[[水素]]原子を生成し、宇宙が放射に対して透明になった時代のスナップショットであると考えられる。これはビッグバンの約40万年後で、この時期を「[[宇宙の晴れ上がり]]」あるいは「再結合期」などと呼ぶ。この頃の宇宙の温度は約3000Kであった。この時以来、輻射の温度は宇宙膨張によって約1/1100にまで下がったことになる。宇宙が膨張するに従って CMBの[[光子]]は[[赤方偏移]]を受け、宇宙のスケール長に反比例して波長が延び、結果的に輻射は冷える。この背景放射がビッグバンの証拠とされる理由について、詳しくは[[ビッグバン]]を参照のこと。
 
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CMBが放射された後、最初の恒星が観測されるまでの間、観測可能な天体が存在しないことから、宇宙論研究者はこの時代をユーモア混じりに'''[[暗黒時代 (宇宙)|暗黒時代]]'''(dark age)と呼ぶ。この時代については多くの[[天文学者]]によって精力的に研究されている。
 
==CMBの特徴==
CMBの特徴の一つに、エネルギー分布が黒体放射と非常に良く一致しているという点がある。CMBの温度は場所ごとに異なっている(すなわちわずかに[[非等方性]]がある)が、ある方向でのスペクトルは黒体放射にほとんど一致するといって良いほど似ている。
 
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もっと興味深いのは、約数十分角から数度のスケールで見られる約10<sup>-5</sup>程度の非等方性である。この非常に小さな変動は[[ザックス・ヴォルフェ効果]]の結果である。これはCMBの光子が重力[[赤方偏移]]を受けて生じるものである。[[インフレーション理論]]によれば、この変動の起源は[[量子ゆらぎ]]がインフレーションによって引き伸ばされたものであり、宇宙の初期ゆらぎそのものである。この変動の角度に関する[[パワースペクトル]]は([[多重極モーメント]]成分の振幅として)理論的に計算することができ、パワースペクトルにいくつかのピークや谷が存在することが分かる。このピークや谷の位置は[[ハッブル定数]]などの[[宇宙論パラメータ]]や宇宙の幾何学に依存するため、これを実際の観測と比較することで[[宇宙モデル]]を決めることができる。
 
==CMBの検出、予言、発見==
CMBは[[ジョージ・ガモフ]]、[[ラルフ・アルファー]]、[[ロバート・ハーマン]]によって[[1940年代]]に予言され、[[1964年]]に[[アメリカ合衆国]]の[[ベル研究所|ベル電話研究所]](現ベル研究所)の[[アーノ・ペンジアス]]と[[ロバート・ウィルソン]]によって[[アンテナ]]の[[ノイズ|雑音]]を減らす研究中に偶然に発見された。ペンジアスとウィルソンはこの発見によって[[1978年]]に[[ノーベル物理学賞]]を受賞した。この CMBの解釈をめぐっては、[[1960年代]]に「CMBは遠方銀河の恒星からの光が散乱されたものである」とする定常宇宙論の支持者との間に激しい議論が巻き起こった。[[1941年]]に[[アンドリュー・マッケラー]]がこの散乱光モデルを採用し、恒星の幅の狭い吸収線の研究に基づいて、「星間空間の'回転'の温度は2Kになる」とする論文を発表しており、同時期にエディントンなども同様の説を提案していた。ガモフらは当初、背景輻射の温度として約5K程度を予想していた一方で、散乱光モデルを支持する研究者たちは2~3Kになるというモデルを提案し、輻射の温度の予測値だけを見ると散乱光モデルの方が現実の値に近いものであった。しかし[[1970年代]]に入ると、研究者たちのコンセンサスはCMBがビッグバンの名残であるとする説に傾いていった。天文学者たちのコミュニティがCMBの成因としてビッグバンを支持するようになったのは、星の光の散乱光というモデルから期待されるよりもCMBがずっと滑らかである(非等方性が小さい)という観測結果が積み重ねられたためである。
 
[[電子レンジ]]の原理から分かるように[[水]]はマイクロ波を吸収するため、CMBを地上の観測機器で観測するのは非常に難しい。そのため、CMBの研究では[[大気圏]]または宇宙空間で観測装置を用いることが多くなっている。地上でのCMBの観測は、[[チリ]]の[[アンデス山脈]]や[[南極]]といった高度の高い場所や極地で行われている。
 
==CMBの観測実験==
上記のような観測実験の中でも、[[1989年]]から[[1996年]]にかけて行われた[[COBE]]衛星ミッションはおそらく最も有名なものである。この衛星によって初めて、双極成分以外の大スケールでの非等方性が検出された。COBEの結果に触発されて、続く10年間に一連の地上もしくは気球を使ったCMB観測実験が行われ、より小さな角度スケールでの非等方性が測定された。これらの実験の最初のゴールは、COBEで十分に分解できなかったパワースペクトルの最初のピークのスケールを測定することだった。これらの測定によって、宇宙の[[構造形成]]の理論として[[宇宙ひも]]を考える説は棄却され、インフレーション宇宙が正しい理論であることが示唆された。パワースペクトルの最初のピークは年々高い感度で測定され、[[2000年]]には南極の大気圏上層部での気球による[[BOOMERanG]]実験によって、1度というスケールでゆらぎのパワーが最も高くなることが報告された。この結果を他の宇宙論の観測データを総合すると、我々の宇宙は平坦であるという結果が示唆された。その後[[2003年]]までに、[[カリフォルニア大学]]バークレー校のチームによる[[MAXIMA]]やVery Small Array、Cosmic Background Imagerといった多くの地上の[[干渉計]]によって、より高精度のゆらぎの観測が行われた。
 
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3機目の宇宙ミッションであるPlanck Surveyorが2009年4月に打ち上げられる。このPlanck衛星は[[ボロメータ]]を搭載し、WMAPよりも小さなスケールでCMBを測定する予定である。前の2機とは異なり、PlanckミッションはNASAと[[欧州宇宙機関|ESA]]の共同ミッションである。
 
==CMB以外の宇宙背景==
CMB以外にも、天球上から等方的に検出される現象があるが、互いに関連は薄い。
==*[[宇宙マイクロ波赤外線背景放射==]]
*[[宇宙X線背景放射]]
*[[宇宙ニュートリノ背景]](放射ではない)
 
==参考文献==
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* [[熱力学温度]](ケルビン)
 
[[category{{DEFAULTSORT:宇宙論・宇宙物理学|うちゆうはいけいほうしや]]}}
[[Category:宇宙論・宇宙物理学]]
[[Category:電波天文学]]
 
[[bg:Реликтово излъчване]]