「貨幣学」の版間の差分

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現在では概ねこのような専門的な収集家と、現行のコインを年号別にコレクションしたり、紙幣の変わり番号をコレクションする人々に二分される。また中には希少年号やコインに開けられた穴の位置のずれ、紙幣における印刷ミスなどのエラーコインや紙幣を専門に収集する人もいる。エラーコインや紙幣の収集家は諸外国にも多いが、単なる変わり番号の紙幣の収集においては、日本ほどの人気は無く、マーケットも確立していない。<br>
日本では希少な番号の紙幣を入手しようと、[[2004年]]のE券新紙幣発行の際には[[日本銀行]]の一部支店において、行員が連番の新紙幣数枚と通常の番号の紙幣を無断で交換する事件もあった。日本における商用を目的とした貨幣商の動向として、[[日本貨幣商協同組合]]に代表される組織・団体が、定期的に東京、名古屋、大阪などで展示即売会を開催し、販売、鑑定、買取などを行う他、インターネットを利用した[[古銭]]・他[[通貨]]のオークションも一般的である。また、[[収集型金貨]]や、[[地金型金貨]]を専門に扱った企業も存在するなど、日本における貨幣市場も意外に大きい。
 
しかし、通常販売されているコインなどは、アメリカに代表されている世界的なグレーディングの基準からすると一般的に採用される「未使用」「極美品」「美品」「並品」の基準は極めて曖昧である(この曖昧なグレーディング基準を避けるためか、コインショー会場で「この未使用品はNGC MS63相当です」といった会話が頻繁になされる)。また、店頭で並ぶ貨幣の多くが洗浄品(ANA基準からするとグレーディングの対象にすらならない)である事実にも注意すべきである。洗浄品について、日本ではコインクリーナーなどという商品が堂々と販売されているのもコインの扱いを十分に知らない業者が多いことに起因すると思われる。店頭の新一円銀貨を例に取ると、NGC/PCGSのスラブに入るのはおよそ半分もないだろう。現在の日本の業者で、欧米の著名な業者と同等の知識、ノウハウを有しているのはほんの2、3社であろう。未洗浄のコインを探すのは日本ではかなり困難ではあるが、IAPNに加盟しているコインディーラー(日本では2社のみ)から購入するのが賢明であると思われる。但しこれらの業者が扱っているコインが全て未洗浄である保証は無いので、最終的にはコレクター自身の鑑定眼にゆだねられる。この、世界的なディーラーの協会であるIAPNは、1951年に28デーラーでスタートし2008年現在は21カ国114ディーラーが加盟している。この団体に加盟するには、それなりの知識や実績が求められる。以上のように、日本の貨幣市場には明確なスタンダードが無く、完全中立な第三者鑑定機関も存在しないガラパゴス諸島となっている。日本における貨幣市場の流動性向上が強く望まれる。
===日本におけるコイングレーディングの実情===
日本では従来よりコインの状態標記に「未使用」「極美品」「美品」「並品」という極めて曖昧な主観的要素の強い表現が使用されてきた。このことは特に通信販売などでコインを購入した場合など、販売者と購入者の間で、状態基準に差があり、トラブルの原因となることが少なくない。このようなことを避けるため、最近日本でも第三者による科学的な状態判定を基準にすることが、徐々に浸透してきている。これは、アメリカに代表されている世界的なグレーディング機構のPCGSやNGCの基準に従う状態表示をすることにより行われている。コインの展示即売会などの会場で「この未使用品はNGC MS63相当です」といった会話をしばしば耳にするのは、同じ未使用でもどのくらいの状態なのかをより詳細に表したものである。
 
現在日本の業者の店頭に並ぶコインの多くは、いわゆる「洗浄品」であることにも注意する必要がある。貨幣商組合主催のイベントにおいても、コインクリーナーなどという商品が堂々と販売されているのも非常に問題であり、コインを洗浄するのは「傷のないことを見せる」ためだというような業者もいる。これは日本の業者が、いかにコインの取り扱いを知らないかということの裏づけに他ならない。「洗浄品」のコインは、NGCやPCGSのグレーディング機構ではその対象にすらならないことを知っておく必要があろう。
 
===日本におけるコインディーラーの実情===
世界的なコインディーラーの協会として、IAPNという団体がある。このIAPNは、1951年に28デーラーでスタートし、2008年現在は21カ国114ディーラーが加盟している。この団体に加盟するには、それなりの知識や実績が求められるが、日本の業者でこの協会に加盟しているのは僅か2社であり、この2社を始めとし現在の日本の業者で、欧米の著名な業者と同等の知識、ノウハウを有しているのはほんの数社であろう。多くの業者が先代からの財産を引き継いだ単なる「古物商」的な業者である実情からは、この現状も
いたしかたないであろう。
 
先に記したように多くの店頭のコインが「洗浄品」であるなら、ナチュラルな未洗浄のコインを探すのはどうすれば良いかということになるが、これは日本ではかなり困難である。IAPNに加盟しているコインディーラーから購入するのが賢明であると思われるが、これらの業者が扱っているコインが全て未洗浄であるとはいえない。従って結局はスラブケースに入ったNGCやPCGSのグレーディング済みのものを購入すれば良いということになる。もちろんスラブケース以外でもナチュラルなコインは存在するので、最終的にはコレクター自身の鑑定眼にゆだねられる。
 
ただ、このようなことは、あくまで貨幣学上、過去の遺産であるコインをなるべく当時の状態のまま保存し、後世に伝えるという目的での話であり、実際にコインコレクター全てにこれらを強要することはできない。コレクションはあくまで、個人の趣味であり、コレクター自身のスタンスがあるので、あながち「洗浄品」コインが全く価値が無いと決め付けるのも早計である。
 
いずれにせよ、現在の日本の貨幣市場には明確なスタンダードが無く、完全中立な第三者鑑定機関も未だ存在しないため、アメリカのような真の意味のマーケットが確立されていないともいえよう。
 
==関連項目==