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[[画像:Copyright.svg|thumb|万国著作権条約の著作権表示に必要な©記号]]
 
'''著作権表示'''(ちょさくけんひょうじ)は、[[著作権]]を得るのに手続き等が必要([[方式主義]])な国で著作権保護を受けるために、外国の著作権者が手続きの代わりとして[[著作物]]に付ける表示である。
 
ただし現在は、ほぼ全ての国で著作権は自動的に発生する([[無方式主義]])ので、本来の意味は薄れている。
 
==法的背景==
どのような時に著作権の発生を認めるかについて、法学的には無方式主義と方式主義とがある。
;無方式主義
:著作物を著作もしくは発表した時点で自動的に著作権が発生する。
;方式主義
:納入、登録、表示、[[公証人]]による証明、[[手数料]]の支払い、自国内における製造もしくは発行<ref>万国著作権条約第3条1より一部書式変更</ref>などといった「方式」を履行することにより著作権が発生する。
 
方式主義の背景には「[[複製者]]の権利」を重視する思想がある。複製者の権利は天賦のものであり、それを制限するにはそれなりの手続きが必要という考えである。[[英語]]で著作権のことを「copyright(複製権)」と呼ぶのもこの影響である。一方、無方式主義では「[[著作者]]の権利」を重視する。
 
[[ヨーロッパ]]諸国は無方式主義を取っており、それらの国々は[[1886年]]に[[文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約|ベルヌ条約]]を締結した。ベルヌ条約は無方式主義と[[内国民待遇]]を定めており(他にもあるが著作権表示には関係しないので省略)、加盟国は他の加盟国の著作物も、自国の著作物同様に(当然、無方式主義でということになる)保護しなければならない。[[日本]]など後発加盟国も、これらに従うことになる。
 
一方、[[アメリカ合衆国]]など[[アメリカ大陸]]のいくつかの国は方式主義を取っており、[[1902年]]に[[パンアメリカン条約]]を締結し、加盟国間で方式主義による著作権を保護した。
 
うして、著作権の国際的な保護について世界に2つの陣営が並立し、相手陣営では著作権の保護が受けられなくなった。この問題を解決するため、[[1952年]]に[[万国著作権条約]]が締結された。この条約の第3条1により、加盟国間ならば、無方式主義国で作られた著作物は方式主義国内では著作権表示が方式とみなされ、著作権表示があれば保護されるようになった。
 
なお、逆に、方式主義国の無方式主義国で保護を受けるには、著作権表示は必要ない。万国著作権条約も内国民待遇を定めているので、加盟国間ならば自国の著作物同様、無方式主義に基づき保護される。
 
==万国著作権条約第3条1==
1952年条約、[[1971年]]改正条約とも同一。
{{Cquote|締約国は、自国の国内法令に基き著作権の保護の条件として納入、登録、表示、公証人による証明、手数料の支払又は自国内における製造若しくは発行のような方式に従うことを要求するときは、この条約に基いて保護を受ける著作物で、自国外で最初に発行され、かつ、その著作者が自国民でないものについて、著作者又は著作権を有する他の者の許諾を得て発行された著作物のすべての複製物にその最初の発行の時から&copy;の記号が著作権を有する者の氏名及び最初の発行の年とともに表示されている限り、これらの要求が満たされたものと認めなければならない。ただし、その記号、氏名及び発行の年は、著作権が留保されていることを表示するのに適当な方法で、かつ、適当な場所に掲げなければならない。}}
 
==書式==
著作権表示には3つの要件が必要である。
*&copy;の記号 (symbol &copy;)
*著作権者の氏名 (name of the copyright proprietor)
*最初の発行の年 (the year of first publication)
 
順序は定められておらず、この順序でなくてもいい。慣習的に「&copy;」を最初に書くことが多いが、氏名と年の順序はさまざまである。
 
使用する[[文字]]や[[紀年法]]も特に定められていないが、国外での著作権保護のためという目的上、[[ラテン文字]]と[[西暦]]を使うのが普通である。
 
===&copy;記号===
ベルヌ条約加盟前の[[アメリカ合衆国]]の国内法では、「&copy;」以外に「Copyright」や「Copyr.」も認められていた。ただし、国際的に通用することが万国著作権条約で保障されているのは「&copy;」のみである。
 
[[コンピュータ]]や[[タイプライター]]の文書では、慣習的に「(c)」や「(C)」も使われる。
 
===著作権者の氏名===
著作者ではなく著作権者の氏名を表示する。つまり、著作者が著作権を[[譲渡]]・[[売却]]等した場合は、譲渡等された者の氏名を表示する。
 
氏名は、[[周知]]の[[変名]]([[ペンネーム]]等)でもかまわない。ただし、周知でない変名([[著名]]でないということではなく、誰のことかわからないということ)は認められない。
 
複数の著作権者がいる場合は、全ての名を書く。法的にはどんな順序でもいいが、慣習的に、[[二次著作物]]に[[原作者]]と二次著作物の作者を表示する場合は、原作者を先に書く。
 
===最初の発行の年===
複数のバージョンがある場合は最初のバージョンの最初の発行年を表示する。たとえば、1990年に最初のバージョンを発行した著作物の、2000年に発行した改定バージョンにつける著作権表示では、「1990」が正しい。これ以外を表示してはいけないということはないので「1990-2000」は問題ないが、「2000」だけでは間違いである。
 
==必要性==
[[ファイル:Berne Convention.png|thumb|ベルヌ条約加盟国(2008年・随時更新)]]
===著作権表示が有効な国===
著作権表示は、国内での著作権保護に対しては、本国が方式主義か無方式主義か、相手国が方式主義か無方式主義かに関わらず、不要である。必要なのは、万国著作権条約に加盟している無方式主義国の著作物が、方式主義の国で著作権保護を受けたいときである。
 
かつては[[アメリカ合衆国]]や一部の[[中南米]]諸国が方式主義の万国著作権条約加盟国であり、著作権表示はそれらの国で著作権保護を受けるために必要であった。しかし、アメリカは[[1988年]][[10月31日]]に著作権法を改正して無方式主義に切り替え、[[1989年]][[3月1日]]に改正が発行し同日にベルヌ条約に加盟した。中南米諸国もまもなくそれに倣った。その後は、方式主義の[[サウジアラビア]]が[[1994年]][[7月13日]]に万国著作権条約に加盟したが、[[2004年]][[3月11日]]にはベルヌ条約にも加盟した。
 
現在では、ほとんどの国はベルヌ条約加盟国(したがって無方式主義)である。わずかな非加盟国もほとんどは、そもそも万国著作権条約にも加盟しておらず、著作権表示は(著作権が認められるか認められないかはともかく)意味がない。なお、双方に非加盟の国(地域)として[[台湾]]が有名だが、[[知的所有権の貿易関連の側面に関する協定|TRIPS協定]]加盟国なのでベルヌ条約相当の条約義務を負っている。
 
著作権表示が有効な国があるとしたら、
*方式主義(したがってベルヌ条約に非加盟)で、かつ、次のいずれか。
**万国著作権条約加盟国。なお、これに当てはまる可能性がある、ベルヌ条約に非加盟(方式主義とは限らない)の万国著作権条約加盟国は、[[ラオス]]と[[カンボジア]]である<ref>[[:en:List of parties to international copyright agreements]]</ref>。
**万国著作権条約にも非加盟だが、万国著作権条約とは無関係に著作権表示を認めている国。
ということになるが、現在も存在するかどうかはっきりしない。
 
===副次的な目的===
そのため現在は、本来の目的とは異なる、次のような副次的目的が主となっている。
*著作者の[[氏名表示権]]の行使として。
*利用者が、(著作権が発生したことは前提として)著作権消滅の年や、許諾を得るための連絡先を知りたいときに役立つ。
*[[善意]]の侵害の防止(後述)
 
もちろん、著作権表示は著作権という[[財産]]の所有者を示しているので、必要がないからといって事実と異なる表示をすると[[違法行為]]に問われる可能性がある。
 
===善意の侵害者===
アメリカ合衆国では、著作権表示が全く無意味というわけではない。
 
1988年の改正著作権法は、ベルヌ条約に従い著作権表示の有無に関わらず著作権を認めてはいるが、著作権表示がない場合の「善意の侵害者 (innocent infrigers)」も認めている。この「善意」とは[[法律用語]]であり、「ある事実を知らずに何かをすること」を意味する。
 
善意で著作権を侵害した、つまり、著作権があることを知らずに侵害してしまった場合、法的責任を問われない。つまり、[[損害賠償]]責任がない([[利益]]は変換を要求されることがある)。
 
しかし、著作権表示があった場合、善意の侵害者であるとは認められない。そのため、著作権表示をしていたほうが法的には無難である。
 
==万国著作権条約以外の表示==
通常著作権表示と言われるのは、万国著作権条約で定められた「&copy;」表示だが、他の著作権表示や類似の表示もある。
 
なお、「&reg;」(マルR)はその直前の語が[[登録商標]]であることを示す表示で、著作権とは無関係である。
 
===&#x24C5;(マルP)===
「&#x24C5;」(マルP)表示は、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」([[レコード保護条約]])第5条で定められている<ref>[http://www.mext.go.jp/unesco/009/003/012.pdf レコード保護条約仮訳(日本語)]</ref>、[[原盤権]]の保護を受けるための表示である。なおこの「レコード」とは法律用語で、[[CD-DA|CD]]、[[Cカセット|カセット]]などあらゆる音楽用メディアの総称である。
 
原盤権とは法律用語では「レコード製作者の権利」と言い、いわゆる「マスター音源」の製作者が有する権利である。正確には著作権ではないが[[著作隣接権]]に属し、[[著作権法]]で定められている。
 
「&copy;」同様、非方式主義国のレコードが方式主義国で保護を受けるための表示である。ただし、原盤権についても現在ではほとんどの国が無方式主義である。
 
「&#x24C5;」記号と、最初の発行年を、レコードまたはその[[容器包装]]([[レコードジャケット|ジャケット]]など)に表示する。「&copy;」表示と違い、レコードまたはその容器包装の表示から原盤権者が明らかなときは、「&#x24C5;」表示自体に名前は必要ない。
 
著作権者と原盤権者が同じときは、「&#x24C5;&amp;&#x24B8; ……」とまとめて表示することもある。
 
===All rights reserved===
しばしば著作権表示に書かれる「All right reserved」は、著作権の保護を受けるための「著作権表示」ではあるが、万国著作権条約とは無関係である。[[1910年]]にアメリカ合衆国など方式主義諸国が調印した[[ブエノスアイレス条約]]第3条で、
{{Cquote|The acknowledgement of a copyright obtained in one State, in conformity with its laws, shall produce its
effects of full right, in all the other States, without the necessity of complying with any other formality, provided always
there shall appear in the work a statement that indicates the reservation of the property right.<ref>[http://www.ipmall.info/hosted_resources/lipa/copyrights/The%20Buenos%20Aires%20Convention.pdf ブエノスアイレス条約原文(英語)]</ref>
}}
{{Cquote|要約: 他の加盟国で著作権保護を受けるには「権利を予約する」という趣旨の表示が必要}}
と定められていることによる。この表示により、ブエノスアイレス条約加盟国間で著作権が保護される。
 
そのため、アメリカのような万国著作権条約加盟国かつブエノスアイレス条約加盟国では、「&copy; 権利者名 発行年 All right reserved」などという著作権表示がされる。これにより、万国著作権条約加盟国とブエノスアイレス条約加盟国の双方で著作権の保護が受けられる。
 
ただし現在では、ブエノスアイレス条約加盟国も全てベルヌ条約に加盟しており、無方式主義により一切の著作権表示なしで著作権が保護される。したがって、「All right reserved」は現在では意味がない。
 
もちろん、日本などブエノスアイレス条約の非加盟国の著作物には、過去・現在とも意味がない。
 
==出典==
<references/>
 
{{DEFAULTSORT:ちよさくけんひようし}}
[[Category:著作権法]]
[[Category:文書作成]]
[[Category:法制史]]
[[Category:アメリカ合衆国の歴史 (1945-1989)]]
[[Category:アメリカ合衆国の国際関係]]