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Synecho (会話 | 投稿記録)
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細菌の細胞外構造体で毛状のもので、鞭毛以外を指す.英語ではpilus(単数形)、pili(複数形)、もしくはfimbria(単数)、fimbriae(複数)ともいう。通常、pilusとfimbriaは区別しないで使用される。性線毛(sex pili),クラスI型線毛、IV型線毛など多数の種類が知られている.線毛は、細菌の鞭毛(らせん型の剛体で、根元で回転して推進力を与える)とは異なる.真核生物の[[繊毛]]ともまったく異なるので注意が必要である.
 
==性線毛==
性線毛は,細菌間の接合において,DNAを送り込む装置として細胞間を連結する.通常、接合を起こすプラスミドに存在する遺伝子からつくられる。接合の相手は、同種の細菌が多いが、別種の細菌、真核細胞の場合もあり、遺伝子の水平移動を起こす主因となる。Rプラスミドによる薬剤耐性の水平移動やAgrobacteriumの線毛(T線毛ともいう)は植物細胞の形質転換は有名である。線毛はIV型分泌装置によってつくられる。
 
==クラスI型線毛==
P線毛とI型線毛を含む。ともに、ロッドと呼ばれる径7 nmの直線状の部分と先端の細くフレキシブルな小繊維からなり、細胞の付着に重要なはたらきをしている。グラム陰性細菌に存在し、ペリプラズムに存在するシャペロンタンパク質を介して線毛の構成タンパク質は外膜に運ばれ、線毛を形成する。腎盂腎炎を起こす大腸菌にはP線毛があり、宿主の尿路細胞表面にあるα-D-galactopyranosyl-(1-4)-β-D-galactopyranosideに結合する。
 
IV==IV型線毛==
IV型線毛は病原性の淋病菌や緑膿菌、大腸菌だけでなく、粘性細菌(Myxococcus)、シアノバクテリアなどにもあり、グラム陰性細菌に広く分布する。役割としては,付着や宿主への感染にはたらくもの、twitching運動やDNAの取込みにはたらくものがある。構造としては、細胞膜から生じ、外膜を貫通して、細胞外へ伸びた毛であり、長さ約2-10 µm、径約7 nmで、内部は中空にはなっていない。線毛全体はフレキシブルで、先端は付着性である。II型分泌装置によって形成され、PilTと呼ぶATPアーゼによって線毛は細胞膜内に引き込まれる。
淋病菌Neisseriaや緑膿菌Pseudomonas aeruginosaでは、IV型線毛は宿主への感染、twitching運動などにはたらいている。粘性細菌Myxococcus xanthusでは,滑走運動を起こしている。twitching運動するシアノバクテリアSynechocystisにも同様の線毛があり、その運動やDNAの取込みに必須である。線毛の先端は周囲の物体に付着し、線毛の根元が細胞内に引き込まれることで、細胞が周囲の物体に引き寄せられるという。このため、線毛による運動は物体表面でのみ起きる。この点では、鞭毛による遊泳運動とは本質的に異なる運動である。DNAなどを細胞内に取り込むときも、この線毛の引き込み運動が利用されるという。