「停滞前線」の版間の差分

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[[ファイル:Stationary front symbol.svg|thumb|200px|天気図における停滞前線の記号。]]
== 特徴 ==
[[日本]]付近をはじめとした[[北半球]]では、[[北極]]に近いほど冷たい[[寒気]]団が、[[赤道]]に近いほど暖かい[[暖気]]団が存在している。そして、これらの[[気団]]で構成される[[高気圧]]がいくつか存在し、季節によって弱くなったり強くなったりしている。
 
高気圧からは(その高気圧を構成する)気団と同じ性質を持った空気が気流([[]])として吹き出しており、より気圧の低いほうへと流れていく。すると、2つの方向からこの気流が流れてきてぶつかる地域が出現する。
 
ここで、2つの気流のどちらかがもう1つよりも強い勢力関係にあると、[[温暖前線]][[寒冷前線]]となる。2つの気流のどちらとも同じくらいの勢力関係であれば、停滞前線となる。
 
このとき、気流の吹き出しは前線の南北で拮抗しているか、南北両方とも吹き出しが弱い状態にある。気流の方向は、高気圧性の[[時計回り]]の風向によるので、前線の北側は東や北東の風、南側は西や南西の風となる。
 
北側の寒気、南側の寒気どちらかの勢力がもう一方を上回ると停滞状態は解消される。温暖前線や寒冷前線に変わる場合もあれば、規模が小さいため[[天気図]]上には描かれなくなることもある。
 
前線の周りの空気の構造を見てみると、温暖前線と同じように、寒気の上に暖気が緩やかな角度で乗り上げる形をしていることが多い。ただ、天気図で停滞前線として描かれていても、局地的には寒冷前線のような構造であったりすることがある。これは、天気図が[[総観スケール]]の気象状態を描くことを重視しているためである。
 
停滞前線の長さは一般的に温暖・寒冷前線と同じ数百km~2,000km程度であるが、時に3,000~4,000kmくらいの長さに伸びることもある。上空から見た前線の[[]]域は幅500~1,000kmくらいである。雲の大部分は前線の北側にある。
 
前線には[[低気圧]]がつきものであり、停滞前線も例外ではない。しかし、停滞前線の場合は低気圧があまり発達せず、天気図に描かれないことも多い。一方、上空では明瞭な[[気圧の谷]]を伴う。また、停滞前線上に低気圧が発達すると、反時計回りの風向になって停滞前線が解消され、温暖前線や寒冷前線に変わってしまう。
 
=== 停滞前線の形状・移動 ===
停滞前線は南北方向にはほとんど移動しないが、その地域の空気の流れ([[偏西風]])とともに常に東に移動している。しかし、見かけ上天気図では移動していないように見える。また、前線は直線的な場合が多いが、[[]]打ったような形をしていることもある。この波打ちを前線性波動と呼び、偏西風の蛇行によって生じるものであるが、停滞前線は他の前線に比べてこれが少ないことが大きな特徴である。
 
また、厳密には、停滞前線は南北の空気の『押し合い』ではなく、南北の空気の境界線(=前線性波動)が波打ちながら東向きに通過していくものである。波打つので、見かけ上は押し合って南北に上下しているように見える。前線が南や北に後退したように見えるのは、前線性波動が南や北に移動してしまったことを意味する。
天候は、どちらかといえば温暖前線の通過時に近いとされているが、場合によっては寒冷前線に似た天候に変わることがある。
 
前線が短時間で通過することは少ないので、変化は感じられにくい。短時間の場合は温暖前線や寒冷前線と同じように[[気温]][[湿度]]・風・[[気圧]]が変化する。
 
前線面にできる雲は主に、前線から北側に向かって順に[[層雲]]、[[層積雲]]、[[乱層雲]]である。[[積乱雲]]が発達する場合もある。
 
多くの場合、温暖前線のような強度変化の少ない弱い[[]]が、さらに長時間降る。雨が数日間降り続くこともある。また、曇天が続くこともある。ただ、時に強い雨が降ることもある。
 
== 地域性・季節性 ==
 
;[[梅雨前線]]
:[[梅雨]]に発生する停滞前線。5月に[[華南]][[南シナ海]]付近で発生し、[[中国]]から[[日本]]付近を北上、8月には[[朝鮮半島]]北部や[[北海道]]付近に達して消滅する。[[亜熱帯前線]](熱帯=夏の空気と温帯=春秋の空気の境目)の1つ。時に[[集中豪雨]]や大雨となることがある。
 
;[[秋雨前線]]
:[[秋雨]]に発生する停滞前線。9月に[[東日本]]付近に発生して南下、10月に日本の南東沖に達して消滅する。亜熱帯前線の1つ。[[台風]]に影響して大雨となる場合がある。
 
*春雨前線([[菜種梅雨]]の停滞前線)
[[ko:정체전선]]
[[pt:Frente estacionária]]
 
<!--[[ファイル:Wfronts.png|thumb|300px|寒冷前線・温暖前線のモデル図]]
[[ファイル:Rolling-thunder-cloud.jpg|thumb|300px|前線の雲]]
[[ファイル:NWS weather fronts.svg|thumb|300px|[[天気図]]で用いる前線の記号<br />1. 寒冷前線 2. 温暖前線 3. 停滞前線 4. 閉塞前線]]
[[気象]]でいう'''前線'''(ぜんせん、weather front)とは、2つの[[気団]]が接触したときに生ずる不連続面('''前面''')が[[地上]]と交わる[[線]]のことをいう。[[気温]]の分布を見ると、前線にあたるところでは気温や[[風向]]・[[風速]]が連続的ではなく急激に変化していることから、かつては「'''不連続線'''」とも表記された。「不連続線」は意味上誤りではないが、20世紀半ばから「前線」に取って代わられた。
 
前線は、[[#寒冷前線|寒冷前線]]・[[#温暖前線|温暖前線]]・[[#停滞前線|停滞前線]]・[[#閉塞前線|閉塞前線]]に分類される。温暖前線は[[暖気]]の流れる方向に、寒冷前線と閉塞前線は[[寒気]]の流れる方向に移動する。一般的には[[偏西風]]の影響を受けて西から東へ動くことが多いが、停滞前線はあまり移動しない。前線が通過する地点では、気温・[[風]](風向・風速)・[[気圧]]などが急変する。
 
== 寒冷前線 ==
'''寒冷前線'''(かんれいぜんせん、cold front)は、冷たい気団が暖かい気団に向かって移動する際の接触面で起きる。[[日本]]付近をはじめ[[北半球]]では、主に[[温帯低気圧]]の進行方向後面に、南西方向に連なって伸びる。寒気と地表の間に[[抵抗]]があるため、上図のように寒気が上空に張り出した形で気団が移動する。寒冷前線が通過すると気温が急に下がる。長く連続した[[雨]]になることは少ないが、[[積乱雲]]が発生するため、短時間で強い雨をもたらし、[[雷]]や[[突風]]、[[雹]]をともなうことも多い。また、温度差が大きい場合[[竜巻]]が発生する遠因になる。
 
== 温暖前線 ==
'''温暖前線'''(おんだんぜんせん、warm front)は、暖かい気団が冷たい気団に向かって移動する際の接触面で起きる。日本付近をはじめ北半球では、主に温帯低気圧の進行方向前面に、東西に連なって伸びる。暖気が寒気に乗り上げるため、上図のように一様に傾斜した境界面ができる。温暖前線通過時には気温がゆっくり上昇する。[[乱層雲]]が発達し、ある程度連続した雨が降りやすいが、その降り方は弱い。ただし、[[南海]]上からの暖かく湿った空気が温暖前線に流れ込んで活動が活発になると、温暖前線特有の[[地雨]]性の降雨でなく、どちらかといえば寒冷前線の通過時にあるような非常に激しい[[雷雨]]になることがある。前線の通過にともない、南よりの風から北または西よりの風に変わる。
 
日本付近では、温暖前線の北側を吹いてくる東風(寒気団)が長らく[[太平洋]]上にあるためかなり温まり、地上や海面上では前線通過時でもあまり気温の変動がない場合が多い。
 
== 停滞前線 ==
'''停滞前線'''(ていたいぜんせん、stationary front)は、暖かい気団と冷たい気団の勢力が等しい状態又はほとんど移動しない状態で接触した場合に発生する前線。上空の風向と、前線の走向が並行になっていると停滞前線ができる。停滞前線は、多くは東西に伸びているが、南方の暖気団と北方の冷気団との相対的な勢力により、南北に上下運動をするので、前者が打ち勝てば前線は北上し、後者が打ち勝てば前線は南下する。雲の状況と雨の降り方は温暖前線に似て、長く連続した雨が降る。
 
'''[[梅雨|梅雨前線]]'''、'''[[秋雨|秋雨前線]]'''などが代表例である。その他、春の「[[梅雨#類似の気象現象|菜種梅雨]]」時や、晩秋から初冬にかけての「[[梅雨#類似の気象現象|サザンカ梅雨]]」時のぐずつき天気も、[[本州]]南岸沿いに伸びる停滞前線に起因することが多い。
 
== 閉塞前線 ==
温帯低気圧から伸びる温暖前線と寒冷前線では、後者のほうが進行速度が大きいため、低気圧の中心近くでは寒冷前線が温暖前線に追いつき、'''閉塞前線'''(へいそくぜんせん、occluded front)となる。温暖前線の前の寒気と寒冷前線の後ろの寒気とは、通常わずかながら温度差があるため、寒気同士が接触すると、その上空に暖かい方の寒気が押し上げられる。なお、閉塞前線を伴った低気圧は暖気が上空に押し上げられてしまうため、発達のためのエネルギーが無くなって弱まって行く。
 
; 寒冷型閉塞前線
: 寒冷前線側の寒気の方が温度が低く、温暖前線側の寒気の下にもぐりこんで行き、閉塞前線は寒冷前線面に沿って形成される。
; 温暖型閉塞前線
: 温暖前線側の寒気の温度が低いため、寒冷前線側の寒気がその上に上昇し、温暖前線面に沿った閉塞前線ができる。
 
== その他の前線 ==
=== メソスケールの前線 ===
[[総観気象学|総観スケール]]の気象を表現する[[天気図]]には描かれないが、[[メソスケール]]で見ると風向・風速や気温が急激に変化している線が現れることがある。この場合も上記と同様の呼び方をする。積乱雲に伴う雷雨の際に、[[対流]]・[[発散]]・[[収束]]によって発生することが多く、このときの寒冷前線を特に[[ガストフロント]]と呼ぶ。
 
=== ドライライン ===
{{Main|ドライライン}}
乾燥帯前線。上記の4前線が温度の不連続線であるのに対して、ドランラインは[[湿度]]の不連続線である。[[乾燥]]した気団が、上記の前線で言う「寒気」と同じように南下・東進し湿った気団に衝突することが多い。[[アメリカ]]では一般向けの[[天気予報]](天気図)にも用いられる。
 
=== スコールライン ===
寒冷前線に沿って、または先行してやってくる前線。もともと寒冷前線の同義語であったが、激しい雷雨に伴う寒冷前線前線を表す語として用いられるようになった。激しい降雨、霰・雹、雷の多発、継続した強風、竜巻などの突風をもたらすのが特徴。アメリカでは一般向けの天気予報(天気図)にも用いられる。
 
=== シアーライン ===
[[ウインドシア]]が細長く分布するもの。2種類の用法がある。
; メソスケールのシアーライン
: 総観スケールの気象を表現する天気図には描かれないが、メソスケールで見ると風向・風速が急激に変化しているところ。収束型と発散型があるが、収束型は大気を[[成層不安定|不安定]]化させる。集風線、収束線とも言う。
; 総観スケールのシアーライン
: 総観スケールでも表現可能な風向・風速の不連続線のうち、温度の変化がない線のこと。閉塞前線が衰弱すると前線の両側の温度差が無くなり、上昇気流だけが名残として残りシアーラインになる。また、熱帯の海洋ではもともと温度差のない前線として発生し、温暖前線にも関連前線にも成長しうる。
 
=== 地上の気圧の谷 ===
{{Main|気圧の谷}}
気圧の低い場所が細長い帯状に並んでいるものを[[気圧の谷]]という。気圧の谷には、地上にできるものと上空にできるものの2種類がある。地上のものは上空のものに比べて重要性が低いとされるが、前線に成長するものや前線から退化したもの、低気圧に発達するもの、メソスケールの低気圧が現れたものもあり、アメリカでは天気図上に示される。
 
=== 熱帯波動線 ===
[[熱帯集束帯]]付近などで、高気圧の辺縁部や低圧部にできる気圧の谷。[[熱帯低気圧]]に成長することがある。アメリカでは天気図上に示される。
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Atmospheric fronts}}
* [[桜前線]]
 
{{気象現象}}
 
{{DEFAULTSORT:せんせん}}
[[Category:総観気象]]
[[Category:天気図]]
[[Category:大気熱力学]]
 
[[ca:Front (meteorologia)]]
[[cs:Atmosférická fronta]]
[[de:Front (Meteorologie)]]
[[en:Weather front]]
[[es:Frente (meteorología)]]
[[fa:جبهه هوا]]
[[fi:Säärintama]]
[[fr:Front (météorologie)]]
[[gl:Fronte (meteoroloxía)]]
[[he:חזית מזג אוויר]]
[[hu:Légköri front]]
[[ko:전선 (날씨)]]
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[[lv:Atmosfēras fronte]]
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[[pl:Front meteorologiczny]]
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