「即時取得」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m -cat
Nbwee (会話 | 投稿記録)
m編集の要約なし
1行目:
{{Law}}
'''即時取得'''(そくじしゅとく)とは、[[動産]]を[[占有権|占有]]している無権利者を真の権利者と[[過失]]なく誤信して取引をした者に、その動産について完全な[[所有権]]または[[質権]]を取得させる制度。'''善意取得'''(ぜんいしゅとく)ともいい、[[原始取得]]の一種である。日本においては[[b:民法第192条|民法第192条]]に規定がある。
 
:即時取得(第192条)
::取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、[[善意]]であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
*民法について以下では、条数のみ記載する。
 
==制度趣旨 総説 ==
=== 条文 ===
*[[b:民法第192条|第192条]]
::取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、[[善意]]であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
 
=== 制度趣旨 ===
本来であれば、無権利者から権利取得を目的とした取引を行ったとしても、権利を取得することができないのが原則である。
しかし、動産の場合、通常は取引をする相手方は権利者であり、取引相手が権利者であることを確認できなければ、権利を取得できないというリスクを負わなければならないとすると、取引を行いにくいし、本当の権利者へ返還をしなければならないなどの取引の混乱が起き、法的安定性が害されてしまう。そこで、動産の占有に[[公信力]]を与えて、動産の取引に入った者を保護し、[[取引の安全]]を図ろうとするのが、即時制度の趣旨である。
 
== 即時取得の要件 ==
即時取得を主張するためには、その動産の占有を売買などの取引行為によって平穏かつ公然に取得していなければならない。また、その動産を所持していた者が実は真の権利者では無かったということを知らない状態([[善意]])で、かつ知らないことについて不注意が無い(無過失)ことも要求される。
 
即時取得の要件をまとめると以下のようになる。
*'''#対象が動産であること'''
*'''#前主が無権利者であること'''
*'''#取引行為により占有を承継したこと'''
*'''#占有を開始したこと'''
*'''#占有開始の際、平穏かつ公然の占有で、前主が無権利であることについて取得者が善意・無過失であること'''
 
=== 対象が動産であること ===
:即時取得の対象は[[動産]]である。[[不動産]]は、不動産[[登記]]制度があり、権利者が[[公示]]されているためである。そのため、不動産登記と同様の公的な登録がされているもの(登記・登録制度のある[[自動車]]、[[船舶]]、[[航空機]]、[[建設機械]]など)は即時取得できない。ただし、未登録・未登記のものは、即時取得の対象となる。
:[[金銭]]は動産であるが、即時取得の対象とならないとするのが[[判例]]の立場である([[不当利得]]の問題として処理する)。
:また、[[債権|無記名債権]](債権者が特定されていない、証券化された債権)は、[[b:民法第86条|86条]]3項によって動産と同じ扱いを受ける。
 
*'''前主が無権利者であること'''
=== 前主が無権利者であること ===
:制度趣旨より、無権利者からの取得しか即時取得では保護されない。そのため、前主(取引相手)が[[制限行為能力者]]である場合、[[無権代理人]]である場合、[[錯誤]]がある場合などは、権利取得ができないとしても即時取得の対象ではない。
 
*'''取引行為により、占有を承継したこと'''
=== 取引行為により、占有を承継したこと ===
:従来は、取引行為によることは明文にはなかったが、制度趣旨より当然の要件と解されていた。2004年の[[民法]]改正において、従来からの通説を条文に取り込み、「取引行為によって」という文言が条文に加えられた。ただし、[[贈与]]行為がここでいう取引行為に含まれるかは、若干の争いがある。
 
*'''占有を開始したこと'''
=== 占有を開始したこと ===
:この占有開始には、[[現実の引渡]]、[[簡易の引渡]]が含まれることは争いはないが、[[指図による占有移転]]、[[占有改定]]が含まれるかについては争いがある。
:判例は、指図による占有移転は肯定し、占有改定は否定している。
 
*'''占有開始の際、平穏かつ公然の占有で、前主が無権利であることについて取得者が善意・無過失であること'''
=== 平穏・公然・善意・無過失===
:平穏・公然の対義は、強暴・隠避。平穏・公然と善意については、[[b:民法第186条|186条]]で[[推定]]されるので立証の必要はない。また、無過失についても、[[b:民法第188条|188条]]で前主である占有者は適法に権利を行使するものと推定されることから、取得者は無過失を推定される。