「マスキュリズム」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
白文鳥 (会話 | 投稿記録)
誤読に基づく書き換え等の差し戻し
1行目:
'''マスキュリズム'''(英:masculism)は、[[男性]]に対する[[性差別]]([[男性差別]])の撤廃を目指す思想や運動。直訳すると「男性主義」であり、かつての欧米では[[男尊女卑]]という意味で使われていた言葉だが、この思想の主唱者である[[ワレン・ファレル]]が[[フェミニズム]]の対置概念として提唱してからは現在の意味で使われるようになった。主に[[西ヨーロッパ]]と[[北アメリカ]]で普及しており、[[中東]]や[[極東]]でも萌芽が見られる。

マスキュリズムの思想に共鳴する推進者や運動に携わる同調者を[['''マスキュリスト]]'''と呼ぶ。
 
== 概要 ==
マスキュリズムは、[[性役割]]に基づく男女の区別を男性差別と見なすか否かで左派と右派に分かれる。
 
両派に共通するのは、現代社会は[[女尊尊女卑]]という社会観の否定である。この他には以下のようなことが主張されている。
* [[徴兵制]]などの身体的な男性差別を、男女間の体力の平均値の差を論拠にして正当化することはできない。女性並の体力しかない男性への配慮が欠けており、それ以外の男性に対しても体力差を超えた負担が課せられるためである。
* もともと参政権は男性が徴兵制の対価として獲得したものであり、女性にだけ無条件で参政権を与えることを目指した近代の婦人運動は、明らかに間違っていた。[[女性参政権]]が浸透した現代における男性のみの徴兵は、権利と義務の均衡を失っているという観点からも不当である。
12 ⟶ 14行目:
* 男女がともに不利益をこうむっている社会問題について、さも女性だけが苦しんでいるかのように述べるのは[[間接差別]]である。ファレルは[[家庭内暴力]]などの被害者を女性に限定して議論を進めることを批判し、こうした議論が不当な立法や行政を促進していると指摘した。
 
しばしば左派は[[ウーマンリブ]]の模倣の男性解放([[メンズリブ]]、右派は[[反フェミニズム]]と混同されるが、男性差別への批判という要素を含まないこれらの思想とは本質的に異なる。特に、男性にも家族などに対して自己犠牲の精神を求める保守的な反フェミニズム([[プロミス・キーパーズ]]など)とは正面から対立する。
 
男性差別の存在は[[19世紀]]の末から指摘されていたが、マスキュリズムが大規模な社会運動として台頭したのは[[1970年代]]である。この運動の推進者の一人であるメル・フェイトは、アメリカ合衆国での台頭の原因について、フェミニズムによって性差別という概念が一般化したところへ[[ヴェトナム戦争]]の勃発による男性に対してのみの徴兵が行われ、それによって男性のみが不当に不利益を課されているという認識が広まり、男性の意識が覚醒したためだという見解を示している。
 
戦前には[[イギリス]]の左翼系知識人([[:en:Ernest Belfort Bax|Ernest Belfort Bax]]など)が主軸となって推進していたが、現在では上述の経緯からアメリカ合衆国が運動の中心である。また、フェミニズムによって新たな男性差別が生み出されているということが意識されるようになるにつれ、国を問わず[[保守主義]]からマスキュリズムに転向する人物も増えている。このことは、「性規範の固守に拘泥する右翼と性差別の撤廃を推進する左翼」という従来の保革対立の構図を崩しつつある。なお、イギリスの左翼もなお影響力を保っており、かつてイギリスの統治下にあった[[英連邦王国]]諸国や[[インド]]では、人脈や理論など当時の遺産を利用したマスキュリズムの再興が試みられている。[[インターネット]]の浸透が、イギリス本国およびアメリカ合衆国と旧植民地の[[英語圏]]の連絡を容易にしている。
 
==関連項目==
* [[性差別]]
* [[男性差別]]
* [[男性学]]
* [[メンズリブ]]
* [[女尊男卑]]
* [[ジェンダー]]
* [[弱者男性]]
* [[徴兵制度]]
* [[ワレン・ファレル]]
* [[:en:Harvey Mansfield|Harvey Mansfield]]
 
== 外部リンク ==
37 ⟶ 33行目:
== 参考文献 ==
* エリス・コーズ著、近藤 和子訳『マンズ・ワールド』日本経済評論社、1998年。ISBN 4818809624
* [[:en:Warren Farrell|Warren Farrell]] "[[:en:The Myth of Male Power|The Myth of Male Power]]", Berkley Publishing Group, 1994. ISBN 0425143813
 
{{DEFAULTSORT:ますきゆりすむ}}