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|6= タミフルカプセル75(中外製薬)
}}
'''オセルタミビル'''(Oseltamivir)は、[[インフルエンザ]]治療薬。'''オセルタミビルリン酸塩'''として、スイスの[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ|ロシュ]]社(日本ではロシュグループ傘下の[[中外製薬]])により商品名「'''タミフル'''(''Tamiflu'')」として販売されている。日本ではロシュグループ傘下の[[中外製薬]]が製造輸入販売元となる。[[A型インフルエンザウイルス|A型]]にしか効果が無い[[アマンタジン]](商品名「シンメトレル」など)とは違いA・[[B型インフルエンザウイルス|B]]両型のインフルエンザに作用する(B型には効きにくい傾向がある)。ただし、[[C型インフルエンザウイルス|C型インフルエンザ]]には効果がない。また、[[トリインフルエンザ]]はA型であるため致死率が高い[[H5N1亜型|H5N1型]]の高病原性トリインフルエンザにも効果がある程度有効の研究結果が報告されてい<ref>{{Cite web|last=A. Govorkova|fast=Elena|coauthors=|Natalia A. Ilyushina, David A. Boltz, Alan Douglas, Neziha Yilmaz,Robert G. Webster|title=Efficacy of Oseltamivir Therapy in Ferrets Inoculated with Different Clades of H5N1 Influenza Virus|url=http://aac.asm.org/cgi/content/full/51/4/1414|year=2007|month=April|journal=Antimicrobial Agents and Chemotherapy|page=1414-1424|volume=51|issue=4|accessdate=2009-04-30|doi=10.1128/AAC.01312-06}}</ref>
 
オセルタミビルは従来、[[中華料理]]で[[香辛料]]に使われる[[トウシキミ]]の果実である[[八角]]の成分[[シキミ酸]]を原料に、10回の化学反応を経て生産されていた<ref>[{{Cite web|url=http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_180301_j.html|title=抗インフルエンザ薬『タミフル』の純化学的製造法」『|date=2006-03-01|work=東京大学広報・情報公開記者発表一覧』]東京大学公式ウェブページ(2009年1月|accessdate=2009-01-13日閲覧)}}</ref>。なお、オセルタミビルとシキミ酸は全く構造が違う化合物であるので、八角を食べてもインフルエンザには全く効果がない{{要出典}}現在、2006年にはロシュ社はシキミ酸のうち1/3程を遺伝子組替え大腸菌による生合成で量産している<ref>{{Citation|last=Enserink|first=Martin|year=2006|month=April|title=Oseltamivir Becomes Plentiful--But Still Not Cheap|url=http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/312/5772/382.pdf|format=PDF|journal=Sience|volume=312|publication-date=21 April 2006|page=383}}</ref>。
 
==概要==
[[1996年]]に米[[ギリアド・サイエンシズ]]社(1997年から2001年まで元[[アメリカ合衆国国防長官]]の[[ドナルド・ラムズフェルド]]が会長を務めた)が開発、スイスの[[エフ・ホフマン・ラ・ロシュ|ロシュ]]社が[[ライセンス]]供与を受け全世界での製造、販売を行っている<ref>{{Cite web|url=http://www.gilead.com/pr_938132458|accessdate=2009-04-29|title=First Approval of Roche’s Tamiflu™, a New Flu Treatment|date=1999-09-24|author=Gilead Sciences|work=プレスリリース}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.gilead.com/pr_941066384|accessdate=2009-10-27|title=Roche Receives FDA Approval Of TAMIFLU™, First Pill To Treat The Most Common Strains Of Influenza (A&B)|date=1999-09-24|author=Gilead Sciences|work=プレスリリース}}</ref>。日本においては2000年に[[厚生労働省]]が承認{{要出典}}、[[2001年]]2月に保険適用承認・薬価基準収載{{要出典}}、日本ロシュ(合併により2002年10月からは[[中外製薬]])が日本の代理店となり、2001年2月2日より<ref>[{{Cite web|auther=薬物療法センター|work=新薬ホームページ|url=http://www.yakubutsuryoho-center.jp/yakubutsu/detail.php?id=135 |title=タミフルカプセル75新発売のご案内] 薬物療法センター/新薬ホームページ|accessdate=2009-04-29}}</ref>「タミフルカプセル75」が、2002年7月31日より<ref>[http://www.yakubutsuryoho-center.jp/yakubutsu/detail.php?id{{Cite web|auther=薬物療法センター|title=16 タミフルドライシロップ3% 新発売のご案内] 薬物療法センター|url=http://www.yakubutsuryoho-center.jp/yakubutsu/detail.php?id=16|work=新薬ホームページ|accessdate=2009-04-29}}</ref>「タミフルドライシロップ3%」が販売されている。EU圏では75mgに加えて子供向けに30mgと45mgのカプセルも販売されている<ref>{{Cite web|auther=Hoffmann-La Roche|date=2007-02-16|title=Roche files application in Europe for Tamiflu 30 and 45 mg capsules|url=http://www.roche.com/med-cor-2007-02-16|accessdate=2009-04-30}}</ref><ref>{{Cite web|title=New child sized Tamiflu capsules receive European approval|auther=Hoffmann-La Roche|date=3007-09-20|url=http://www.roche.com/med-cor-2007-09-20a|accessdate=2009-04-30}}</ref>。また、中国においては Shanghai Pharmaceutical Group社<ref>{{Cite web|auther=Hoffmann-La Roche|title=Roche update on Tamiflu global supply to meet future world demands – from partnerships to regional sub-licenses|url=http://www.roche.com/med-cor-2005-12-12|accessdate=2009-04-30}}</ref>、インドにおいては Hetero Drugs社<ref>{{Cite web|auther=Hoffmann-La Roche|title=Roche grants Tamiflu sub-license to India’s Hetero Drugs to make flu medicine for India and developing countries|url=http://www.roche.com/med-cor-2005-12-23|accessdate=2009-04-30}}</ref>が製造のサブライセンスを保持し、製造している。
 
本薬は[[ノイラミニダーゼ]] (neuraminidase, NA) という[[酵素]]([[糖タンパク質]])を阻害することによりインフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制する[[ノイラミニダーゼ阻害薬]]も参照)<ref>{{Cite web|url=http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/g040703/45004500_21200AMY00238_Q100_1.pdf|format=PDF|page=4|auther=医薬品医療機器総合機構理事長|title=薬機発第194 号審査結果通知書|accessdate=2009-04-28}}</ref>。[[ザナミビル]](商品名「リレンザ」)と作用機序は同じである。本薬の投与法は内服であるため感染部位への到達時間は遅いが、ザナミビルよりも服用が容易であるため、老人・小児にも処方しやすいという特徴がある{{要出典}}。健常な成人であれば、オセルタミビルを投与後3&ndash;7日以内に体内のウイルスを淘汰することができる。ただし、症状が治まる時期と体内のウイルスを淘汰する時期は一致しないので、症状が治まったからといって服用を中止できない点に注意が必要とされる。
 
また、インフルエンザ予防薬としても使用することができる(ドライシロップは除く)。ただし、流通量などの問題から、予防薬として処方してもらえるのは、心疾患・呼吸器疾患や糖尿病などをかかえ、かつワクチンの接種不能な高齢者だけである。また予防薬としての処方は日本では健康保険の適用外である{{要出典}}
 
発症後、48時間以降に投与を開始した場合の有効性に関しては裏付けが無い<ref>{{Cite web|title=効能・効果,用法・用量,使用上の注意(案) 及びその設定根拠|auther=中外製薬株式会社|url=http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/g040703/45004500_21200AMY00238_Z100_1.pdf|format=PDF|date=2004-07-03|accessdate=2009-04-30|page=363}}</ref>。これは、本薬はウイルスが新たに拡散するのを阻害する薬剤であって、既に増殖したウイルスを失活させる効果がないからである。
 
オセルタミビルに耐性を持つウイルスも2004年頭頃{{要出典}}から徐々に見られるようになり<ref id="2005viet">{{Cite web|title=Osellast1=D. de Jon|fast1=Menno|last2=Tan Thanh|fast2=Tran|last3=Huu Khanh|fast3=Truong|last4=Minh Hien|fast4=Vo|coauthors=Gavin J.D. Smith, Ph.D., Nguyen Vinh Chau, M.D., Bach Van Cam, M.D., Phan Tu Qui, M.D., Do Quang Ha, M.D., Ph.D., Yi Guan, M.D., Ph.D., J.S. Malik Peiris, D.Phil., M.D., Tran Tinh Hien, M.D., Ph.D., and Jeremy Farrar, D.Phil., F.R.C.P. |title=Oseltamivir Resistance during Treatment of Influenza A (H5N1) Infection|url=http://content.nejm.org/cgi/content/full/353/25/2667|accessdate=2009-04-30|language=英語|date=2005-12-22|journal=New Englanc Journal of Medicine|volume=353|pages=2667-2672|issue=25}}2005年12月に報告された2005年1月ベトナムでの出現例。</ref><ref>{{Cite web|title=Avian influenza - situation in Egypt - update|auther=WHO|url=http://www.who.int/csr/don/2007_01_18/en/index.html|accessdate=2009-04-30}}2007年1月にWHOが報告した2006年12月エジプトでタミフル耐性のH5N1の出現例</ref>、2009年1月の調査では日本国内のH1N1型への感染者のうちの90%以上から耐性を持つインフルエンザウルスの発生実験室内で確認検出され、臨床におけてい<ref>{{Cite web|auther=厚生労働省|title=感染症発生も危惧された。後動向調査おける薬剤耐性をもつインフルエンザウイルスによる感染例もついて(中間報告されている)|url=http://www-bm.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0116-10.html|accessdate=2009-04-30}}</ref>。また、幼児・小児など免疫力が弱い者にオセルタミビルを投与し続けた場合、ウイルスの淘汰に時間がかかるため、その間に体内のウイルスがオセルタミビルに対して耐性を持つとされている。そのため小児への投与は慎重に行う必要がある。
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日本では、毎年医療機関で大量に処方されるため、2002年–2003年頃には全国的に「タミフル」が枯渇したことがあった。また、一部の卸売り業者や大病院が大量に買い占めしているため、実際に必要としている人に行き届きにくいのが現状である{{要出典}}。-->
 
2005年11月にFDAの小児諮問委員会で報告された際には、「タミフル」の全世界での使用量のうちおよそ75%を日本での使用が占めており、世界各国のうちで最も多く使用されている上、同2位のアメリカ合衆国と比べ、子供への使用量は約13倍とされるであった<ref>{{Cite web|auther=HOFFMANN-LA ROCHE INC.|title=Pediatric advisory committee executive summaryforR Tamiflu|url=http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/AC/05/briefing/2005-4180b_06_07_Tamiflu%20Executive%20Summary_Oct25.pdf|format=PDF|page=12|accessdate=2009-04-29}}</ref><ref>{{Cite web|auther=厚生労働省医薬食品局|title=資料3「タミフルの安全対策の主な経緯」中の「タミフル使用状況」|url=http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/04/dl/s0404-2c.pdf|format=PDF|accessdate=2009-04-29|page=30}}</ref>。これは2003年頃に[[インフルエンザ脳症]]の危険性が大きく報道されて国内での使用量が急増したことに加えて、[[国民健康保険|国民皆保険制度]]により患者の金銭負担が少なくて済むことも原因である{{要出典}}(「タミフル」は高価なため、海外では富裕層でないと使えない{{要出典}}。2006年&ndash;2008年の集計では日本国内向けに販売されたものは世界史上の6%強程度にとどまっている<ref>売り上げによる集計。パンデミック対策で購入された物を含まない。{{Cite web|auther=Roche inc.|date=2008-10-21|title=Roche posts sustained double-digit sales growth for the first nine months of 2008|url=http://www.roche.com/med-cor-2008-10-21|accessdate=2009-04-30}}</ref>
 
2005年には、[[H5N1亜型|新型インフルエンザ]]の発生懸念のため、一部の大病院などで買い占めがおこり、世界的に品薄状態と報じられた。また、原料である[[シキミ酸]]を含む八角([[トウシキミ]]の果実)の買占めが懸念された。2006年に入ると、八角のような天然物ではなく、[[石油]]など由来のより入手容易な化学物質を原料としたリン酸オセルタミビルの化学合成法が日本とアメリカ合衆国の2つの研究グループによって発表された。その後も安定供給をめざし、複数のグループにより研究が行われている。
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* 2005年1月のOkamotoらの研究<ref>Okamoto S, Kamiya I, Kishida K, Shimakawa T, Fukui T, Morimoto T. "Experience with oseltamivir for infants younger than 1 year old in Japan." Pediatr Infect Dis J. 2005 Jun;24(6):575-6.</ref>で、1歳未満の子供に投与した結果が報告された。
* 2005年11月、オセルタミビルの副作用が疑われる事例として、「タミフル」を服用していた2人の患者が異常行動の結果事故死(転落死など)したことが報道された。しかし一方で、インフルエンザ自体の症状として意識障害や精神神経系の異常症状がでることもあり、オセルタミビルが原因ではないとの一部専門家による見解がある。現時点では原因を特定できていない状況である。
** 11月17日、[[アメリカ食品医薬品局]] (FDA) は、インフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した日本の小児患者12人が死亡したと公表した。4人が突然死、4人が心肺停止でそれぞれ死亡、意識障害、肺炎、窒息、急性膵炎(すいえん)により4人が死亡。他国の死亡例はない。また、皮膚超過敏症が十二件、幻覚、異常行動などの精神神経病的な症状が32件、世界で報告されたが、ほとんどが日本であった。FDAは、「タミフル」との因果関係の特定は困難としている小児科諮問委員会に報告書を提出した<ref>{{Cite web|auther=FDA|date=2005-11-18|title=Pediatric Safety Update for Tamiflu Pediatric Advisory Committee Meeting|url=http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/ac/05/briefing/2005-4180b_06_06_summary.pdf|format=PDF|accessdate=2009-04-29}}</ref>
** 11月18日、厚生労働省は、日本国内の死者数について13人と把握していることを明らかにした。FDAは、「タミフル」が米国で認可された2004年3月から2005年4月までに安全性に関する調査を全世界で行ってきた。その結果を公表し、「タミフル」の副作用に関する監視を二年間継続する方針を明らかにした{{cite web|auther=厚生労働省医薬食品局安全対策課|url=http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/11/dl/h1118-2a.pdf|format=PDF|title=タミフルに係る米国食品医薬品局(FDA)関係情報|accessdate=2009-04-29}}
** 11月30日、[[日本小児科学会]]は、「タミフル」と異常行動との医学的因果関係を否定する見解を発表した<ref>{{Cite web|date=2005-11-30|auther=衞藤義勝|title=日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解|url=http://www.jpeds.or.jp/saisin.html#90|accessdate=2009-04-29}}</ref>
* 2007年2月28日、「タミフル」服用後に仙台の中学生がマンションから転落死するなどの事故の報告が続いたことから、厚生労働省は「インフルエンザ治療に携わる医療関係者の皆様へ<ref>[http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/02/h0228-3.html インフルエンザ治療に携わる医療関係者の皆様へ]</ref>」という文書を発表し、「現段階でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えておりません」としつつも、医療関係者に対し「万が一の事故を防止するための予防的な対応として、特に小児・未成年者については、インフルエンザと診断され治療が開始された後は、タミフルの処方の有無を問わず、異常行動発現のおそれがあることから、自宅において療養を行う場合、(1)異常行動の発現のおそれについて説明すること、(2)少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること」と患者や家族に説明するよう、注意を喚起することとなった。
* 2007年3月20日、厚生労働省が「タミフル服用後の異常行動について(緊急安全性情報の発出の指示)<ref>[http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/03/h0320-1.html 厚生労働省「タミフル服用後の異常行動について」]</ref>」を発表。
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==参考文献==
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==外部リンク==