「タッピング奏法」の版間の差分

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'''タッピング奏法'''は[[ギター]]の奏法の一つ。[[指板]]上の[[弦 (楽器)|弦]]を指で叩き付けたりそのまま横に弾いたりして音を出す。
 
[[画像:Koeln1998 Brian May.jpg|thumb|[[ブライアン・メイ]]]]
[[Image:Tapping guitar.jpg|thumb|タッピング奏法]]
'''タッピング奏法'''は[[ギター]]の奏法の1である。[[指板]]上の[[弦 (楽器)|弦]]を指で叩き付けたりそのまま横に弾いたりして音を出す。
 
ギターには[[フィンガリング]]を行う指で弦を指板に叩き突けるように勢い良く押下する[[ハンマリング・オン]]と、押弦している指を弦に引っ掻けるようにして離脱させる事で発音させる[[プリング・オフ]]の2つの奏法がある。基本的にこのふた2つを間断なく繰り返して2音を反復することを[[トリル|トリル奏法]]と呼ぶ。そしてこのトリル奏法を拡張したのがタッピング奏法である。また日本では現在ではタッピング奏法とライトハンド奏法がほぼ同意義で使用されていることが多いが、以前はタッピング奏法と呼ばれるものはハンマリング・オンのみで音を奏でる奏法を指し、そこからプリング・オフするかしないかは問わない。一方、ライトハンド奏法と呼ばれる物は、[[ハンマリング・オン]][[プリング・オフ]]を繰り返して音を奏でる奏法のみを指した。そのためハンマリング・オンのみで音を出した場合、それをタッピング奏法と呼ぶことはできたがライトハンド奏法と呼ぶことはできなかった。
 
== 片手タッピング ==
2音間に留まらず、3音以上の旋律をハンマリングとプリングで行う奏法。[[レガート]]な音になるため、ピッキング奏法と合わせて[[速弾き]]に表情を付けられる。
 
== 両手タッピング ==
両手タッピングは上述のトリル奏法を拡張したもので、文字通り両手でハンマリングとプリングを行う奏法。この奏法により指板を広く使う音域の広い旋律を演奏できるようになり、[[鍵盤楽器]]向けの楽曲もギターで演奏できるようになる。この奏法を[[スタンリー・ジョーダン]]の言葉の通りに"タッチスタイル"と呼び習わすことが多い。
 
両手タッピングという奏法自体は古くから存在しジャズ・ギタリストの[[スタンリー・ジョーダン]]が世間に広く広めた以前、ギターメーカーの[[グレッチ]]社に在籍していたギターデザイナーでありジャズ・ギタリストである[[ジミー・ウェブスター]]によって既に[[1950年代]]に確立され、彼は教則本まで執筆した。しかしこの奏法が一般に受け入れられるまでは20年以上の時間を要した。
 
[[チャップマン・スティック]]の演奏はこの奏法が基本となっている。
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===ライトハンド奏法===
[[Image:Erik Mongrain.jpg|thumb|[[エリック・モングレイン]] - ラップタッピング]]
「ライトハンド奏法」は'''[[日本]]独自の古い呼称'''であり、此れ自体をさして現在ではタッピングと言う定義が一般的である。以前『[[ニュースステーション]]』[[ディドワド・ヴァン・ヘイレン]]が出演した際、「'''ライトハンド奏法を見せてください'''」といわれ通訳がそのまま訳さず話したのか右手のオルタネイトピッキング奏法を披露したことがあり、「ライトハンド」では日本以外は通じにくい。[[エドワード・ヴァン・ヘイレン]]登場当時はいわゆる「ライトハンド奏法」として華々しくギター雑誌等で紹介されたため「ライトハンド奏法」は[[ヴァン・ヘイレン]]の[[エドワード・ヴァン・ヘイレン]]が作った奏法という説が広く流布してしまっているが、それ以前に[[ジェネシス (バンド)|ジェネシス]]の[[スティーヴ・ハケット]]が既にタッピングによる奏法を行っており[[クイーン (バンド)|クイーン]]の[[ブライアン・メイ]]も右手で[[ハーモニクス]]・ポイントに触れて[[倍音]]を出す[[フラジオレット#タッチ・ハーモニクス|タッチ・ハーモニクス奏法]](「タッチ・ハーモニクス奏法」もエドワード・ヴァン・ヘイレンの発明とされるのは虚偽である(この奏法はクラシックギターの技法で[[フラジオレット]]と呼ばれるものと同じだと思われる)。))と併せて行なっていたり(ブライアン・メイの場合、年代、交友関係から考えてスティーブ・ハケットが右手も使っているのを見て参考にしたものと思われる)、[[ゴング (バンド)|ゴング]]時代から[[アラン・ホールズワース]]も行なっていた。またJAZZギターではタッチと呼ばれて比較的よく使われる技法でもあった(タッチ自体はトリルに応用されるテクニックではない)。エレクトリック・ベースにおいても、[[ビリー・シーン]]はタラスに在籍していた時代から既に行っていた。エドワード・ヴァン・ヘイレンはアラン・ホールズワースのフォロワーであり、時期的にもスティーヴ・ハケット、ブライアン・メイ、アラン・ホールズワースが音楽活動をし始めたのが多少前後はあるが[[1970年代]]初頭、ヴァン・ヘイレンがデビューするのが1970年代中盤であるので、アラン・ホールズワースから[[インスパイア]]されたものをエドワード・ヴァン・ヘイレンがロック的で派手な奏法として徹底的に進化させたのだと考えるのが妥当であろう。その中にはタッピングを大きくフィーチャーし、一つの楽曲内でより連続した音符や音階で演奏、間奏において長時間行った、その奏法の為の楽曲も作り上げたという意味合いはある。1970年代に於いて、ロックギタリストに対するより派手な印象を聴く者に与えたなどの功績はあったといえる。
 
左手とともに右手も押弦に使用することは誰でも思い付き得ることで、以前に誰かが思い付いて実行していたと考えてもよい。ライトハンド奏法が独立した奏法として扱われるに至った理由はいくつか考えられる。主なものは弦の太さと[[特別:Search/ディストーション|ディストーション・サウンド]]の普及である。
 
エレクトリックギターに於いてはライトゲージと呼ばれる細めの弦が好んで用いられる。[[ジミ・ヘンドリックス]]、[[エリック・クラプトン]]登場以来ロック・ギターに於いては[[チョーキング]]を多用するのが当たり前となったことで、よりチョーキングのしやすい細い弦が好まれるようになっていたのだと考えられる(ジミ・ヘンドリックスは、実際には.013から始まるような太いゲージを張っていた。しかし半音下げチューニングでトーンの変更、張力のドロップは行っていたようでこのようなセッテイングは後のブルース系ギタリストの標準と成る。若しくは以前からこのようなスタイルが存在していたということも考慮に入れられるだろう)。実際、今でもチョーキングをあまりしないオーソドックスなジャズ・ミュージシャンの多くは太いゲージの弦を使っている。これは、歪ませないギター・サウンドに於いてはその方がコードバッキングの際にリッチなサウンドになるからである。一方[[フォークギター]]や[[クラシックギター]]は太い弦を用いるのが普通であり、特にフォークギターは張力も強いため指板上で指を叩き付ける程度の力では大きな音を出しにくい。
 
また同じく[[ジミ・ヘンドリックス]][[エリック・クラプトン]]らによって「ロック・ギター=[=[特別:Search/ディストーション|ディストーション・サウンド]]」という定式が確立された事も影響していると思われる。強く歪ませると小さな音でも拾われやすいためピッキングとハンマリング・プリングの音量差が出にくくなり、奏法として使いやすくなる。
 
ただ改めて記すると、エドワード・ヴァン・ヘイレン以前のものは明らかに「ピッキングによるハッキリしたアタック音を避けて柔らかい、または優しい音色を出したい意図」で用いられていたのが殆どだった(唯一の例外と云って良いのがスティーヴ・ハケットで、彼のものはその後のシンセ・サウンドを先取りしていたと言える自然界には存在しない特殊音的アプローチであった)。これを「より攻撃的」で「より現代的」な音色提示手法として、また[[ステージ・パフォーマンス]]の栄える(ロック的)奏法として強くアピールした用い方をしたのはエドワード・ヴァン・ヘイレンが元祖であると特筆しておくべきであろう。また、[[シンセサイザー|音楽シンセサイザー]]の登場に拠り輪郭のクッキリした[[リリース音]]の長い持続性のある音色が「斬新なサウンド」と受け取られる時代であった事も「ライトハンド奏法」の成立に大きく寄与しているものと考えられる。
 
両手の親指を除く8本8全ての指を用いて鍵盤楽器のようにタッピングを行う両手タッピングについては、[[1960年代]]後半に考案されていたチャップマンスティックが楽器としては元祖であり、奏法自体は1950年代に前述したジミー・ウェブスターによって既に完成していた。それを[[スタンリー・ジョーダン]]などがギター奏法に置き換えたものであるが、最近ではロック・メタルギタリストにも広く普及している。[[ジェフ・ワトソン]]([[ナイトレンジャー]])の得意技である、"8フィンガー"等が代表的である。
 
なお、左利きの奏者が(左利き用の楽器を用いて)行う際に「レフトハンド奏法」と称して行うことがあるが「ライトハンド奏法」という名称に対する冗談を含めてそう称されているものであり、奏法そのものとしては同じものである。
 
==関連項目==