「化学平衡」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
化学式など訂正
1行目:
{{otheruses|化学平衡|その他の平衡|平衡 (曖昧さ回避)}}
[[Image:Burette.svg|thumb|right|100px|ビュレットは平衡定数を求めるための滴定実験で利用される器具である]]
'''平衡'''(へいこう、equilibrium)あるいは'''化学平衡'''(かがくへいこう)とは[[可逆反応]]において、順方向の反応と逆方向との[[反応速度]]がつりあって反応物と生成物の組成比が[[巨視的|マクロ]]的に変化しなくなる状態をいう。平衡状態における、反応物の[[モル濃度]]積を分母とし、生成物モル濃度積を分子とした平衡状態の構成比を'''平衡定数'''(へいこうていすう、へいこうじょうすう)と呼ぶ。
 
== 平衡定数 ==
132行目:
==== 平衡の移動の補足(温度) ====
温度は、反応速度にかかわる大きな要素である。例えば、10K上昇するごとに反応速度が3倍になる反応があり、今500℃で10分で平衡に達するとすれば
300℃で <math> 3^{20}\fallingdotseq 3.5\times {10}^9 </math>倍もの時間がかかるので、200℃の違いで'''10分'''の反応が'''663396.6×10<sup>4</sup>年'''もの時間が必要となり実用的ではなくなってしまう。
 
==== 平衡の移動の補足 その2 ====
176行目:
[[塩化コバルト|塩化コバルト(II)]] (CoCl<sub>2</sub>) は、水を脱着してその色を変わることでよく知られる化合物である。この塩は[[アンモニア]]を配位子として可逆的に脱着することもできる(下式)。
 
:<math>\mathrm{CoCl}_2 \cdot 2\mathrm{NH}_3(\mathrm{solid}) + 4\mathrm{NH}_3(\mathrm{gas})\rightleftarrows\mathrm{CoCl}_2 \cdot 6\mathrm{NH}_3(\mathrm{solid})</math>
 
ここで温度とアンモニアの圧力を制御しながらコバルト塩の重量を測定することで、上式の変換率およびその時間変化を評価できる。Ternan らの詳細な検討によると<ref>Trudela, J.; Hosattea, S.; Ternan, M. "Solid–gas equilibrium in chemical heat pumps: the NH3–CoCl2 system" ''Applied Thermal Engineering'' '''1999''', ''19'', 495-511. DOI: [http://dx.doi.org/10.1016/S1359-4311(98)00066-0 10.1016/S1359-4311(98)00066-0]</ref>、一定(例: 104 kPa)の圧力の雰囲気下にコバルト塩を置き系の温度をゆっくり昇降させると、高温側では軽い CoCl<sub>2</sub>&bull;·2NH<sub>3</sub> が、低温側では重い CoCl<sub>2</sub>·6NH<sub>3</sub> が優位となる。このとき塩の重量と温度変化をプロットすると、昇温時と降温時でプロット曲線が重ならない[[ヒステリシス]]があらわれた。もしも平衡状態までに達する時間が十分に短ければ昇/降温時の 2本のプロット曲線は重なった形で観測されるだろうから、今回の系でヒステリシスが観測されたということは、アンモニアの脱着に遅い反応が付随すること、すなわち、[[結晶格子]]の拡大や収縮がともなっていることを示している。ヒステリシスは昇降のサイクルに数十時間かけるような条件でも起こったことなどから、上の式が平衡に達するために必要な時間は 100 ないし 1000 時間程度ではないかと見積もられた。この実験では、固-気平衡反応が平衡状態へ到達するまでの過程において、反応式の見かけによらず多くの要因が重なりときには非常に長い時間となることが示されている。
 
== 関連項目 ==