「植木鉢」の版間の差分

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[[画像:Flowerpot 2.jpg|thumb|right|200px|逆さにした状態。中央に排水孔が開いている]]
 
植木鉢は上面部分が開放され、底面には水抜きのための穴が開けられた構造が一般的である。つまり、用土が常に一定の水分を保ちつつ、余分な水分が排出されるようになっている。また、底面が平面ではなく、周囲が盛り上がり、部分的に切り欠きを作るなど、底からの水はけにも配慮されているものが多い。これは、排水が悪いと有害菌の繁殖や老廃物、有害物質などの蓄積が進むこと、また多くの植物は根も[[呼吸]]しているのでそれが阻害されることなどから植物の生育が悪くなるので、それを避けるためのものである。したがって、この構造に合致し、なおかつ有害物質を含有していなければ汎用の容器を転用しても差し支えない。しかし、欧米では孔の開いていない植木鉢も多い。このようなものは鑑賞の時のみに使われ、日本では植木鉢カバーと見なすこともあるが、欧米では一般に区別をしない。また、まったく平らな板に土を盛り上げても植物を栽培することは出来でき、実際に[[盆栽]]にはこのようなものもあり、これも特殊ながら植木鉢と呼びうるものだが、この場合自然に排水するので排水孔は不要である。水草用の鉢も排水孔がない方が良いことが多い。なお、側面に植え込み口や排水孔を持つ植木鉢も稀にある。なお西欧では、排水孔のある植木鉢は受け皿がセットになっているのが普通である。また鑑賞鉢ではスタンド、台がセットになっているものも少なくない。
 
上端の周囲はやや厚くなっているか、盛り上げてあるのが普通である。これは強度保持と持ち運びの扱いやすさのためである。
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地植えに比べれば、培養土の容量が限られるので地下部の生育には限度があり、そのため地上部も小型化することが多い(花は小型化しないことが多く、むしろ施肥などの管理に左右される)。しかし、むしろそれを積極的に利用することも多く、場合によっては盆栽のように、あえて小さめの植木鉢に植え、更に根を切り詰めたりして地上部の生育を抑制し矮小化させる技術も盛んに行なわれる(根を切り詰めるのは新根の発生を促す意味もある)。地上部も剪定したり成長抑制[[ホルモン]]を使用することもある。
 
栽培用、観賞用など、その目的に応じて材質は多岐にわたるが、特に[[陶磁器]]が非常に多い。中でも[[土器]]、[[陶器]]が多く、その理由としては保水、排水や通気のバランスがよいこと、美観的に植物によくなじむこと、直射日光や水に対して丈夫なこと、比較的安価で大量に供給が出来できることなどによる。特に[[釉薬]]をかけないものは通気が良く、鉢表面からの水分蒸散により鉢内が蒸れにくく、多くの植物の育成に適している。ただし乾きやすいこと、割れやすいことと美観に劣る欠点がある。育苗のためには、かつては素焼鉢や「駄温鉢」と呼ばれる堅目で桟の部分のみ上薬を塗ったものが主流であったが、現在はビニールポットが圧倒的である。また、[[パルプ]]やピート([[泥炭]])をプレスして作った育苗用鉢もある。これらは時間がたつと次第に腐食して土と同化するので、植え替え時に抜かずにそのまま地植えしたり、更に大きな鉢に移し替えることができ、根を痛めることが少ない。ただしこれらは短期間しか使用できず繰り返して使うこともできない。
 
西欧の観賞用の植木鉢としては、庭園用には石や土器、[[青銅]]や[[鉄]]製のものが多かった。室内用としては[[マヨリカ]]などの陶器のほか[[磁器]]や[[炻器]]も多い。このほか[[七宝]]や、[[真鍮]]、[[銅]]、[[錫]]などの金属製や木製のものも見られる。まれに[[ガラス製]]のものもある。
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19世紀に入り、西欧では近代的生産園芸が発展し、大量の育苗用植木鉢が必要になり、これに合わせてイギリスで素焼鉢の大量生産が始まる。こうして生産された鉢は園芸業者や[[植民地]]の[[プランテーション]]等で大量に消費された。やがて日本でも素焼鉢は大量生産され、この状態は[[第二次世界大戦|第二次大戦]]後、特に昭和40年代以降ビニールポットに取って代わられるまで続いた。
 
アメリカでは19世紀末から陶器製造会社がいくつか生まれ、四半世紀ほどの間に世界有数の陶器メーカーに成長する。アメリカでは広い住宅を飾るのに装飾用植木鉢は重要なアイテムであり、これらのメーカーにとって、装飾用植木鉢は主力商品のひとつであった。しかし第二次大戦後は安価な日本陶器の輸入とプラスチック製品の普及により急速に衰退した。現在イギリス、イタリア、日本などで素焼や陶器の植木鉢がよく生産されている。中国でも[[宜興市|宜興]]を中心に生産が盛んで、この他、最近では[[タイ王国|タイ]]製、[[ベトナム|ヴェトナム]]製、[[マレーシア]]製などの磁器植木鉢もよく輸入されている。
 
==分類==
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植木鉢の大きさは、植える植物体の大きさや数にほぼ対応して決められる。細かくいえば、見た目の美的バランス、植物の地下部の形態や量、また培養土の総保水量と植物の生活に必要な水分量とのバランスなどでほぼ決まる。もちろん灌水量や置き場所の環境等である程度調節できるので、それほど厳格なものではない。
 
様々さまざまな大きさのものがあり、小さなものではミニ盆栽用の直径3センチメートルほどのものから、巨大なものでは1メートル以上のものまである。大鉢、中鉢、小鉢という分け方もあるが絶対的なものではない。一般的な園芸では、およそ直径15センチメートルから20センチメートル前後が中鉢、30センチメートル程度以上が大鉢と呼ばれることが多い。日本では、一般的な植木鉢は完全に正確ではないが[[尺貫法]]に準拠した規格で製作されていることが多い。たとえば「三号鉢」は口径が約三[[寸]]、「七号鉢」は同じく約七寸、「十号鉢」または「[[尺]]鉢」は口径約十寸(一尺)という具合である。五号以下では五分ずつ小さなサイズがあることが多い。同じようにイギリスの古い植木鉢では、同様にほぼ[[インチ]]、[[フィート]]にしたがっていることが多い。
 
== 使用法 ==
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==展示、鑑賞==
鉢植えをより美しく演出するため、古来から展示方法も様々さまざまに工夫されて来た。しかし、場合によっては鉢を隠す演出も見られる。
 
室内等で鑑賞する場合、排水孔から流れ出る余剰な水を受けるための受皿を併用することが多い。欧米では、排水孔のある植木鉢には普通同じ材質、デザインの受皿がセットで製造、販売されることが多い。その場合、受皿の口径は原則として植木鉢の口径に等しい。更に受皿の下に、受け布を敷くこともある。ある程度まとまった数の植木鉢を陳列する時は、数鉢分が収まる大きな金属製の受皿を使うこともある。
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イギリスの[[オーリキュラ]]など[[フローリスツ・フラワー]]でも、18世紀から展示台に多数の鉢植えを陳列した。これを[[舞台]]に見立てて、「シアター」または「ステージ」と呼び、豪華な装飾を施し、実際の[[劇場]]のようにオペラカーテンを備えたり、ランプを備え付けて照明するものもあり、背景には風景画を描いたり、[[鏡]]を貼って後ろ側も見えるようにしたり、黒の[[ヴェルヴット]]で覆い花を浮き立たせたりするなどの試みが行なわれた。
 
この他園芸の進展に合わせ、ヴィクトリア時代には特に金属製の洒落た植木鉢スタンドが流行し、多くは数段からなる角形や円形、半円形などの様々さまざまなものが市販されていた。また、水槽や[[鳥籠]]、噴水、彫刻などとセットになったものもあった。
 
[[イベント]]的な花の展示会では統一感の演出のため、多くの鉢植えを[[樹皮]]チップ等ですっかり覆い、同一の地面から生えているように見せかける手法もよく採られる。