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[[数学]]において'''副有限群'''あるいは'''射有限群'''(しゃゆうげんぐん、{{lang-en|''pro-finite groups''}})は、[[有限群]]をある意味で集めて得られる[[位相群]]である。射有限群は、その[[剰余群]]として現れる有限群と多くの性質を共有している。
 
== 定義 ==
 
形式的には、射有限群は[[完全不連結]]で[[コンパクト空間|コンパクト]]な[[ハウスドルフ空間|ハウスドルフ]][[位相群]]として定義される。これは、[[離散空間|離散]][[有限群]]の成す[[射影系]](逆系)の[[射影極限]](逆極限)として得られる位相群に[[同型]]であるような群を射有限群と定めると言っても同じである。圏論の言葉で言えば、これは[[フィルター圏|フィルター付き極限]]構成の特別の場合となっている。
 
== 例 ==
 
* 有限群は[[離散位相]]に関して射有限である。
* [[p進数|''p''-進整数]]全体の成す加法群 '''Z'''<sub>''p''</sup> は射有限である(実際にはさらに[[射巡回群|射巡回的]]である)。この群は、''n'' を全ての自然数を亘って動かすとき、有限群 '''Z'''/''p''<sup>''n''</sup>'''Z''' とそれらの間の自然な射影 '''Z'''/''p''<sup>''n''</sup>'''Z''' &rarr; '''Z'''/''p''<sup>''m''</sup>'''Z''' (''n'' &ge; ''m'') が成す射影系の射影極限になっており、この群の射有限群としての位相は'''Z'''<sub>''p''</sup> 上の ''p''-進付値から定まる位相と一致する。
* [[体の拡大|体の無限次拡大]]の[[ガロア理論]]では、射有限なガロア群が自然に現れる。具体的に、''L''/''K'' を(無限次元の)[[ガロア拡大]]とし、''K'' の元を動かさない ''L'' 上の体自己同型全体の成す群 ''G'' = Gal(''L''/''K'') を考える。この無限ガロア群は、''F'' が ''F''/''K'' が有限次ガロア拡大であるような ''L''/''K'' の中間体すべてを亘るとき、有限ガロア群 Gal(''F''/''K'') が成す射影系の逆極限である。この射影系における射は、''F''<sub>2</sub> &sube; ''F''<sub>1</sub> なるとき、制限準同型 Gal(''F''<sub>1</sub>/''K'') &rarr; Gal(''F''<sub>2</sub>/''K'') で与えられる。得られる Gal(''L''/''K'') の位相は[[ヴォルフガンク・クルル]]に因んで'''クルル位相''' {{lang|en|(''Krull topology'')}} として知られる。ウォーターハウスは「任意の」射有限群が、「ある」体 ''K'' 上のガロア群に同型なる群として得られることを示したが、このとき具体的にどのような体 ''K'' を選べばよいか決定する方法はいまだ知られていない。事実、多くの体 ''K'' で、どのような[[有限群]]が体 ''K'' 上のガロア群として得られるかということは一般にははっきりしない。このような問題は体 ''K'' に対する[[ガロアの逆問題]]と呼ばれる(複素一変数の有理函数体のように、ガロアの逆問題が解決されている体もある)。
* [[代数幾何学]]において考察される基本群もまた射有限である。これは大雑把に言って、代数的には[[代数多様体]]の有限被覆だけしか「見る」ことができないということを反映するものであり、[[代数的位相幾何学]]における[[基本群]]は一般には射有限ではない。
 
== 性質および事実 ==
 
* 射有限群の(任意濃度の)[[直積群]]はふたたび射有限であり、射有限群としての位相は[[直積位相]]と一致する。また、射有限群とその間の連続群準同型からなる逆系の逆極限は射有限となり、逆極限函手は射有限群の圏の完全函手である。さらに言えば、射有限であることは拡張性質 {{lang|en|(extension property)}} である。
* 射有限群の任意の[[閉部分群]]はそれ自身が射有限であり、その射有限群としての位相は[[相対位相]]に一致する。また、''N'' が射有限群 ''G'' の正規閉部分群ならば、[[剰余群]] ''G''/''N'' は射有限であり、その射有限群としての位相は[[商位相]]に一致する。
* 任意の射有限群 ''G'' はコンパクトハウスドルフ空間であるから、''G'' 上の[[ハール測度]]が存在して、''G'' の部分集合の「大きさ」を測ったりある種の確率を計算したり ''G'' 上の函数を積分したりすることができる。
* 射有限群の部分群が開となるのは、それが指数有限なる閉部分群であるときであり、かつそのときに限る。
* [[ニコライ・ニコロフ (数学者)|ニコライ・ニコロフ]]と[[ダン・ジーゲル]]の定理に従えば、任意の位相的に有限生成な(つまり[[稠密]]な[[有限生成部分群]]を持つ)射有限群において、指数有限なる部分群は開である。これは、先に得られていた[[ジャン=ピエール・セール]]による[[射p群|射 ''p''-群]]に対する類似の結果を一般化するものになっている。証明には[[有限単純群の分類]]が用いられた。
* 上述のニコロフ-ジーゲルの結果の簡単な系として、射有限群 ''G'' と ''H'' の間の「任意の」(抽象群としての代数的な)全射準同型 &phi;: ''G'' &rarr; ''H'' は ''G'' が位相的に有限生成である限り連続であることがわかる。実際、''H'' の任意の開部分群は指数有限であるから、その ''G'' における原像も指数有限であり、したがってそれは開でなければならない。
* ''G'' と ''H'' はともに位相的に有限生成な射有限群で、抽象群として互いに同型であると仮定し、その同型射を &iota;: ''G'' &rarr; ''H'' とする。このとき &iota; は全単射かつ上述の結果から連続であり、さらに &iota;<sup>&minus;1</sup> も連続となるので、&iota; は[[同相写像]]である。ゆえに、位相的有限生成な射有限群の位相はその「代数的」構造によって一意的に決定される。
 
== 射有限完備化 ==
 
任意に与えられた群 ''G'' に対して、''G'' の'''射有限完備化''' {{lang|en|(''profinite completion'')}} と呼ばれる射有限群 ''G''<sup>^</sup> を考えることができる。これは、''N'' が ''G'' の[[部分群|指数有限]]な[[正規部分群]]全体を亘るとき、剰余群 ''G''/''N'' が(正規部分群の包含関係で与えられる[[半順序集合|半順序]]構造を移行することにより導かれる剰余群の間の自然な準同型に関して)成す逆系の射影極限として定義される。このとき、自然な準同型 &eta;: ''G'' &rarr; ''G''<sup>^</sup> が存在して、この準同型による ''G'' の像は ''G''<sup>^</sup> において[[稠密]]である。この準同型 &eta; が単射となるのは、群 ''G'' が[[剰余有限群|剰余有限]]<sup>[[:en:residually finite|(en)]]</sup>である(''N'' が指数有限なる正規部分群すべてを亘る共通部分が自明、つまり
:<math>\bigcap N = 1</math>
が成立する)ときであり、かつそのときに限る。また、準同型 &eta; は次のような[[普遍性]]によって特徴付けられる。すなわち、任意の射有限群 ''H'' と任意の群準同型 ''f'': ''G'' &rarr; ''H'' が与えられたとき、[[連続写像|連続]]群準同型 ''g'': ''G''<sup>^</sup> &rarr; ''H'' で ''f'' = ''g''&eta; を満たすものが一意的に存在する。
 
== 入射有限群 ==
 
射有限群の圏論的な意味での双対として、'''入射有限群''' {{lang|en|(''ind-finite group'')}} の概念が有限群の成す[[帰納系]](順系)の[[帰納極限]](直極限)となる群として定められる。事実としてこの条件は、任意の有限生成部分群が有限であるという条件に同値であり、通常は入射有限とは言わず、[[局所有限群|局所有限]]であるという。
 
[[ポントリャーギン双対]]を用いれば、[[アーベル群|可換]]な射有限群は局所有限な離散可換群の双対になっていることが見てとれる。後者の群はちょうど可換な[[ねじれ群]](任意の元がねじれ元であるような群)である。
 
== 関連項目 ==
*[[局所巡回群]]
*[[射p群|射 ''p''-群]]
*[[剰余性質]] (Residual property)
 
== 参考文献 ==
*Nikolay Nikolov and Dan Segal. ''On finitely generated profinite groups I: strong completeness and uniform bounds.''. 2006, [http://arxiv.org/abs/math.GR/0604399 online version].
*Nikolay Nikolov and Dan Segal. ''On finitely generated profinite groups II, products in quasisimple groups''. 2006, [http://arxiv.org/abs/math.GR/0604400 online version].
* Hendrik Lenstra: Profinite Groups, talk given in Oberwolfach, November 2003. [http://websites.math.leidenuniv.nl/algebra/Lenstra-Profinite.pdf online version].
* Alexander Lubotzky: review of several books about profinite groups. Bulletin of the American Mathematical Society, 38 (2001), pages 475-479. [http://www.ams.org/bull/2001-38-04/S0273-0979-01-00914-4/home.html online version].
* {{Citation | last1=Serre | first1=Jean-Pierre | author1-link= Jean-Pierre Serre | title=Cohomologie galoisienne | publisher=[[Springer-Verlag]] | location=Berlin, New York | series=Lecture Notes in Mathematics | isbn=978-3-540-58002-7 | id={{MathSciNet | id = 1324577}} | year=1994 | volume=5}}
*William C. Waterhouse. ''Profinite groups are Galois groups''. Proc. Amer. Math. Soc. 42 (1973), pp. 639–640.
 
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[[Category:位相群]]
[[Category:数学に関する記事]]
 
[[de:Proendliche Gruppe]]
[[en:Profinite group]]
[[es:Grupo profinito]]
[[fr:Groupe profini]]