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一般に、生物は栄養を摂取し、成長し、一定時間の生活を営む時期と、繁殖のための特別な活動を行う時期がある。これらを経て、生物はその姿を変えて行く。その中で、ほとんど姿を変えず、時に[[生殖細胞]]の形になるだけのもののあるが、何通りかの生殖細胞があり、それぞれから現れる姿が異なるものもある。特に、生活を営む姿が生殖細胞を隔てて2つ以上ある場合、[[世代交代]]と言われる。しかし、いずれにせよ、それらの姿の出現順番や出現する状況は一定であり、もとの状態に戻る。この一回りが生活環である。
 
生物の生活環にはいろいろな型がある。[[動物]]のそれはたいてい簡単で、変化がないが、[[植物]]や[[藻類]]、[[菌類]]には多くの型があり、大分類において重要な特徴と考えられてきた。ただし、他の形質から近縁と思わる群に於いて異なった生活環の型が見られる場合もあるので、意外に変わりやすい形質ではないかとの指摘もある。
 
== 規則的な生活環 ==
生物において、生活を行う状態になる体を世代とも呼ぶ。生活環の中で、世代がひとつしかないものもあれば、複数の世代をもつ場合もある。また、世代の変化と、核相の変化が連動する場合と、しない場合がある。
 
 
典型的なのは以下の3つである。
典型的なのは以下の3つである。なお、生活環の型の名前には日本では安定して使用される例が少ない。ここ使っている名称も説明上の必要から用いているにすぎない。
*単相単世代型(Hapiontic)
:生活する体は単相で、体細胞分裂によって生殖細胞を作る。[[接合]]によって複相の接合子を形成、[[発生]]([[孵化]]、[[発芽]])の前に[[減数分裂]]が起きる。
:[[緑藻類]]の[[アオミドロ]]類、[[シャジクモ]]類、菌類では[[接合菌]]類や[[子のう菌]]類などがこれにあたる。
*複相単世代型(Diplontic)
:生活する体は複相で、減数分裂によって生殖細胞を形成する。生殖細胞の接合による接合子はそのまま発生(孵化、発芽)し、元と同じ体を形成する。
:大部分の動物、藻類の[[ケイソウ]]類、[[褐藻類]]のヒバマタ目([[ホンダワラ]]など)、菌類の[[ツボカビ]]類、他に[[卵菌類]]などがこれである。
*単複世代交代型(Haplodiplontic)
:2つの体がある型である。単相の体は体細胞分裂によって生殖細胞(配偶子)を作る。配偶子は接合して複相となる。接合子は発生(孵化、発芽)し、複相の体を形成する。複相の体は減数分裂によって生殖細胞を形成し、その生殖細胞は発生(発芽、孵化)によって単相の体に発達する。この場合、核相の変化に伴う[[世代交代]]が存在することになり、単相世代を'''配偶体'''あるいは有性世代、複相世代を'''胞子体'''または無性世代と呼ぶ。二つの世代はほぼ同じ程度に発達するものもあれば、両者の大きさが極端に異なるものもある。種子植物では、配偶体は胞子体の体内に寄生した状態になっている。
:[[シダ植物]]、[[コケ植物]]、[[種子植物]]や、[[緑藻]]類、[[褐藻]]類の多く、[[変形菌]]などがこれである。菌類ではツボカビ類のカワリミズカビだけがこれにあたる。
 
これ以外に、大きな分類群に見られる、重要特殊な型としては、以下のようなものがある。
*[[紅藻]]類では、単複世代交代型に近いが、配偶体の上で接合細胞が発芽し、小さいながらも多細胞となり、果胞子というものを形成する。果胞子は発芽して胞子体となる。つまり、2つの世代の間にもう1つの世代が挟まっており、この世代を'''果胞子体'''という。
*[[担子菌]]類では、減数分裂で生じた担子胞子の発芽で[[菌糸体]]を生じ、菌糸の接合を行うが、接合の後も核は融合せず、二核共存体として成長する。二核菌糸はそのままで成長を続け、子実体を形成して担子器を形成、そこで初めて融合し、多くの場合にその位置で減数分裂を行ない、担子胞子となる。なお、[[サビキン]]類では、寄生生活や季節による宿主の変更を行うものもあり、さらに複雑になっている。
 
ただし、実際にはそれぞれの世代が独立して生活活動を行うとは限らない。たとえば複相と単相の二つの世代を持つものでも、両方が同等に生活活動をするものはまれで、片方がはるかに小さいもの、あるいは一方が他方に寄生的に生活するもの、あるいはほとんど痕跡的なものもある。たとえば[[被子植物]]の[[花粉]](あるいは花粉管)は、配偶体であると見なされているが、実際には細胞は分かれず、その中に花粉管核と精細胞が分化するのみである。これを配偶体という一つの世代であると判断するのは、[[シダ植物]]との系統関係に基づくものと言える。独立してそれなりの生活活動を行う体を[[栄養体]]と言うこともある。
 
== 可変的な生活環 ==