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[[File:San-nin Kichisa Kuruwa no Hatsu-gai 1860 by Toyokuni III.jpg|thumb|450px|『三人吉三廓初買』
'''三人吉三廓初買'''(さんにんきちさくるわのはつがい)は、[[幕末]]期の[[河竹黙阿弥]]作の[[歌舞伎|歌舞伎狂言]]。世話物<ref>歴史に題材をとった「時代物」に対し、当時における現代劇のこと。江戸時代の世相・風俗がふんだんに取り込まれている。</ref>。七幕。上演構成により「'''三人吉三巴白浪'''(さんにんきちさともえのしらなみ)」とも称される。通称は「三人吉三」。初演は[[安政]]7年([[1860年]])[[正月]]、[[江戸]]の[[市村座]]において興行された。▼
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<small>安政七年正月十四日(1860年2月5日)江戸[[市村座]]初日の『三人吉三廓初買』の序幕「大川端庚申塚の場」。左から[[市川小團次 (4代目)|四代目市川小團次]]の和尚吉三、[[岩井半四郎 (8代目)|三代目岩井粂三郎]]のお嬢吉三、[[市川團十郎 (9代目)|初代河原崎権十郎]]のお坊吉三。</small>]]
『'''三人吉三廓初買'''』(さんにんきちさ くるわの はつがい)は、[[安政]]七年 ([[1860年|1860]]) 正月、[[江戸]][[市村座]]で初演された[[歌舞伎]]の演目。通称『'''三人吉三'''』。
初演以後は[[吉原遊郭]]を舞台とした一幕が省略されるようになり、この場合[[外題]]の「廓初買」の三文字が意味を成さないので、これを『'''三人吉三巴白浪'''』(さんにんきちさ ともえの しらなみ)という外題にして上演する。これが今日ではほとんどとなっている。
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==あらすじと見どころ==
<!--{{ネタバレ}}--><!--用途がちがいます-->
『三人吉三』は、いずれも吉三郎<small>(きちさぶろう)</small>という名の三人の盗賊を中心に、彼らを取り巻く者たちの複雑な人間関係を描く、きわめて物語性の高い演目である。
三人はそれぞれ、和尚吉三<small>(おしょう きちさ)</small>、お嬢吉三<small>(おじょう きちさ)</small>、お坊吉三<small>(おぼう きちさ)</small>と名乗る盗賊となっている。これが百両の金と短刀「庚申丸」をめぐる[[因果応報]]の末に、差し違えて死ぬところで幕引きとなる。
特に有名なのが序幕「大川端庚申塚の場」で、数ある歌舞伎の演目の中でも横綱級の人気がある(=上演回数が特に多い)。節分の夜、[[隅田川|大川]]端庚申塚で、ひょんなことから[[私娼|夜鷹]]を殺して[[小判]]百両を奪ったお嬢吉三。そこで朗々とまるで唄いあげるかのようにはくのが次の[[科白]]である。
:月も朧<small>(おぼろ)</small>に 白魚の
:篝<small>(かがり)</small>も霞<small>(かす)</small>む 春の空
:冷てえ風に ほろ酔いの
:心持ちよく うかうかと
:浮かれ烏<small>(からす)</small>の ただ一羽
:ねぐらへ帰る 川端で
:竿<small>(さお)</small>の雫<small>(しずく)</small>か 濡れ手で粟<small>(あわ)</small>
:思いがけなく 手に入る<small>(いる)</small>百両
::''(舞台上手より呼び声)御厄払いましょう、厄落とし! ''
:ほんに今夜は 節分か
:西の海より 川の中
:落ちた夜鷹は 厄落とし
:豆だくさんに 一文の
:銭と違って 金包み
:こいつぁ春から 縁起がいいわえ
この「厄払い」と呼ばれるお嬢吉三の独白は、歌舞伎の名科白中の名科白として知られている。
そこにお坊吉三が現れ、その金をよこせと無理を言う。斬り合いはじめた二人に割って入ったのは和尚吉三だった。この三人が意気投合、『[[三国志演義|三国志]]』の「[[桃園の誓い]]」の故事にちなみ、梅の木の下で[[義兄弟]]の契りを結ぶ。序幕の圧巻である。
この百両と名刀「庚申丸」の所在が転々とするうちに、三人の吉三をめぐってそれまで隠されていた複雑な人間関係が徐々に明らかになっていく。<!--{{ネタバレ終了}}--><!--用途がちがいます-->
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その初演
黙阿弥は自らの旧作
お嬢吉三は女装の美少年という設定。黙阿弥は他にも『[[都鳥廓白波]]』(忍の惣太)の花子や、『[[青砥稿花紅彩画]]』(白浪五人男)の弁天小僧などにもこの「性の逆転」という手法を用いている。しかも本作ではそのお嬢吉三がお坊吉三とが恋仲に陥るというさらに倒錯した設定である。倒錯といえば、和尚吉三の妹・おとせには十三郎という恋人がいるのだが、実はこの二人は幼い時に生き別れになった[[双生児|双子]]の兄妹という設定。「[[畜生道]]」、今日の表現で[[近親相姦]]である。
本作が書かれた[[幕末]]は、動乱する政局を忘れようとするかのように、江戸の庶民は爛熟した文化と頽廃した世相の中に浸った時代だった。そうした様子が本作には如実に表されているのである。<!--『[[四谷怪談]]』や「[[与話情浮名横櫛|切られお富]]」(『与話情浮名横櫛』)などでも題材化されている。本作では、-->二人の関係を知った和尚と父の伝吉の苦悩。おぞましい事実を知らずに[[来世]]での幸福を夢見て和尚の刃に果てる二人の悲劇。単なる白浪物に終わらない深刻な人間ドラマとしての一面をももつ作品である。また舞台演劇としては、三者三様のいでたちで盗賊として活躍するさまが、高い視覚的効果をあげている<!--と評価される-->。
なお物語上の主役であるお嬢吉三は、堅い芸風で伸び悩んでいた三代目岩井粂三郎を売り出すため、黙阿弥が苦心して創造した「当て書き」である。お嬢吉三が実は八百屋お七というのも、粂三郎が最も得意としていたのがこの八百屋お七だったからに他ならない。このお嬢吉三は大当たりとなり、これを出世作として粂三郎は後の[[岩井半四郎 (8代目)|八代目岩井半四郎という大看板に成長してゆく。
==翻案作品==
== 初演時の主な配役 ==
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*「…年長でもあり、キャリアも他の二人より上なので、…一種の親分肌の頼もしさがなければならず、そうした貫録とでもいったものが第一でしょう。…この役の場合、義理人情も二人の盟友の上に立つ責任みたいのなものから発している、そこのところが肝腎なので、それを忘れないように、と思っています」([[尾上松緑 (2代目)|二代目尾上松緑]])
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<references />
== 関連項目 ==
<!--=== 作品 ===
* [[歌舞伎の演目一覧]]
* [[河竹黙阿弥]]
78 ⟶ 109行目:
* [[白浪物]]
* [[市村座]]
* [[まなびや三人吉三]]<
* [[三猿]]
* [[三国志]]--><!--本文中に既出-->
* [[三人組]]
<!--
=== 歴代の
前途の通り、歌舞伎劇として高い評価を得た本作は、20世紀を通し21世紀初頭の現代に至るまで頻繁に上演される人気演目となっており、初演時以降、様々な歌舞伎役者がこの演目に取り組んでいる。
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;映画・演劇
* [[坂田藤十郎 (4代目)|]](映画『怪盗三人吉三』木屋吉三役)
* [[藤田記子]](演劇
-->
== 参考文献 ==
*二代目河竹
*石橋健一郎「歌舞伎見どころ聞きどころ 芸談でつづる歌舞伎鑑賞」淡交社、1993年。ISBN 4-473-01281-6
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== 外部リンク ==
* [http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/sakuhin52.htm 三人吉三の三すくみ](評論)
* [http://www5b.biglobe.ne.jp/~kabusk/dentoh6.htm 試論:黙阿弥の「七五調」の科白術](評論)<!--
* [http://www.gutenberg21.co.jp/kichisa.htm デジタル書店"グーテンベルク21"「三人吉三廓初買」] (お嬢吉三の「大川端庚申塚の場」の名セリフを収載)--><!--重複-->
* [http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc_dic/dictionary/dic_sa/dic_sa_06.html 歌舞伎事典「三人吉三廓初買」](「大川端庚申塚の場」の動画
▲* [http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc_dic/dictionary/dic_sa/dic_sa_06.html 歌舞伎事典「三人吉三廓初買」](「大川端庚申塚の場」の画像を収載<[[2001年]]12月、[[国立劇場]]>、<small>お嬢=七代目市川染五郎、和尚=九代目松本幸四郎、お坊=四代目中村梅玉</small>)
* [http://www.arc.ritsumei.ac.jp/artwiki/index.php?title=%E4%B8%89%E4%BA%BA%E5%90%89%E4%B8%89%E5%BB%93%E5%88%9D%E8%B2%B7&printable=yes ArtWiki「三人吉三廓初買」](幕ごとのあらすじを紹介)
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