「長征」の版間の差分

共産党指導部は[[江西省]][[瑞金]]から[[陝西省]][[延安]]に至るまで転戦、国民党勢力との戦闘などにより10万人の兵力を数千人にまで減らしたが、国民党蒋介石政府が抗日のため共産党との妥協に転じたため状況は終息した。途上で開催された[[遵義会議]]など等によ因り、[[毛沢東]]の指導権が確立された。現共産党政権は、長征を現代中国形成に至る歴史的転換点と捉えている。

国民政府は、[[1930年代]]、「[[中華ソビエト共和国]]」と称する支配地域を各地に築いていた共産党に対し攻勢を強め、「囲剿（=悪者を囲み滅ぼすの意）」と称する包囲殲滅戦を各地で展開した。当時共産党の最大勢力圏は江西省瑞金を中心にした[[山岳]]地帯根拠地であった。[[民族資本]]や[[外国資本]]の集まる大都市や[[半植民地]]化された沿岸部からは遠くはな離れた地域であったため為、中華ソビエト地区を発展させるには農業の発展が不可避であり、半農半兵という状態であった。

[[1930年]]12月から始まった第1次-第4次囲剿では、国民党軍は兵力を小出しにしたこと事、また又[[紅軍]]側は山岳地帯での[[ゲリラ]]戦を展開したこと事で、これ之を打ち破った。

[[蒋介石]]は第1次-第4次の失敗は、兵力の分散と不慣れなゲリラ戦に対応できな出来無かったこと事、さら更には紅軍の装備が貧弱であること事から[[軍隊]]としての能力そのも其の物も低いであろうと見くび縊っていたこと事にあると判断した。こ此のため為、[[1933年]]10月からの第5次囲剿にお於いては、兵力もそ其れまで迄の4-5倍に相当する100万人規模を投入、[[塹壕]]と[[トーチカ特火点]]を設置した本格的地上戦を展開し、さら更には当時僅かしか保有していなかった航空兵力まで投入した。

こ此の包囲網に対し、当時共産党の実質的最高指導者であった[[秦邦憲]]は[[コミンテルン]]より派遣された軍事顧問[[李徳]]（オットー・ブラウン_(共産主義者)|オットー・ブラウン]]（中国名李徳）の提言を鵜呑みにし、[[塹壕戦]]を展開した。[[周恩来]]・[[トウ小平|鄧小平]]・毛沢東らは、圧倒的優位な包囲軍に対して塹壕戦を展開するのはあま余りに無謀であると反対したものの、党中央の決定は覆らず、ここ爰に中国史上初めての中国人同士による近代的[[塹壕]]戦が展開されること事となった。

秦邦憲の考えは、こ此の戦いは国民党と共産党の最終決戦であり、また瑞金中華ソビエト地区の経済基盤は脆弱そのも其の物で、戦闘を繰り返せば疲弊し、戦わずして根拠地を喪失する、よ因って短期に決戦を挑む、ここ此処で勝利できな出来無ければ革命そのも其の物が敗北するというものであった。また又、オットー李徳は[[第一次世界大戦]]・[[ロシア革命]]を戦った[[ソビエト連邦|ソ連]]の陸戦を模範にした軍事顧問であり、ゲリラ戦を展開する紅軍に苛立ちを覚えていたという。当時の国民党軍は[[ドイツ]]の軍事顧問を迎えており、対抗意識も多分にあ在ったろう。

しか然し、兵力・装備とも圧倒的に不利な紅軍は順次防衛線を後退させ、つい遂に防衛線は[[首都]]瑞金の北辺まで後退、1934年4月の[[広昌県|広昌]]失陥に際しては1万以上の兵力を失うという大敗を喫した。瑞金の陥落はもはや最早避けられない情勢となった。

1934年7月、ま先ず[[方志敏]]の率いる部隊が[[福建省]]方面へと脱出を図ったが、こ此の隊は[[浙江省]]、[[安徽省]]を転戦した末に壊滅した。また又、8月には[[井岡崗山]]から[[蕭克]]、・[[王震]]、・[[任弼時]]らの隊が脱出し、[[貴州省]]へと逃れた<ref>野村浩一：『中国の歴史9 人民中国の誕生』（講談社、1974年）。pp. 276-277.</ref>。

1934年10月、つい遂に共産党中央は残存の紅軍第一軍八万の兵力の撤退・南下して包囲網の突破と、併せて中央指導部の移転を決定した。後に残されたのは[[項英]]・[[陳毅]]など僅かな部隊で、ゲリラ戦を展開、根拠地維持を託された。

南下を開始した紅軍第一軍は、明確な目的地を示すこと事ができな出来無かった。ただただ只々逃げ惑う軍団は、それでも[[10月21日]]には国民党軍の第一次防衛線を突破、[[11月15日]]には第2・第3の防衛線を突破した。しか然し、12月に[[湘江]]を渡河した第1軍は3万あま余りの兵力に激減していた。

ここ此処に至り、共産党中央は[[湖南省]]西部に転進し、第二軍（総指揮官[[賀龍]]）との合流を企図した。しか然し、こ此の目論見は蒋介石も見通しており、兵力を湖南省に集中させた。蒋介石は経済基盤の強い大都市の失陥を恐れ、重点的に都市を防衛したのである。

国民党軍の動きによ因り再び進路を失った紅軍部隊は貴州省方面へ転進した。[[1935年]]1月、長征途上唯一とい言っても良い都市・[[遵義]]に入城する。

（遵義会議を記した当時の文書は存在せず、また又共産党からも公開されてな無い。以下は[[1949年]]以降共産党が出した文書を元に通説を記す。)

ここ此処までの行軍で疲弊しきった紅軍及び党中央は遵義で10日あま余りの休養を得る。こ此の休養期間中、そ其の後の行軍方針と戦略を決定する遵義会議が開催され、こ此の中で従来の共産党指導者であった秦邦憲、オットー李徳、周恩来が批判の対象とな成った。周恩来は自らの過ちを認めて[[朱徳]]らと共に毛沢東を支持し、毛沢東が政治局員のリーダーに選出された<ref>今井駿、久保田文次、田中正俊、野沢豊著『中国現代史』山川出版社、1984年。（参照は1版6刷。）pp. 175-176.</ref>。しか然し、[[海外留学]]経験のな無い毛沢東はま未だ単独で共産党を指導できる立場に無く、周恩来、・[[王稼祥]]との三頭政治とな成った。また又、瑞金第5次囲剿に際して戦略的にも戦術的にも致命的ミスを起こしたオットー李徳は更迭された。こ此の遵義会議が中国共産党にお於ける一大転換点となっている。

遵義に中華ソビエト地区を設定した紅軍・中国共産党は、ま先ず貴州から[[四川省]]に入る。ここ此処でさら更に西進した第一軍は念願の紅軍別働隊との合流を果たすが、目指していた第二軍ではな無く、[[張国燾]]の指導する第四軍（総指揮官[[徐向前]]）との邂逅となった。第四軍も同様に長征中であったが、敵は国民党軍ではな無く四川[[軍閥]]であった。引き続き行く手には国民党・共産党とも受け入れを拒否する[[少数民族]]、急峻な山々や執拗に追いすが縋る国民党軍が待ち受けていた。

四川省を転戦中に紅軍は[[赤水河]]（[[長江]]の南の支流）を4度渡河し、[[四川盆地]]を迂回して長江上流の[[大渡河]]の瀘定橋を渡り、[[大雪山脈|大雪山]]を踏破した。こ此の過程で国民党軍は紅軍の捕捉が不可能となり、追尾を放棄した。

か斯くして、1936年10月に江西省・湖南省・貴州省・四川省・[[甘粛省]]・陝西省と転戦、大自然・軍閥・国民党軍を相手に戦った第一方面軍は忽然と陝西ソビエト区に姿を現し、長征の完了を宣言したのである。しか然し、尚一部の部隊は西進し、[[新疆]]まで達している。

こ此の過程で八万を越えていた兵力が死亡・脱落などにより数千人にまで減少するなど等、大きな打撃を受けたが、こ此れ以後、毛沢東の指導権が確立され、国民政府に対する攻勢に転じる転換点として、共産党は「長征一万里」として、栄光ある事業と位置づけている。

長征の過程で内部粛清もあ有り共産党軍が延安に着いた時は壊滅状態になった。コミンテルンの資金援助で何とか食いつな繋いでいる状態であった。共産党はこ此の逃避行を英雄叙事詩に仕上げて、「長征の過程で多くの革命根拠地を設営し、数千万の共産党シンパ同情者を獲得した。そもそも抑々が戦略の失敗で始まった長征であったが、巨大な革命の種まき期であった。物資の調達などで略奪を厳禁したので、こ此のこと事によ因り中国共産党に対する人民の信頼を勝ち得た」と宣伝しているが、実際は[[人民裁判]]による[[地主]]・資本階級の処刑と資産没収、そ然うして小作人からの「革命税」徴収によって食いつな繋いだというのが実態であり、一概に「信頼を得た」とは言い難い。なお尚、こ此の手法は後の[[センデロ・ルミノソ]]など等の共産ゲリラによ由って引き継がれた。

壊滅状態から復活し得たのは、コミンテルンの指示で国民党との協力に抗日統一戦線結成の呼掛けて方針を転換したのと、[[西安事件]]と[[盧溝橋事件]]の発生により、国民党蒋介石政府が剿共政策から抗日の為に国内統一政策に優先順位を切り替えざるを得ない状況に追い込まれた為である。

こ此れを従軍取材した、アメリカ人記者[[エドガー・スノー]]の著作も有名である。