「幼年期の終り」の版間の差分

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発売当初から、[[C・S・ルイス]]が絶賛したのをはじめ、高級読者層からは高い評価を受けた。しかしSFファンからの評価はさほどのものではなく、欧米では長いことクラークの代表作としては扱われなかった。これに反して日本では紹介当初からSFファンに高く評価され、歴代SFベストテン投票の常連となっている。この差異の原因は何よりまずクラークの描く[[終末観]]に見られるアンチ[[キリスト教]]的色彩に求められよう。人類に[[嫌悪]]の情を催させる特異な姿をしたオーバーロードが人類の進化を援助し、人類の終末を見取るという結末は、欧米の一般読者層には受け入れがたいものであったと考えられる(ちなみに本作の文章について[[ブライアン・オールディス]]は「[[欽定訳聖書]]の[[詩篇]]を想起させる」と評している)。
 
しかし近年は欧米でも本作を傑作と推す声が高まっている。人類の進化と滅亡という、壮大な、しかし同時にいささか陳腐な主題を語りつつ、クラークは「清澄なイメージを平易な言葉で紡ぎ出す」という独特の才能を遺憾なく発揮して、平易でしかも精彩ある物語を構築した。とりわけ第3部に描かれた新旧人類の断絶の場面は、SFの持ち得た最も感動的な文の一つと絶賛されている。
 
==影響==
「人類の進化」というテーマ、「宇宙人による人類の飼育」というアイデアなどは、この作品において総括された。これ以降の「人類進化テーマ」「[[ファーストコンタクト]]テーマ」のSFは、何らかの形で『幼年期の終り』を意識せざるを得なくなったと言ってもいいだろう。その影響力は[[純文学]]の世界にも及んでいる。