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'''ジン'''([[アラビア語]][[複数形]] {{Lang|ar|جن (jinn)}}、[[英語|英]][[フランス語|仏]] {{Lang|en|jinn}}, {{Lang|en|djinn}})とは、[[アラブ]]世界で人にあらざる存在であり、なおかつ人のように思考力をもつとみなされる存在、すなわち[[精霊]]や[[妖怪]]、[[魔人]]など一群の超自然的な生き物の総称である。
 
[[イスラーム]]以前からいわば俗信として[[アラブ人]]に信じられてきたが、イスラム以降、[[クルアーン]]がその存在を否定せずに認めているため、[[神学]]などで盛んに論じられるようになった。
 
==名称==
アラビア語は[[子音]]が語幹としての性質を持ち、{{lang|ar|jinn}}の子音JNNの意味は「目に見えず、触れ得ないもの」である。
 
ジン ({{lang|ar|jinn}}) は[[複数形]]である。単数形は[[母音]]だけ入れ替わり変化し、[[男性形]]は'''ジンニー''' ({{lang|ar|jinnī}})、女性形は'''ジンニーヤー''' ({{lang|ar|jinnīyah}}) であとなる。ただしアラビア語では女性形にはヤの他にイが付く場合があるので、ジンの女性形がジンニーだと誤解されることもある。
 
ジンの語形はヨーロッパに伝わり {{Lang|en|jinn}} や {{Lang|en|djinn}} となり、ジンニーは'''ジェニー''' (仏 {{lang|en|génie}}) や'''ジーニー''' (英 {{lang|en|genie}}) などになった。ただしヨーロッパでは本来の数と性は失わ忘れられ、同義語的に使われる。
 
==性質==
実体が無く目に見えないうえに、変幻自在に姿や大きさを変えることが出来る。クルアーンにもその存在が認められており、ジンという表題のスーラ(章)があるほどである。知力・体力・魔力全てにおいて人間より優れるが、[[ソロモン|ソロモン王]]には対抗できず、彼はジンを自在に操り、神殿を立てる際にもジンを動員したと言われている。
 
人間に善人と悪人がいるように、ジンにも善人と悪人、[[ムスリム]]と非ムスリムがおり、人間と同様に救いを受けるものと[[ジャハンナム]]([[地獄]])に落ちるものがいる。人間に取り憑く場合があり、ジンに取り憑かれた人をマジュヌーン(majnǔn)({{lang|ar|majnǔn}})と呼ぶ。善性のジンに取り憑かれれば聖者となり社会に利益をもたらすが、悪性のジンに取り憑かれると狂人になる。
 
害悪を与えるといっても、ただの悪戯好きから人間の命を奪うものまで様々である。強大で恐ろしいものから順に[[マリード]](マーリド、マリッド)、[[イフリート]]、[[シャイターン]]、ジン、ジャーンと格付けされており、リーダー格が[[イブリース]]だと言われている。しかしイブリースがアル・シャイターンと呼ばれているので異説もあるようだ。人助けをするイフリートもいることから、この階級は悪性だけでなく、善悪統合した階級だという意見もある。
 
==イスラームとの関係==
クルアーンに由来する公認教義によると、ジンは人間と[[天使]]の中間を占める被造物であり、古典イスラム法ではジンの地位を定義しており、人間とジンの間の婚姻の問題についてさえ考えているという。
 
[[アッラーフ]]が土から[[アダム|アーダム]] ({{Lang|ar|آدم}}) を作る2000年も前に、煙の出ない火から作られたとされる
[[イスラム教]]が成立するより前、[[ジャーヒリーヤ]](無明時代)と呼ばれた頃では、ジンは神々またはそれに準じる存在としてアラブ人によって崇拝されていた。[[唯一神教]]であるイスラム教でも、ジンの存在を完全には無視できなかった。
 
[[イスラム教]]が成立するより前、[[ジャーヒリーヤ]](無明時代)と呼ばれた頃では、ジンは神々またはそれに準じる存在としてアラブ人によって崇拝されていた。[[唯一神教]]であるイスラム教でも、ジンの存在を完全には無視できなかった。
[[アッラーフ]]が土から[[アダム|アーダム]] ({{Lang|ar|آدم}}) を作る2000年も前に、煙の出ない火から作られた。
 
==物語の中でのジン==
『[[千夜一夜物語]](アラビアンナイト)にも多くのジン(またはイフリート)が登場[[]]・[[]]・[[指輪]]などに閉じ込められている場合が多い。日本において最も広く知られているジンは『千夜一夜物語』の中で最も有名な物語'''『[[アラジンと魔法のランプ]]』'''に登場するランプの精(または魔人、魔神)、およびこれを原作とする[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー映画]]映画『[[アラジン (映画)|アラジン]]のコミカルな'''[[ジーニー (ディズニーキャラクター)|ジーニー]]'''であろう。テレビの[[ハクション大魔王]]、[[大魔王シャザーン‎]]や[[かわいい魔女ジニー]] などもよく知られる。
 
[[テーブルトークRPG]]『[[ダンジョンズ&ドラゴンズ]]という[[テーブルトークRPG]]で、{{lang|en|djinn}} は風、{{lang|en|efreeti}} は火、{{lang|en|marid}} は水、{{lang|en|dao}} は土の属性を持つ強大な魔物として登場しており、いる。後の[[ロールプレイングゲーム|RPG]]作品もそれに倣い、ジンを風の[[精霊]](それもスピリットというよりエレメントという意味での)と扱っているものが存在する。確かにジンは風同様、実体が無く目に見えないが、上述の通りジンの種類は多様であり、どちらかと言えば風に限らず精霊・妖怪の全般と相当させる方が近い。
 
==参考文献==
*[[山折哲雄]]監修  [[堀内勝]]著『世界宗教大事典』[[平凡社]]、1997年、初版。ISBN 4-582-13002-X
*[[田丸徳善]]監修  [[山我哲雄]]編訳『カラー版世界宗教事典』[[教文館]]、1991年。ISBN 4-7642-4007-6
*[[ジョン・R・ヒネルズ]]編『世界宗教事典』佐藤正英監訳、[[青土社]]、1999年。ISBN 4-7917-5706-8
 
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