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'''パラフィン''' (paraffin) とは、炭化水素化合物(有機化合物)の一種。[[炭素]][[原子]]の数が20以上の[[アルカン]](一般式がC<sub>n</sub>H<sub>2n+2</sub>の鎖式飽和[[炭化水素]])の総称である。和名では'''石蝋'''(せきろう)という。
 
{{Otheruseslist|石油製品の蝋状若しくは、非揮発性の油性液体について|脂肪族炭化水素(パラフィン族)|アルカン|石油原料の弱揮発性の燃料油・溶剤|ケロシン}}
パラフィンが指し示す範囲は広いので一般に使用される場合、ある特定の範囲を指していることが多い。もっとも一般的な用いられ方としては、パラフィン類を原料として製造される[[パラフィン紙]]などがある(詳しくは[[#用途|用途]]を参照)。日本では用いられないが、[[イギリス|英国]]、[[南アフリカ]]では、[[灯油]]を指す言葉として一般に用いられている。
 
[[イギリス|英国]]、[[南アフリカ]]では、[[ケロシン]][[灯油]]を指してパラフィンオイル (Paraffin oil)、または単にパラフィンと呼ぶ。一方、固形パラフィンはパラフィン[[ワックス]] (Paraffin wax)とよばれる。
== 定義 ==
非揮発性の精製した飽和[[炭化水素]]の混合物の総称。[[有機化合物]]の分類のひとつ(*1)。
有機化学での分類としては、炭化水素化合物で[[アルカン]] (alkane)(アルカン族)と呼ばれる([[化学式]]ではC<sub>n</sub>H<sub>2n+2</sub>(アルカンの一般式)とあらわされる)物質の中で、n、つまり[[炭素]]原子の数が20以上のものを指す総称(物質をグループ分けするための名称)。または「パラフィン系」「パラフィン類」という分類はこの意味に基づく。アルカンとは、C&minus;H、C&minus;C [[単結合]](飽和結合)からなる鎖式(鎖状)構造を持つ「鎖式飽和炭化水素化合物」のこと。石油を精製してできる[[石油精製品]]、[[メタン]]、[[エタン]]、[[プロパン]]などの仲間である。<!--メタンは炭素数1個、エタンは2個。(さすがに不要でしょう)-->
<small>*1 現代では、有機化合物という言葉は『炭素原子を構造の基本骨格に持つ化合物』であり、それ以外の意味を持たない。</small>
 
{{炭化水素化合物分類}}
 
パラフィンの語源は、ラテン語の parum(欠落)と affinis(反応)で『反応しない』という意味をもつ。
 
=== 流動パラフィン(固形) ===
== 構造による分類 ==
常温において半透明ないし白色の軟らかい固体(蝋状)で水に溶けず、化学的に安定な物質である、成分は主にノルマルパラフィンの炭素数20以上の混合物であり、融点については用途により異なる。日本に於いては単にパラフィンと呼ぶ場合が多いが、ケロシンとの混同を避ける為、特にパラフィンワックスとも呼ぶ。
詳細は記事: [[炭化水素#構造と分類]]も参照のこと。
 
ロウソク、クレヨン等で身近に使用され、生活場面ではしばしば[[ロウ]]として扱われるが、化学的に言う所のロウと全く異なるので留意する必要がある。
=== 直鎖型と分岐型 ===
パラフィンは直鎖型の分子構造をもつノルマルアルカン(ノルマルパラフィン)、分岐(枝分かれ)をもつイソアルカン(イソパラフィン)、環状のシクロアルカン(シクロパラフィン)の3種類に分類される。
 
通常パラフィンという場合はノルマルアルカンを指す。
 
=== 短鎖と長鎖流動パラフィン ===
常温では無色の液体で非揮発性。わずかに臭う。水には不溶。化学的に安定な物質で、通常の条件では酸化を受けない。成分については固形のパラフィンよりオレフィン系炭化水素に富む。乳化しやすくのびや浸透性に優れる。純度は紫外光の吸光度により計測される。
通常パラフィンは均一の物質ではなく「構成する炭素鎖」がさまざまなものが混ざっている。パラフィンのなかで炭素鎖が長いものを多く含むものは固体状で、「[[石油ワックス]]」と呼ばれる。<!--石油ワックスは直鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)、分枝鎖状炭化水素(イソパラフィン)、環状炭化水素(シクロパラフィン)の3種に大別される。(上で述べているのでコメントアウトします)-->
一方、炭素鎖に短いものが多く含まれるものは常温常圧で液状であり、「[[#流動パラフィン|流動パラフィン]]」(liquid paraffin) と呼ばれる。
 
流動パラフィンには多くの呼び方がある。ヌジョール (nujol)、ホワイト油、白色鉱油、水パラフィン、ミネラルオイル、ミネラルオイルホワイト、医療用パラフィン (medicinal paraffin)、パラフィンファックス、saxol、USP mineral oil、adepsine oil、Albolene、glymolなど。
== 物性 ==
揮発性が非常に低く化学的な安定性が高い。熱を伝えにくい。常温で液体または固体。精製度の高いパラフィンは無色。<!--(重油、アスファルトも広義でのパラフィン類に含まれるが、これらは精製度合いが低くカーボンやその他の挟雑物を含み、そのため黒褐色を有する。)(所在・製法と重複するため、コメントアウトします)-->
 
最も身近な物がベビーオイルであろう。
良質のパラフィンは電気的に非常によい絶縁体で、電気抵抗はおよそ10<sup>17</sup> &Omega;。[[テフロン]]として知られる素材以外にはこれ以上の絶縁体はない。
 
=== 石油ワックス ===
無味無臭。ろう状の固体。[[融点]]は約47~65 ℃。[[水]]には不溶であるが、[[エーテル (化学)|エーテル]]、[[ベンゼン]]、[[エステル]]類に溶解する。パラフィンはほとんどの化合物に対して反応性が低いが、着火すると速やかに[[燃焼]]する。
 
石油ワックスは、[[蝋]](ろう:ワックス)と役割が似ているが、化合物として分類した場合に蝋は[[アルコール|高級アルコール]]類となる。
 
=== 流動パラフィン ===
常温では無色の液体で非揮発性。わずかに臭う。水には不溶。化学的に安定な物質で、通常の条件では酸化を受けない。乳化しやすくのびや浸透性に優れる。純度は紫外光の吸光度により計測される。
 
流動パラフィンには多くの呼び方がある。ヌジョール (nujol)、ホワイト油、白色鉱油、水パラフィン、ミネラルオイル、ミネラルオイルホワイト、医療用パラフィン (medicinal paraffin)、パラフィンファックス、saxol、USP mineral oil、adepsine oil、Albolene、glymolなど。
 
工業用ガソリンの一種、[[塗料]]の材料として用いられる。油性の汚れを落とす効果にすぐれるため化粧品にも利用される。[[医薬品添加物]]および[[食品添加物]]に使用されるのも流動パラフィンである。[[食品衛生法]]上では、「パンのデバイダー油([[離型剤]])」としてのみ使用が許可されている。[[瀉下薬|下剤]]にも使用される。
 
== 所在・製法 ==
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パラフィンは、[[石油]]に含まれ、[[分留]]によって取り出される。重油、アスファルトも炭化水素を含み、広義でのパラフィン類に含まれるが、これらは精製度合いが低くカーボンやその他の挟雑物を含有してため黒褐色を有する。また、蒸留精製する温度の違いで灯油などの燃料、流動パラフィンと石油ワックスは作り分けられる。
 
石油について、より沸点の低い留分の説明も記事: [[アルカン#所在・製法]] に詳しい。
 
パラフィンを構成する成分については生理的に不活性ではあるが、故に精製の程度により刺激性が規定されてしまう。医薬品より長期に亘り皮膚や頭髪に触れる事の多い化粧品用途では特に精良な物が用いられる。
== 生産量 ==
<!--統計項目に合致させるためにノルマルパラフィンの語を使用する-->
'''ノルマルパラフィン'''の2004年度日本国内生産量は179,732t、工業消費量は44,231tである。
 
== 利用形態別 ==
 
=== 産業利用 ===
 
=== 医療用 ===
 
=== 燃料用 ===
[[ロウソク]]に用いられる。
 
=== 食用 ===
食品衛生試験に合格したものは固形食品を直(じか)に包む事が許可される。
 
日本では、食品衛生法上、石油系ワックスに関する品質規制はない。(『流動パラフィンは化学的合成品ではないので、食品衛生法第六条に基づく指定の必要がない』とされている)。食品包装全般に使用されるワックスの品質をワックス業界が自ら管理することを目的に日本ワックス工業会が基準を制定している。
 
食品工場で使用される機械(たとえば製パン機では生地を分割する分割機)の潤滑油として従来、流動パラフィン(鉱物性オイル)が使用されていた。しかし、流動パラフィンの発がん性が議論されるようになり、現在では植物性オイルの使用が推奨されている。1970年からパンの製造過程におけるパン生地の自動分割機による分割の際、および焙焼(ばいしょう)する際の離型の目的に限ってのみ使用が許されており、パンへの残存量が0.10%未満だができるだけ少なくすることが望ましいと規定されている。[http://www.ffcr.or.jp/Zaidan/mhwinfo.nsf/ab440e922b7f68e2492565a700176026/7eb5d6beb4101b6d492569450016d00e?OpenDocument 厚生労働省行政情報昭和45年12月7日環食化第102号]パンの離型剤でも植物性オイルが使用されるようになってきているが、しかしながら、流動パラフィンは耐熱性があり酸化されにくいため、まだ多く使用されている。日本においては、食品機械用潤滑剤の安全性に関する規格・規準はない。しかしBSE問題等で食の安全性の観点が重視されているため、食品業界では、製品の安全性について、HACCP等の手法も取り入れ、さまざまな観点で見直しが行われている。[http://www.juntsu.co.jp/food/food5.htm 食品機械用潤滑剤の参考情報-食品機械用潤滑剤ガイド]
 
食用として認められたパラフィンは、[[飴]]、[[キャンディー]]の光沢をだす目的で使用されることがある。食用ではあるが[[消化]]されずに排出される。食用でないパラフィンには一般には油などの不純物が含まれており通常有害である。
 
日本では、食品添加物として認められているのは、食品の製造加工に必要なものとしてのその他項目としての流動パラフィンのみ。光沢剤その他では使用が認められていない。
 
<!--燃料か食料かなど用途でパラフィンを呼び分けることはない。(コメントアウト。上の別名のなかに、用途に由来する呼称が見えます)-->
 
=== 化粧品 ===
イソパラフィンが用いられる。これは水素添加ポリブテンともいわれる。分子量の小さなものは、軽質流動イソパラフィンとして一般的な油剤。高分子品は、粘度の高い油であり、接着性、艶出し効果があり、口紅等のメイクアップ製品の艶出し剤として使われる。
 
=== 石油たんぱく ===
昭和40年代前半、1960年代後半、数社の企業により[[ノルマルパラフィン]]から「石油たんぱく」が作り出され、[[コイ]]等で飼育実験がなされたが、消費者団体等から安全性への疑問から反対運動が起こり開発は中止している。世界的には、飼料や人の食料としてすでに実用に供されている。[http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurisan/koramu/sekiyu.htm][http://www.fiberbit.net/user/biology/QA/items/seibutu12.html]
 
== 規格 ==
=== 石油ワックス ===
 
=== 流動パラフィン ===
==== 食品 ====
*有機農産物加工食品の日本農林規格 (平成12年1月20日農林水産省告示第60号)や、酒類における有機等の表示基準(平成12年12月26日国税庁告示第7号)では、病害虫の防除に使用する薬剤の一つとしてパラフィンを挙げ、[[展着剤]]として使用する場合に限るとしている。
 
== 特殊な呼称 - 灯油を指す ==
[[イギリス|英国]]、[[南アフリカ]]では、[[灯油]]を指してパラフィンオイル (Paraffin oil)、または単にパラフィンと呼ぶ。一方、固形パラフィンはパラフィン[[ワックス]] (Paraffin wax)とよばれる。
 
日本での灯油は炭素数 9–18のもの。炭素数 17以上は残油と呼び、そのうちパラフィンは炭素数20以上のものをいう。英国では炭素数 9–18のものをParaffin oilと呼んでいる。
 
== 用途 ==
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**着火剤
**[[火吹き]]
**ランプ、キャンプ用ストーブの燃料
**[[ハイブリッドロケット]]の[[ロケットエンジンの推進剤|推進剤]](イソパラフィン系の高オクタン価ガソリン)
*固定
**[[マッチ]]軸木の[[含浸材]](燃焼材として)
**[[クレヨン]]
**[[組織 (生物学)|組織]]学の[[標本]]作成での[[包埋]]材
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***クッキングシートの素材:耐熱、遮蔽
**[[中性子]]遮蔽
**レザー皮革製品等の撥水防水:水パラフィン利用
**[[理学療法]]における[[温熱療法|パラフィン浴]](厚生労働大臣が基準を定めて指定する医療機器(平成17年厚生労働省告示第112号)別表の 132)
*[[滑剤]]
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**リンスや化粧品(ベビーオイル、乳液、クレンジングクリーム、コールドクリーム)の原料(流動パラフィン)
**軟膏基剤として調剤(流動パラフィン)
*[[溶剤]]
**[[自然系塗料|自然系(偽自然)塗料]]([[自然塗料]]に対比する用語)(イソパラフィン)
*潤滑
**エンジンオイル(流動パラフィン、イソパラフィン)
**電気カミソリ・バリカン(流動パラフィン:潤滑・防錆用途)
*食品添加物
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*農業用
**農業用[[展着剤]]([[農薬]]の[[湿展性]]・[[付着性]]を高める)[[アビオン]]社[[アビオン-C]]、[[アビオン-E]]、[[カネショウ]]社[[ペタンV]]など。
=== 定義食用 ===
食品衛生試験に合格したものは固形食品を直(じか)に包む事が許可される。
 
日本では、食品衛生法上、石油系ワックスに関する品質規制はない。(『流動パラフィンは化学的合成品ではないので、食品衛生法第六条に基づく指定の必要がない』とされている)。食品包装全般に使用されるワックスの品質をワックス業界が自ら管理することを目的に日本ワックス工業会が基準を制定している。
 
食品工場で使用される機械(たとえば製パン機では生地を分割する分割機)の潤滑油として従来、流動パラフィン(鉱物性オイル)が使用されていた。しかし、流動パラフィンの発がん性が議論されるようになり、現在では植物性オイルの使用が推奨されている。1970年からパンの製造過程におけるパン生地の自動分割機による分割の際、および焙焼(ばいしょう)する際の離型の目的に限ってのみ使用が許されており、パンへの残存量が0.10%未満だができるだけ少なくすることが望ましいと規定されている。[http://www.ffcr.or.jp/Zaidan/mhwinfo.nsf/ab440e922b7f68e2492565a700176026/7eb5d6beb4101b6d492569450016d00e?OpenDocument 厚生労働省行政情報昭和45年12月7日環食化第102号]パンの離型剤でも植物性オイルが使用されるようになってきているが、しかしながら、流動パラフィンは耐熱性があり酸化されにくいため、まだ多く使用されている。日本においては、食品機械用潤滑剤の安全性に関する規格・規準はない。しかしBSE問題等で食の安全性の観点が重視されているため、食品業界では、製品の安全性について、HACCP等の手法も取り入れ、さまざまな観点で見直しが行われている。[http://www.juntsu.co.jp/food/food5.htm 食品機械用潤滑剤の参考情報-食品機械用潤滑剤ガイド]
 
食用として認められたパラフィンは、[[飴]]、[[キャンディー]]の光沢をだす目的で使用されることがある。食用ではあるが[[消化]]されずに排出される。食用でないパラフィンには一般には油などの不純物が含まれており通常有害である。
 
日本では、食品添加物として認められているのは、食品の製造加工に必要なものとしてのその他項目としての流動パラフィンのみ。光沢剤その他では使用が認められていない。
 
 
== 基準 ==
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== その他 ==
パラフィンワックスは[[鋳造]]にはあまり利用されない。それらは凝固時に体積が縮小し、室温でもろく、一般に壊れないように彫刻することができないためである。[[模型]]の製作には、軟らかく成型しやすい[[蜜蝋]]などが用いられる。
 
== 関連化合物 ==
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== 関連項目 ==
*[[蝋]]
*[[ワセリン]]
*[[ロウソク]]に用いられる。
*[[ベビーオイル]]
*[[ポマード]]
 
{{DEFAULTSORT:はらふいん}}