「天山の巫女ソニン」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
D.h (会話 | 投稿記録)
Melckebeke (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
1行目:
{{文学}}
『'''天山の巫女ソニン'''』('''てんざんのみこそにん''')は、[[菅野雪虫]]による[[児童文学]]作品。全5巻。天山で「夢見の巫女」として育てられたが落ちこぼれ、下界で生きることになった少女ソニンの活躍を描いた東洋風異世界[[ファンタジー]]小説である。本作は菅野のデビュー作であり、第1巻「黄金の燕」は、第46回[[講談社児童文学新人賞]](2006年)<ref>受賞時の原題は『ソニンと燕になった王子』。</ref> と第40回[[日本児童文学者協会新人賞]](2007年)を受賞している。
{{継続中の作品}}
『'''天山の巫女ソニン'''』('''てんざんのみこそにん''')は、[[菅野雪虫]]による[[児童文学]]作品。天山で「夢見の巫女」として育てられたが落ちこぼれ、下界で生きることになった少女ソニンの活躍を描いた東洋風異世界[[ファンタジー]]小説である。本作は菅野のデビュー作であり、第1巻「黄金の燕」は、第46回[[講談社児童文学新人賞]](2006年)<ref>受賞時の原題は『ソニンと燕になった王子』。</ref> と第40回[[日本児童文学者協会新人賞]](2007年)を受賞している。
 
{{ネタバレ}}
== あらすじ ==
'''第1巻「黄金の燕」'''
: 大陸から南に突き出た半島に存在する3つの国。そのうちの1つである沙維国の北部には「天山」と呼ばれる高山がそびえ、そこには「夢見」という特殊な能力を持つ巫女たちが住んでいた。天山の巫女たちは幼少の頃に生みの親から引き取られ、下界と切り離されたこの地で、夢見の能力のほか、さまざまな知識と学問を授けられながら、俗世の人とは異なる存在として育てられるのだった。
: 主人公の少女ソニンもそうした1人であったが、12歳になっても夢見の能力が思うように使えなかったことから「見込み違い」とされ、下界にある実家に戻されることとなった。天山とはまったく異なる下界の様子に戸惑いつつも、ソニンは両親と姉に暖かく迎えられ、庶民の子として慎ましく生きようとしていた。ところが、しばらくして沙維国の王子一行が村に立ち寄り、ソニンは偶然知り合った末の王子イウォルの侍女として召し抱えられることになった。人々の欲望と嫉妬の渦巻く王宮の中で、ソニンの波乱に満ちた人生が始まる……
 
'''第2巻「海の孔雀」'''
主人公の少女ソニンもそうした1人であったが、12歳になっても夢見の能力が思うように使えなかったことから「見込み違い」とされ、下界にある実家に戻されることとなった。天山とはまったく異なる下界の様子に戸惑いつつも、ソニンは両親と姉に暖かく迎えられ、庶民の子として慎ましく生きようとしていた。ところが、しばらくして沙維国の王子一行が村に立ち寄り、ソニンは偶然知り合った末の王子イウォルの侍女として召し抱えられることになった。人々の欲望と嫉妬の渦巻く王宮の中で、ソニンの波乱に満ちた人生が始まる……
: 沙維と隣国江南との間で外交問題が生じる中、ソニンの主のイウォル王子は宮廷での発言権も活躍の場も与えられず、鬱屈した日々を送っていた。そのような中、イウォルは江南の第2王子クワンから江南への留学を熱心に誘われた。クワンの華やかな人柄に強く惹かれていたイウォルは喜んで江南に行くことにしたが、同行するソニンはクワンの誘いに何か裏があるのではないかという不安をぬぐえなかった。
: 江南にやって来たソニンたちは、前年戦火に見舞われ、その傷跡に苦しむ貧しい人々の暮らしと、以前のままに見事に復興された王宮の様子のあまりの違いに驚き当惑する。そして楽園のような王宮の世界の中、ソニンが訪れたクワン王子の住まいは、派手な外見からは想像もつかないようなひっそりとしたものであった。そこでクワンの妹リアン王女と知り合ったソニンは、クワンの複雑な出自と彼の中に潜む暗い影を知ることになる……
 
'''第3巻「朱烏の星」'''
: ある夜ソニンは夢の中で草原の中にうち捨てられた建物を見た。普通の民家などとは異なるその様子が少し気になったが、行くことのない場所だと思い直して、すぐに考えるのをやめてしまった。
: この時、沙維に住む森の民が巨山に捕らえられるという事件が起きた。捕らえられたのがイウォル王子の乳母の一族であったことから、彼らの解放と国交回復の交渉のため、イウォルとソニンは「狼殺しの王」と呼ばれる巨山王のもとに赴くこととなった。巨山の王都を目にしたソニンたちは、その圧倒的な技術力と国力の高さに驚かされる。さらに巨山王の気さくな人柄や豊かな生活を送る民衆の様子を見て、それまでの先入観を覆される思いであった。
: 王宮の中で黒曜石作りの見事な星図を見つけたソニンは、そこで偶然にも巨山王の一人娘のイェラ王女と出会う。ソニンに天山の様子を熱心に尋ねるイェラだが、話題が星に及ぶと突然態度を豹変させ、その唐突さにソニンは困惑する。翌日城の外に馬で遠乗りに出たソニンは、焼け落ちた天文台の話を聞き、そこに行ってみることにした。その天文台はソニンが夢で見たあの建物であった……
 
'''第4巻「夢の白鷺」'''
: 江南のクワン王子が再び沙維を訪れ、人々の話題をさらう中、ソニンはクワンの側近セオの存在に気づき驚く。ソニンが前年巨山で雪崩に巻き込まれた時、救い出してくれた謎の人物は彼だったのだ。クワンに再会したソニンは、彼から妹のリアン王女が会いたがっている話を聞かされ、イウォル王子の許可を得たソニンは再び江南に行くことにした。江南でリアンの世話をすることになったソニンだが、突然の大嵐が江南を襲い、未曾有の被害に直面することになる。
: 江南の大災害の知らせを受けた沙維は、救援のため急遽イウォル王子を派遣する。イウォルの到着とほぼ同時に、敵国巨山から江南に無償で大量の食料と薬を援助するという申し出が伝えられた。さらに巨山のイェラ王女が使節を率いて江南にやって来た。イェラの美貌と巨山からの多大な援助は、江南の人々の心をたちどころにつかんでしまった。しかしその友好的な雰囲気の裏には、江南に対する辛辣な策謀が隠されていた……
 
'''第5巻「大地の翼」'''
: 巨山のイェラ王女が沙維を訪問することとなった。パロル王をはじめ沙維は彼女の意図が読めず困惑するが、実際に訪れたイェラは以前よりもさらに美しく友好的な態度で人々に接し、王宮のみならず民衆までもが彼女に好感を持つようになる。ところが最後の宴の席で突如イェラは打って変わって沙維の王子たちを嘲弄し、ソニンに巨山王が戦の準備をしていることを密かに告げて立ち去るのだった。一方江南では、巨山との連合が急速に進められていた。そしてクワン王子らの反対を押し切り、巨山の沙維侵略を援助する決定が下されてしまった。
: イェラ、クワンそして天山からの警告により、巨山との戦に備える沙維。ついに巨山が沙維に兵を向け、江南までもが参戦するなど、事態は悪化の一途をたどる。三国の若き王子・王女たち、そしてソニンは、この無益な戦を終わらせるために、それぞれが重大な決断を下すのだった……
 
== 登場国 ==
23 ⟶ 39行目:
; ソニン
: 天山の巫女だった少女。物語開始時の年齢は12歳。先代の大巫女に見いだされ、生まれたその日に両親から天山に引き取られた。長年巫女としての修行を積んできたが、「夢見」の能力を自在に操れず、大巫女から「見込み違い」だったと見なされ、下界の実家に返されることになった。実家に戻ってから数ヶ月後、ソニンの村に王子たちの一行が立ち寄り、末の王子イウォルと知り合う。ふとしたきっかけで口のきけない彼の手を触れることで、その心の声を聞くことができることが分かり、彼の侍女として王宮に勤めることになる。物語の中で、王宮や隣国江南・巨山で起きたいくつもの事件を直接間接に解決した結果、主人であるイウォル王子はもちろん、パロル国王やサウォル王子、さらには国外のクワン王子やイェラ王女たちからも信頼を得ている。
: 容姿は平凡で才走ったところもなく、愚鈍にさえ思われることもあるが、実際には思慮深く堅実で、洞察力が深く、周囲の評判に惑わされず冷静に物事を判断することができる少女である。ただ生まれてまもなく天山に引き取られ、巫女として欲望や感情にとらわれて生きることを禁じられてきたことから、下界で暮らす人々の悪意や嫉妬に疎いところがある。また、普通の人のように自分の欲しいものやなりたいものを明確に思い浮かべることができない。そのため友人のミンやイウォル王子が自分の目標を目指して努力する姿を見て羨しく思う時がある。
: ソニンの夢見の能力は、下界に降りてからは、睡眠中に偶然起きる程度ものとなっており、自分の意志で能力を発揮できたのは一度しかない。夢見でみた光景は、作中では事件解決の手がかりとなることが多いが、本人はそのような不確実な力を過信することなく、むしろ巫女の修行や下界で学んだ知識と経験に頼って生きていこうと考えている。薬や毒物に関して相当の知識を身につけている。また、ある経緯によって化粧にも詳しくなり、彼女の作る練り香や白粉は若い娘たちの間で人気だが、入手先の事情から本人はあまり快く思っていない。
; イウォル
29 ⟶ 45行目:
: 聡明で学問熱心な努力家であるが、当初は口がきけないことを気にしすぎるあまり、自分から周囲との壁を作ってしまうことがあった。潔癖すぎる気性と相まって、限られた少数の人にしか理解者がいなかったが、ソニンの支えやクワン王子らとの交流を通して、次第に思慮深くなるとともに、周囲の人にも心を開くようになり、人間的に成長する。物語の中で沙維国の抱える難題をいくつも解決したことから、現在では国内外での評判も大きくなりつつある。
; ソニンの父
: 沙維国の貧しい農民。天山から「見込み違い」で戻されたソニンを暖かく迎え入れた。謙虚な人柄で、ソニンが王宮に仕えることになった時には、王子の侍女という身分をかさに着て増長したりしないようにと彼女を諭している。もとは江南の国境近くの出身で、若い頃は船乗りになりたかったが、最初の航海で挫折した。その時の経験から、いささか変わった人生観を持っている。
; ユナ
: ソニンの姉で、物語開始時の年齢は17歳。村一番の美人との評判。妹のソニンを心から愛している一方、天山の巫女として育てられ、普通の子供のような他愛のない欲や望みすらも持てずにいる彼女のことをとても気にしている。
75 ⟶ 91行目:
; ヘス
: キノ一族の末端に連なる男。ミナ王妃の意を受け、クワン王子の失脚をたくらむ。
;テジク
:江南国の大臣の1人。王宮でも五本の指に入るという実力者で多くの荘園を抱えている有力な地主でもある。クワン王子の優れた資質を早くから評価する一方、キノ一族との関係とクワンの為人に対する不安から中立の立場をとっていた。ソニンやイウォル王子との交流を通してクワンが変わったことを感じ取り、彼への好意を強くするようになる。
 
=== 巨山の登場人物 ===
83 ⟶ 101行目:
: 父である巨山王を尊敬していたが、王の政策によって無情に切り捨てられてゆく民の存在を知り、次第にそのやり方に疑問を感じるようになる。現在は父王に従順を装いつつ、彼によって切り捨てられてゆく民たちの権利を守るため、国内外での自勢力の拡大を秘かに画策しており、父と対決して政治の実権を奪うことをも辞さない覚悟でいる。
; ムサ
: イェラ王女が飼っている愛犬。白い毛並みを持ち、子馬ほどの大きさがある。幼少の頃からイェラと一緒に育ち、彼女が唯一心を許せる存在である。イェラが遠乗りするときには必ず一緒に付き従う。非常に賢くイェラのさまざまな指示を忠実にこなす。
 
== 用語解説 ==
102 ⟶ 120行目:
*天山の巫女ソニン③ 朱烏の星(2008年2月20日、ISBN 978-4-06-214485-8)
*天山の巫女ソニン④ 夢の白鷺(2008年11月25日、ISBN 978-4-06-215081-1)
*天山の巫女ソニン⑤ 大地の翼(2009年6月26日、ISBN 978-4-06-215520-5)
 
== 脚注 ==
109 ⟶ 128行目:
[[Category:日本のファンタジー小説]]
[[Category:日本の児童文学]]
 
{{Lit-stub}}