「器物損壊罪」の版間の差分

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==法定刑==
3年以下の[[懲役]]または30万円以下の[[罰金]]もしくは[[科料]]であとな(境界損壊の場合は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
(境界損壊の場合は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
 
==保護法益==
損壊の対象となった物に対する財産権である。[[個人的法益]]。
(なお、境界損壊罪については[[個人的法益]]と同時に[[境界]]を公的に区分するという[[国家的法益]]の保護が要請されるので、そのため後述する[[親告罪]]か否かという点に差異が生ずる)
 
==構成要件==
他人の物を損壊すること、または他人の動物を傷害することであるをいう
 
===物===
ここでいうは[[公文書|公用文書]][[私文書|私用文書]]、建造物は含まれない。別途、処罰規定([[文書等毀棄罪]]、[[建造物等損壊罪]])が存在するためである。土地は本条の対象となる。
 
===損壊とは===
学説は多岐にわたるが、通説[[判例]]は、その物の効用を害する一切の行為をいうとしている。ゆえに物理的な損壊に限らず、心理的に使用できなくするような行為も損壊といえる。
*[[大審院]][[判例]]は、料理店の食器に放尿した行為について、器物損壊罪の適用を認めている。食器を入念に消毒すれば再使用はできるが、一度尿の付いた食器は誰も使いたがらないので器物損壊罪が適用された(大判明治42年4月16日刑録15輯452頁)。
*その他具体例を示す。
**[[]]に「不吉」と書く行為(掛軸としての効用を害する)
**建物に太陽光線を採光して通常使用する効用を害する、ガラス窓に数百枚の[[アジビラ]]を貼り付ける行為([[争議行為]]で被用者組合側が使用者側に対して行っている)(最決昭和46年3月23日刑集25巻2号239頁)
**自由に運動させる場いうしての効用を害する、校庭に杭を打ち込んで保健体育の授業を妨害する行為(最決昭和35年12月27日刑集14巻14号2229頁)
 
(なお、境界損壊罪においては、「損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により土地の境界を認識することができないようにする」ことが実行行為とされており、効用を害する一切の行為の内容が明示的に列挙してある)
 
===傷害とは===
他人の動物を殺傷する行為である。損壊と同様に動物としての効用を害する行為、たとえば、他人の池の鯉を流出させる行為も傷害といえる(大判明治44年2月27日刑録17輯197頁)。他人の鳥かごを開放して、飼育されているカナリヤなどを逃がしてしまう行為も同様に、(結果的に即死しなくても)傷害であとなる。
 
==補足==
動物について。他人の動物を不法に殺傷する行為は一般に器物損壊罪に該当する。しかし、法的に動物は物であるとはいえ、その用語例への抵抗からか、動物の殺傷行為については、動物傷害罪と記載する文献もある。
 
[[動物の愛護及び管理に関する法律]]('''[[動物愛護法]]''')は、第27条第1項に、[[愛護動物]]([[ウシ|]][[ウマ|]][[ブタ|]][[ヒツジ|めん羊]][[ヤギ|やぎ]][[イヌ|]][[ネコ|ねこ]][[ウサギ|いえうさぎ]][[ニワトリ|]][[ハト|いえばと]]及び[[アヒル|あひる]]、もしくは、その他の[[哺乳類]][[鳥類]]又は[[爬虫類]]で、人が占有している動物 同条第4項)をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する旨の罰則を規定している。
 
器物損壊罪は[[親告罪]]であり(264条),)、損壊された物の本権者または適法な占有者が[[告訴]]権を有する(最判昭和45年12月22日刑集24巻13号1862頁)。一方で[[動物の愛護及び管理に関する法律]]は非親告罪であり告訴権者(飼い主など)の親告を前提にせず告訴できるものの、対象は[[動物の愛護及び管理に関する法律#愛護動物|愛護動物]]に限定される。
 
境界損壊罪について、保護法益が個人的法益に尽きるわけではないから非親告罪である。
 
器物損壊罪は刑法犯であり、法定刑による懲役・罰金・科料にかかわらず、民事請求による[[損害賠償請求]](損壊された物の修理費など)を別途受ける可能性があことにもなる。
 
==関連項目==
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