「ジャンクDNA」の版間の差分

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'''ジャンクDNA'''(Junk DNA)とは、[[染色体]]あるいは[[ゲノム]]における機能がまったく特定されていないような[[DNA]]の領域のこと。分子生物学というのはまだ非常に若い学問であり、特に、このような機能の認められていないDNAの領域も、まだ発見されていないような手順で機能しているのかもしれない、という観点から、'''ジャンク'''という言葉は呼び誤りであると認識されている。実際、2004[[2005]]現在、新しい研究において、ジャンクDNAがまだ確認されていない機能を果たしているかもしれない、ということが示されている(追記参照)
 
ほとんどの[[動物|動]][[植物]]のゲノムにおいては、DNAのほとんどの部分において生物学的な役割が分かっていない。生物学者は、[[遺伝子]]がコード化している[[蛋白質]]に関する情報が不完全な時でも、その遺伝子の存在する[[染色体]]の領域を[[オープンリーディングフレーム]](Open Reading Frame; ORF、実際にアミノ酸配列として翻訳される領域のこと)として識別することが可能であり、また、ゲノムを扱う科学者は、このような領域がどのように機能するか知らないときでも、それが重要であると仮定することが合理的であると認識している。また、非蛋白質コード領域の'''DNA配列'''も重要なことが知られている。この中には、[[DNA複製]]の開始点として定義される'''複製起点'''、あるいは'''プロモーター'''、'''エンハンサー'''、'''サイレンサー'''といった遺伝子の発現を制御する塩基配列の領域が含まれている。
 
 
ヒトゲノムのおよそ97%は"ジャンク"であることが示されている。[[玉葱]]のゲノムは人間のものの12倍のサイズがあり、おそらくより多くの"ジャンク"をふくんでいると考えられる。また、これとは対照的に[[トラフグ]](''Fugu rubripes'')のゲノムは人間のものの1/10程度のサイズしかないが、ゲノムの1/3に有効な遺伝子がコード化されており、ほぼ同数の遺伝子をもっていると考えられている。このように、DNAのうち機能を持っている領域と"ジャンク"な領域の比率は種によって著しく違うようである。
 
*追記
[[2005年]]、[[理化学研究所]]を中心とする国際研究グループは[[ハツカネズミ|マウス]]の細胞内の[[トランスクリプトーム]]分析を行い、トランスクリプトームで合成される44,147種類のRNA中、53%に相当する23,218種類が[[蛋白質]]合成に関与しないものであること、蛋白質合成をおこなうコード配列であるセンスRNAの発現は蛋白質合成を行わないアンチセンスRNA(センスDNAと相補関係にある)によって制御されていることを突き止めた。<br>
この発見により、ジャンクDNAは実際には機能していることが分かり、従来のDNA観、ゲノム観を大きく転換する契機となると期待されている。
 
== 起原と機能に関する仮説 ==
ジャンクDNAが形成され、それがゲノムの中で維持されてきた理由に関するして、多くの理論が存在する。例えば、
 
* これらの染色体領域は[[進化論|進化]]の過程で断片化し破棄された、時に[[偽遺伝子]]として知られる無効となった遺伝子の集合である。関連する仮説に対する証拠として、ジャンクは働かなくなった[[ウイルス]]の蓄積されたDNAである事が示されている。
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ジャンクDNAがかなりの割合を占めるとする仮定 - 例えばヒトにおける'97%'という値 - は進化論とは決して調和しえない、という事にはには注意が必要である。細胞分裂の度に行われるこのような多量に含まれる無用の情報の複製は、役に立たないヌクレオシドの作成のため多くのエネルギーが浪費されることにつながり、生命にとっては重荷となるだろう。そのため、進化論における時間のスケールの上において、自然選択における懲罰的な損失を被る事なく利用可能なエネルギーおよび物質量を維持できるような水準に、削除的な変異による'ジャンク'配列の除去によってその量が削減されなければならない。本当に'ジャンクDNA'配列が存在しているという(現在では想定された時ほど一般的とは考えられていない)事実は、ポピュラーな科学では一般的に考えられている、よりエネルギーを維持するような[[自然選択説|自然選択]]の要求はそれほど厳しくないことを示唆している。
 
== 外部リンク ==
*[http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2005/050902/index.html 哺乳動物のトランスクリプトームの総合的解析による「RNA新大陸」の発見] - 理化学研究所のプレスリリース
 
== 参考文献 ==
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* [[テロメア]]
 
[[Category:分子生物遺伝学|しやんくてえぬえ]]
[[Category:分子生物学|しやんくていえぬえ]]
 
[[en:Junk DNA]]