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'''チェロ'''('''セロ'''とも表記。英名:''Cello''、''Violoncello'')は、[[西洋音楽]]で使われる[[ヴァイオリン属]]の[[弦楽器]]の一つである。弦数は4本。略号は「Vc」。
 
== 概要 ==
西洋の[[クラシック音楽]]においてける重要な楽器の一つであり、[[オーケストラ]]による[[合奏]]や[[弦楽四重奏]][[弦楽五重奏]]、[[ピアノ三重奏曲|ピアノ三重奏]]といった[[重奏]]の中では低音部を受け持つ。また、[[独奏]]楽器としても<!--弦楽器ではヴァイオリンの次に多く作られていてとても-->重要であり、多くの[[チェロ協奏曲]](チェロ・コンチェルト)や[[チェロソナタ]]が書かれている。[[ポピュラー音楽]]においては決して一般的ではないが、しばしばポップスや[[ロック (音楽)|ロック]]の曲中でも用いられる。
 
チェロに関した楽曲を時代ごとに挙げると、[[バロック音楽]]では[[ヨハン・ゼバスティアン・バッハ|J.S.バッハ]]の「'''[[無伴奏チェロ組曲]]'''」、[[古典派音楽]]では[[フランツ・ヨーゼフ・ハイドン|ハイドン]]の「[[チェロ協奏曲第1番 (ハイドン)|チェロ協奏曲第1番ハ長調]]」が挙げられる。[[ロマン派音楽]]では、[[アントニン・ドヴォルザーク|ドヴォルザーク]]の「'''[[チェロ協奏曲 (ドヴォルザーク)|チェロ協奏曲ロ短調]]'''」と[[エドワード・エルガー|エルガー]]の「[[チェロ協奏曲 (エルガー)|チェロ協奏曲ホ短調]]」が有名で、ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、数あるチェロ協奏曲の中でも特に有名かつ評価が高い。日本では「'''ドボコン'''」(「ドヴォルザークのコンチェルト」の意。彼が生涯に書いた協奏曲の中で最も有名であるが故である)と略され親しまれている。
 
== 語源 ==
チェロ」という語は本来は[[イタリア語]]の "{{lang|it|Violoncello}}" に由来する。これ本来"cello"とイタリア語で「小さな」という意味であって、"Violoncello" はすなわち「小さな[[ヴィオローネ]]」("{{lang|it|Violone}}" と接尾辞"{{lang|it|cello}}")という意味である。なお、ヴィオローネは[[コントラバス]]の元になった楽器であるが、このヴィオローネという語もまた「大きなヴィオラ」("{{lang|it|Viola}}" と接尾辞"{{lang|it|one}}"。ちなみに現在の[[ヴィオラ]]のことではなく単に弦楽器の意)という意味なのあるから、"{{lang|it|Violoncello}}" はいってみれば「小さな大きなヴィオラ」という意味わけである。この"Violoncello"の語が[[英語]]に[[外来語]]として入った後に "{{lang|en|Cello}}" と略され、それが[[日本語]]に入り「チェロ」となった。すなわち、本来「チェロ」とは「小さな」という意味である
 
== 構造 ==
[[画像:Cello parts.png|256px|frame|left|チェロの各部の名称。[[魂柱]]は内部にある柱であり、およその位置を図示している]]
チェロは、同じく[[ヴァイオリン属]]の楽器である[[ヴァイオリン]]や[[ヴィオラ]]とほぼ同じ構造である(なお、[[コントラバス]]は[[ヴィオール属]]の影響を強く受けているため、チェロなどの他の3つとは多少異なる)。ただし、低い音を出すために全体が大きくなっており、特に厚みが増している。弦も素材や基本構造こそ同じであるものの、太く丈夫に作られており、いる。それに伴って弓もヴァイオリンなどより太いが、長さは逆に短い。また、チェロはその大きさと重さゆえにヴァイオリンヴィオラのように顎で挟み手にんで保することが困難なので、[[エンドピン]]を床に立てて演奏する。エンドピンには[[亜鉛]]の[[合金]]が使用されることが多いが、最近では[[炭素繊維|カーボン]]や[[チタン]]、[[タングステン]]なども使用されている。本体の大きさに比べると[[指板]]はヴァイオリンなどより若干細めである。ヴァイオリン属では低音楽器になるほど胴体と弦の角度が大きいため、ヴァイオリンに比べると[[駒 (弦楽器)|駒]]が高く丈夫に作られている。
 
また、受け持つ[[音域]]からすると本来チェロはもっと大型化すべき楽器であるが、演奏が困難になるので現在のサイズとなっている。弦の長さもこれ以上長くできないので、巻線を使用するなどして低い音を出すようにしている。正しく[[調弦]]した状態で4本の弦にかかる張力は、弦のメーカーや銘柄によって多少異なるがおおむね同じであり、最も太いC弦も最も細いA弦もほぼ同じ9〜13kg程度の張力で、楽器全体では40〜50kgの張力となる。コントラバスや[[ギター]]のよう[[ウームギア]]による巻き取り上げ機構は一般的に備えておらず、ヴァイオリンやヴィオラと同じように木製のペグの摩擦だけで弦の張力を支えている。このため、ペグの調整が不完全な状態であると調弦がきわめて困難である。
 
楽器本体は基本的に[[メイプルカエデ]]などの木材で製作されるが、[[ドライカーボン]]製のチェロもアメリカでは販売されており、独特の音色と音量でユーザーが増えつつある。非売品として[[ガラス]]製のチェロも製作されたこともあるが、日常の演奏に耐え得るものではない。
 
== 調弦 ==
[[画像:cello001.png|thumb|right|チェロの各弦の調弦]]
チェロには4本の弦があり、奏者から見て左側、音が最も高い弦から第1弦、第2弦、第3弦、第4弦と番号が振られている。調弦は、第1弦が[[中央ハ]]音のすぐ下のイ音(A3)であり、以下[[音程|完全5度]]ごとに、ニ(D3)、ト(G2)、ハ(C2)となる。ため呼び名を番号でなく「C線」「C弦」(それぞれ慣習的に「ツェーせん」「ツェーげん」と読む。[[音名]]は[[ドイツ語]]読みする)など音名で呼ぶことも多い。第4弦のハ音は[[中央ハ]]音の2[[オクターブ]]下の音となる。この調弦は[[ヴァイオリン]]より[[音程|1オクターブと完全5度]]低く、[[ヴィオラ]]より1[[オクターブ]]低い。
 
変則的な調弦([[スコルダトゥーラ]])を用いによる楽曲としては、もある。[[ヨハン・セバスティアン・バッハ|バッハ]]の「[[無伴奏チェロ組曲]]」や、[[コダーイ・ゾルターン]]の「無伴奏チェロソナタ 作品8」(低い方からB1, F#2, D3, A3と調弦)などがある。バッハの無伴奏チェロ組曲第5番第1弦を1全音低めのG3G3と調弦する。また、同じく第6番は、第1弦より完全5度高いE4の弦を1本追加した5弦の楽器[[ヴィオロンチェロ・ピッコロ]]用に書かれている。[[コダーイ・ゾルターン]]の「無伴奏チェロソナタ 作品8」(低い方からB1, F#2, D3, A3と調弦)も変則的な調弦である。
 
== 記譜法 ==
チェロのための楽譜基本的に[[音部記号#ヘ音記号|ヘ音記号]]で[[楽譜]]に書かれるが、高音域になるときには[[テノール記号]]([[音部記号#ハ音記号|ハ音記号]])も使われる。さらに[[音部記号#ト音記号|ト音記号]]も稀に使われるが、時代によって意味が異なるので注意が必要である。テノール記号が併用される現代では、ト音記号も実音で記譜する。これに対し、主に19 世紀にはト音記号は声楽の[[テノール]]と同じようにオクターブ下げて読むのが普通であった。テノール記号が併用される現代では、ト音記号も実音で記譜する
 
== 歴史 ==
今日のスタイルのチェロの形態が確立したのは18世紀末以降であり、それまでは各種の形態、演奏法があったと推察されている。[[J.S.バッハ]]と同時代で親戚に当たる[[J.G.ヴァルター]](Walter)の音楽辞典(1732)には「チェロはイタリアの低音楽器で、ヴァイオリンのように演奏された。すなわち部分的に左手で支えられた」と記されている。また、[[レオポルト・モーツァルト]]の「ヴァイオリン奏法」(1756)では、「かつては5弦であったが今は4弦しかない」「この頃は脚の間に挟んで支えられる」と記されており、[[かつてはヴァイオリン]]のような奏法であったこと、ヴィオロンチェロ・ピッコロや[[ヴィオラ・ポンポーザ]]のような楽器も広くチェロという楽器であったことが推察される。実際に当時の絵画や彫刻に記されたではチェロと思しき楽器を肩の上または胸に当てて演奏する姿がられている。近年、このタイプのチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ=肩かけチェロ)の復元演奏が主に[[バロック・ヴァイオリン]]奏者の手によって行われている (外部リンク参照) 。1800年頃を境に音量が求められるようになり、楽器の構造や仕様に手が加えられた。この改造後の現代仕様のチェロを'''モダン・チェロ'''、歴史的楽器で改造を受けていないものを'''バロック・チェロ'''と言って区別することがある。バロック・チェロにはエンドピンがなく、通常5弦のことが多い
 
1800年頃を境に音量が求められるようになり、楽器の構造や仕様に手が加えられた。この改造後の現代仕様のチェロを'''モダン・チェロ'''、歴史的楽器で改造を受けていないものを'''バロック・チェロ'''といって区別することがある。バロック・チェロにはエンドピンがなく、通常5弦のことが多い。
稀に[[ヴィオラ・ダ・ガンバ]]を「チェロの祖先」などと表現することがあるが、[[ヴィオール属]]と[[ヴァイオリン属]]は直接的な祖先・子孫という関係には当たらないため、誤りである。
 
稀に[[ヴィオラ・ダ・ガンバ]]を「チェロの祖先」などと表現することがあるが、[[ヴィオール属]]と[[ヴァイオリン属]]は直接的な祖先・子孫という関係には当たらないため、誤りである。
 
== 演奏法 ==
[[Image:Auditorio1.jpg|thumb|right|240px|[[ピアノ三重奏]]。右端がチェロ]]
演奏法については、楽器の構え方が大きく異なっていたりポジションのシステムが異なっていたりはするが、ヴァイオリンと共通する部分が多い。[[ヴァイオリン#演奏のしかた|ヴァイオリンの「演奏のしかた」]]の項を参照されたい。
 
以下に、ヴァイオリンの奏法と大きく異なる点を列挙する。
*楽器は、胴を左右の脚の間に置き、棹(ネック)が奏者から見て顔の左側にくるように構える。楽器がずれないようにエンドピンの先を床に固定する。
*運指は、低ポジション(指板の上の方を用いる)では人差し指・中指・薬指・小指を用い、各指で押さえる音程の間隔は半音を基本とする(人差し指と中指の間は全音とすることもあり「拡張」と呼ばれる)。高ポジション(指板の下部を用いる)では親指も指板上に乗せて弦を押さえる。
*調弦は、低音域で5度の和音の響きをペグの調整により聞き取り調弦をする。しかし、ペグによる微調整が難しいため、自然[[フラジオレット]]を活用し、隣り合った低い方の弦の第3[[倍音]]と高い方の弦の第2倍音が同音程となるようにアジャスターで調整する方法も多用される。そのため、チェロはすべての弦にアジャスターが組み込まれたテールピースを採用することが多い。なお、ヴァイオリンやヴィオラは隣り合う弦の[[重音]]で調弦し、また柔らかく調弦しやすい金属巻きガット弦を用いる奏者が多いので、アジャスターをすべての弦に取り付ける例は少ない。
 
== チェロ奏者(チェリスト) ==