「遺伝的組換え」の版間の差分

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BAZIAN (会話 | 投稿記録)
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===[[ホールデン]]のマップ関数===
組換え価は、染色体上の距離と相関関係があると考えられる。これは、車で長い距離を走れば走るほど単純に事故に遭遇する確率が高くなるのと同じである。これを利用して、染色体上の遺伝子の配置位置を仮定的に示す[[遺伝子地図]]が書ける。
 
ここでABまたはabの組み合わせが伝達される(すなわち組換えが起こらない)確率を(1-θ)/2、AbまたはaBの組み合わせが伝達される(組換えが起こった)確率をθ/2とする。2で割っているのは、それ以前にABまたはabののった染色体が伝達される確率が1/2ずつであるからである。
組換え価は、染色体上の距離と相関関係があると考えられる。これは、車で長い距離を走れば走るほど単純に事故に遭遇する確率が高くなるのと同じである。これを利用して、染色体上の遺伝子の配置位置を仮定的に示す[[遺伝子地図]]が書ける。
 
乗換えはまったくランダムに起きると考える。特定の二つの[[遺伝子座]]の間で乗換えが起こるというのはとても頻度の低い現象であると考えられるから、これが[[ポアソン分布]]に従っているとする。この確率の期待値は上述の仮定によると、この遺伝子座の間の距離と相関していると考えられ、これをxとする。すなわち、c回の乗換えが起こる確率は以下のように表せる。
 
<math>P(C=c|x)=\frac{x^c e^{-x}}{c!}</math>
 
組換えが起こったということは、前述のように奇数回の乗換えが起こったことを示す。すなわち
 
<math>\begin{align}
\theta &=P(C=1|x)+P(C=3|x)+P(C=5|x)+\cdots\\
&=e^{-x}(x+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}+\cdots)\\
&=e^{-x} \sinh(x)\\
&=(1-e^{-2x})/2
\end{align}</math>
 
ここでsinhは[[双曲線関数]]の一つ。つまり
 
<math>x=-\ln\frac{1-2\theta}{2}</math>
 
これはホールデンのマップ関数として知られ、二つの[[遺伝子座]]の間の'''遺伝的距離'''を表している。xの単位はモルガンMorgans (M)で、1Mの距離にある遺伝子座の間では1回の伝達につき1回の乗換えが生じることが期待される。これはきわめて長い距離に相当し、通常は1/100M=1cM(センチモルガン)の単位が頻用される。これを利用して、DNAすべてを調べることなく、特定の遺伝子座上の情報のみから、染色体上の遺伝子の配置位置を仮定的に示す[[遺伝子地図]]が書ける。
 
現代の分子生物学の成果に基づく'''物理的距離'''と比較すると、1cMは1,000,000塩基対(bps)=1Mbpsに相当すると考えられている。実際には乗換えが染色体のあらゆる場所でランダムに起こるという仮定は誤った仮定であると考えられており、そのことに基づく物理的距離と遺伝的距離の違いが存在する。また、より洗練されたマップ関数も提唱されている。
 
==DNAレベルの組換え==