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'''翼幅'''(よくふく、{{lang-en-short|wingspan, span}})は、[[固定翼機|固定翼航空機]]または[[鳥類]]の[[翼]]の左端と右端との距離のこと。例えば[[ボーイング777]]はおよそ60 mの翼幅を持つ。
 
'''翼長'''(よくちょう)ともいい、生物の場合は'''翼開長'''({{lang-en-short|extent}})ともいう。また「翼幅」は日常語では「よくはば」と読まれる場合もある。英語のまま'''スパン'''あるいは'''ウィングスパン'''と呼ばれることもある。
 
「翼幅」は鳥類や固定翼航空機以外にも、[[翼竜]]、[[コウモリ]]のような[[膜翼]]、あるいは[[昆虫類]]羽根ような[[昆虫の翅|翅]]を持つ動物や、[[オーニソプター]](羽ばたき航空]]などにも用いられる。生きている鳥の翼幅の公認記録は、1965年に捕えられた[[ワタリアホウドリ]](学名: ''Diomedea exulans)exulans'')の3.63 mである。
 
== 航空機の翼幅定義 ==
航空機の翼幅は、常に翼の両端間の直線距離で計測され、[[後退翼]]機でもそれは変わらない。また、[[回転翼機]]の場合は[[ローター]]ブレード1枚の長さをいう。
 
鳥の翼幅を計るには、生きている(または死んだばかりの)標本を背中を下に平らな場所に置き、翼の関節を伸ばす。そして、左右の翼の最も長い初列[[風切羽]]の先端の間隔を測定する。
=== 航空機設計との関連 ===
通常、航空機は翼幅が大きいほうがより効率的である。それは、その方が[[誘導抗力]]の悪影響が限定されるからであり、また、[[翼端渦]]の影響も少ないからである。しかし、長い翼を持つことはすなわちその飛行機が縦軸方向に大きな慣性モーメントを持つことを意味し、素早い横転ができず、機動性に劣ることにつながる。そのため、戦闘用航空機や[[曲技飛行]]機は通常、機動性を増すために、短い翼幅を選択する..
 
翼幅の半分のことを'''ハーフスパン''' (half span, half-span) と呼ぶこともある。<!--翼幅の半分ではなく、翼一枚のみの長さのこともハーフスパンと呼ぶこともあるが、wing length あるいは half wing length と呼んで明確に区別することもある。-->
翼が発生させる[[揚力]]は[[翼面積]]と比例するため、短い翼を持つ飛行機はより長い[[翼弦]]を持つ必要がある。したがって、翼弦と翼幅の比率は航空機の特徴を決定するにあたって非常に重要な意味を持つ。[[航空工学]]ではこの比率を翼の[[アスペクト比]]と呼ぶ。
 
== 飛行動物力学上翼幅意味 ==
翼に発生する空気力学的な力([[揚力]] ''L'' と[[抗力]] ''D'')の大きさは、[[翼面積]] ''S'' に比例する。
鳥の翼幅を計るには、生きている(または死んだばかりの)標本を背中を下に平らな場所に置き、翼の関節を伸ばす。そして、左右の翼の最も長い初列[[風切羽]]の先端の間隔を測定する。
 
:<math>L = \frac{1}{2} \, \rho_{\infty} \, {U_{\infty}}^2 \, S \, C_L</math>
:<math>D = \frac{1}{2} \, \rho_{\infty} \, {U_{\infty}}^2 \, S \, C_D</math>
 
ただし、ρ<sub>∞</sub> は空気密度、''U<sub>∞</sub>'' は飛行速度、''C<sub>L</sub>'', ''C<sub>D</sub>'' はそれぞれ揚力係数と抗力係数。
 
定常つりあい飛行をするためには、空気力の鉛直上向き成分(上昇・下降していなければ、揚力そのもの)と[[重力]]とがつりあっている必要がある。したがって、他の条件(空気密度・飛行速度・空気力の係数)が同じなら、ある重量の飛翔体が飛ぶためにはある一定の翼面積が必要となる。翼が横に長ければ、翼の前後方向の長さ(翼弦長)は小さくていい。あるいは、翼幅が小さければ、同じ面積にするためには翼弦長は大きくなければならない。
 
翼幅と平均翼弦長との比、あるいは翼幅の二乗を翼面積で割った値を翼の[[アスペクト比]]と呼ぶ。翼幅を ''b'', 平均翼弦長を ''c<sub>m</sub>'', 翼面積を ''S'' とすると、アスペクト比 ''A''R は
 
:<math>A\mathrm{R} = \frac{b^2}{S} = \frac{b^2}{b \cdot c_m} = \frac{b}{c_m}</math>
 
とあらわされる。
 
他の条件が同じならば、翼幅が大きく、アスペクト比が大きい飛翔体のほうが、[[翼端渦]]の影響が小さくなり[[誘導抗力]]が減少するため、飛行に必要なエネルギーが小さくてすみ、効率的である。しかし、翼の長さは材料と構造の強度によって制限される。また、翼幅が大きいと飛翔体の前後軸まわりの[[慣性モーメント]]が大きくなるため、素早い横転(ロール)ができず、機動性が低下する。そのため、[[戦闘機]]や[[曲技飛行]]機、また[[猛禽類]]のような鳥類では、機動性を増すために、短めの翼幅であることが多い。一方で、長距離あるいは長時間にわたる効率的な飛行を主眼とする[[旅客機]]や[[輸送機]]・[[貨物機]]、高高度[[偵察機]]、あるいは[[渡り鳥]]や[[海鳥]]などでは、アスペクト比の大きな細長い翼を備えることが多い。動力を備えない[[滑空機]](グライダー)もアスペクト比が大きい。鳥類の場合、飛行状態によって翼をたたみ、翼幅(アスペクト比)をある程度変えることも可能である<ref>{{Cite journal
|first=Vance A.
|last=Tucker
|title=Gliding Birds: The Effect of Variable Wing Span
|journal=J. Exp. Biol.
|volume=133
|year=1987
|publisher=Company of Biologists
|pages=pp. 33-58
|url=http://jeb.biologists.org/cgi/content/abstract/133/1/33
}}</ref>。また、猛禽類のように機動性を重視した鳥の場合、風切羽が[[ウィングレット]]のような役割を果たしていることがある<ref>{{Cite journal
 
|first=Vance A.
|last=Tucker
|title=GLIDING BIRDS: REDUCTION OF INDUCED DRAG BY WING TIP SLOTS BETWEEN THE PRIMARY FEATHERS
|journal=J. Exp. Biol.
|volume=180
|issue=1
|year=1993
|publisher=Company of Biologists
|pages=pp. 285-310
|url=http://jeb.biologists.org/cgi/content/abstract/180/1/285
 
}}</ref>。
 
== スポーツにおける「翼幅」 ==
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*'''鳥類''': [[マメハチドリ]] - 6.5 cm
*'''昆虫類''': タンザニア寄生バチ([[:en:Parasitic wasp|en:Tanzanian parasitic wasp]]) - 0.2 mm
 
== 参考文献 ==
*{{Cite book|和書
|author=東昭
|year=1993
|title=流体力学
|publisher=朝倉書店
|isbn=4-254-23623-9
}}
 
== 脚注 ==