「水中文化遺産保護条約」の版間の差分

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== 概要 ==
世界の海には300万隻の沈没船が沈んでいるといわれる。1960年代以降、スクーバ式潜水の普及とともに水中考古学が盛んになった <ref>木村淳 2006「水中考古学発展への模索:世界の水中考古学研究との比較を通じて」『考古学研究』53-1</ref>。同時に遺物の無秩序な引き揚げが問題となる。近年では水中探査機器技術の発展とともに[[トレジャーハンター]]が[[海洋サルベージ]]を行って沈没船や[[海底遺跡]]などから[[水中文化遺産]]を組織的な遺物の引き揚げ、オークションなどを利用した大規模な遺物売買が活発になった。トレジャーハンターは科学的調査は行わずに水中文化遺産を破壊して金銭的価値のあるものだけを収集していたため、こうした行為に対する国際的な非難が高まったが、これを規制する[[国際法]]は長らく存在しなかった<ref name="suichuu">{{Cite journal|和書
|author=小山佳枝
|authorlink=小山佳枝
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}}</ref>。
 
1982年に[[海洋法に関する国際連合条約|国連海洋法条約]]が採択され、1994年に発効し、水中文化遺産についても[[領海]]内での無断調査の禁止、領海外でも当該文化遺産の起源を有する国への配慮が盛り込まれた。しかし、規制が不十分であったためトレジャーハンターの活動は続けられた。日本では水中文化遺産については[[文化財保護法]]の[[埋蔵文化財]]に関する規定が適用されるとされるが、明確な規定はない<ref>野上建紀  2004「海底遺跡における発掘調査手続きについて」『NEWSLETTER』18 九州・沖縄水中考古学協会</ref>。現行法は領海内でしか適用されず、[[排他的経済水域]]や[[大陸棚]]における水中文化遺産の保護については特別の定めは存在しない<ref name="suichuu"/>。
 
こうした問題に対処するため、2001年の第31回ユネスコ総会で水中文化遺産保護条約が採択された。この条約では、少なくとも100年間、水中にある[[文化遺産]]を[[水中文化遺産]]と定義して保護の対象とし、水中文化遺産の商業目的による利用の禁止、保護に関しては現状での保全を優先とすること、専門家による調査の徹底などを定めている。また、領海、排他的経済水域、[[深海底]]などの区域ごとに保護措置を規定している<ref name="suichuu"/>。
 
水中文化遺産保護条約の発効には20か国以上の批准が条件となっており<ref name="suichuu"/>、2008年10月現在の段階で批准国数が規定に達し、2009年1月よりにユネスコ文化遺産関連の5番目の条約として発効されることが決定され<ref>木村淳 2009「国内水中遺跡の保護と管理,文化遺産としての問題」『日々の考古学2:東海大学考古学専攻開設30周年記念論集』</ref>。しかし、アメリカ合衆国、イギリス、日本などの主要国は批准には至っていない。この理由として、条約が排他的経済水域の管轄権に関して沿岸国に与えている権限が強すぎる点などがあげられている。
 
== 脚注 ==