「ワーキングメモリ」の版間の差分

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'''ワーキングメモリ'''(Working Memory)とは[[認知心理学]]において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程に関を指る理論的な枠組み構成概念である。'''作業記憶'''、'''作動記憶'''とも呼ばれる。ワーキングメモリの理論的構造や脳のどの関連分が関与してい位を調べかという研究が多数行われている。一般には、[[前頭皮質]]、[[頭頂皮質]]、[[前帯状皮質]]、および[[大脳基底核]]の一部がワーキングメモリ機能に関与すると考えられている。
 
ワーキングメモリの研究は主に、人間の行物を使った切除実験とヒトにおけるや脳損傷事例、[[イメージング]]研究、サルによる行動実験やマウスを使った脳部位切除実験など、幅広い分野の研究成果に基づいている。ただし、これらの研究の間でワーキングメモリという語の用法は必ずしも一貫しておらず、情報の操作を伴わず単に一時的に保持しているという[[短期記憶]]の意味で用いられていることも少なくない。ワーキングメモリの研究は世界中で盛んに行われている。ワーキングメモリに関する研究成果は、[[自閉症]]<ref>Hill, E. L. (2004). Executive dysfunction in autism. Trends Cogn Sci, 8(1), 26-32</ref>や[[注意欠陥多動障害]](ADHD)<ref>Levy, F., & Farrow, M. (2001). Working memory in ADHD: prefrontal/parietal connections. Curr Drug Targets, 2(4), 347-352</ref>への理解を深め、指導方法を改善に導くのに有用であるとされて<ref>Postle, B. R. (2006). Working memory as an emergent property of the mind and brain. Neuroscience, 139(1), 23-38</ref>。また、[[人工知能]]研究にも応用されている<ref>Constantinidis, C., & Wang, X. J. (2004). A neural circuit basis for spatial working memory. Neuroscientist, 10(6), 553-565.</ref><ref>Vogels, T. P., Rajan, K., & Abbott, L. F. (2005). Neural network dynamics. Annu Rev Neurosci, 28, 357-376</ref>。
 
== 歴史 ==
この用語が最使われ用いたのは1960年代の精神、心をコンピュータにたとえた1960年代の理論の中においてであった。ただし、はじめてこの語を用いた文献は明確でない。それ以前には、ワーキングメモリに相当する概念は[[記憶#短期記憶|短期記憶]]、operant memory、provisional memory などと呼ばれていた<ref>Fuster, J. M. (1997). The Prefrontal Cortex: Anatomy, physiology, and neuropsychology of the frontal lobe (2 ed.): Lippincott, Williams & Wilkins</ref>。今日、研究者のほとんどはワーキングメモリの概念をそれらの代替とするか、短期記憶の概念がワーキングメモリに包含されると考えており、受動的な記憶保持よりも能動的な情報操作を強調している。
 
== ワーキングメモリの容量 ==
ワーキングメモリは、一般に容量が制されてい界があると考えられている。短期記憶に関する容量限界の定量化としては、Miller (1956年)による「マジカルナンバー7±2」がある<ref name="miller">Miller, G. A. (1956). [http://www.well.com/user/smalin/miller.html The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information.] Psychological Review, 63, 81-97</ref>。それこの論文によれば、記憶すべき要素が何であれ(数字、文字、単語、その他)、若者が記憶できる量は「チャンク」と呼ばれる塊りで約7個であるとされた。その後の研究で、容量はチャンクの種類に依存し、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個であることが分かってきた。また実際、長い単語よりも短い単語の方が容量を取らない。一般に単語的内容(数字、文字、単語)は声に出して読んだときにかかる時間と記憶容量に関係があり、内容の文脈的状態(その単語を知っているか)にも依存する<ref>Hulme, C., Roodenrys, S., Brown, G., & Mercer, R. (1995). The role of long-term memory mechanisms in memory span. British Journal of Psychology, 86, 527-536.</ref>。他にも容量に影響する要因があり、人間のワーキングメモリや短期記憶のチャンク数を具体的に定量化することは難しい。にもかかわらず、Cowan (2001年)<ref>Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24, 87-185</ref> によれば若者のワーキングメモリ容量は約4チャンクであるとされている(子供や老人ではもっと少ない)。
 
== 最近のワーキングメモリ研究 ==
 
=== Baddeley と Hitch のモデル ===
Alan Baddeley と Hitch は1974年にワーキングメモリのマルチコンポーネントモデルを提案した<ref>Baddeley, A.D., Hitch, G.J. (1974). Working Memory, In G.A. Bower (Ed.), ''Recent advances in learning and motivation (Vol. 8, pp. 47-90), New York: Academic Press</ref>。この理論では2つのスレーブシステムが短期情報の保守を行い、1つの中央制御実行系が情報の統合とスレーブシステムの管理を行うとされている。スレーブシステムの1つは音韻ループ(articulatory loop)と呼ばれ、音声情報を格納し、その内容を静かに明瞭に繰り返し発音し続けることで情報をリフレッシュして破壊を防ぐ。つまり、例えば7桁の電話番号を可能な限り何度も繰り返すことで記憶し続けるのである。もう1つのスレーブシステムは視空間スケッチパッド(visuo-spatial sketch pad)であり、視覚的および空間的情報を格納する。例えば、画像を構築したり操作したり、[[メンタルマップ]]を表現したりする。スケッチパッドは視覚システム(形、色、質感などを扱う)と空間システム(位置を扱う)に分けられる。中央制御実行系は注意(attention)を妥当な情報に向けさせ、瑣末な情報や不適切な行動を抑制し、同時に複数のことをしなければならない時の認知プロセスの調整を行う。Baddeley (2000) はこのモデルに第4のコンポーネントであるエピソードバッファ(episodic buffer)を追加した。これは、音声/視覚/空間情報を統合した表現を保持し、さらにはスレーブシステムでは扱わない情報(意味情報や音楽情報など)も統合する。エピソードと呼ばれるのはエピソードとして関連する情報を統合すると見なされているためである。エピソードバッファは長期記憶の一部である[[エピソード記憶]]に似ているが、短期的記憶であるという点で異なる。
 
=== Cowan の理論 ===
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