「仕事中毒」の版間の差分

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=== 欧米 ===
[[欧米]]では、古くから「人はまず家庭にあり、その対価を得るために仕事がある」という[[個人尊重主義]]の価値観、および[[日曜日]]を安息日とする宗教的な背景もあって、日本人のような仕事に埋没する姿勢を「ワーカーホリック(仕事依存、"work"(仕事)と"alcoholic"([[アルコール依存症]]の)との[[合成語]])」と表現して忌避した。また、日本に比べ失業率の高かった欧米では、仕事中毒者が[[失業者]]の仕事を奪ってしまうということからも、過度の過密長時間労働は社会的に問題があるとみなされた。
 
この風潮は[[1980年代|1980]]~[[1990年代]]に至るまで続いたが、近年ではやや一部職種に限り異なる傾向が見られる。また、[[ヨーロッパ]]と[[イギリス]]・[[アメリカ合衆国]]では労働環境が大きく異なっており、アメリカ合衆国やイギリスにおいては一部職種に限り、日本人と同じかそれ以上の分量の労働を行う場合もある。
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==== ヨーロッパ ====
ヨーロッパ(イギリスをのぞく[[欧州連合|EU]]諸国)においては労働者の権利保護の考えが根強く、「ワーカホリック」は侮蔑的表現として用いられることが多い。
 
ただし、こうした労働者保護の姿勢が、企業にとって容易に労働者を解雇できない状況を作り出し、ドイツやフランスでは労働市場の硬直化と若年失業者の増加、経済的効率性の低下などを招いていることもまた事実である。また店舗の営業時間を法で規制していることが多い上に、一般労働者は労働時間外に働くことを極端に嫌うため、同地域では[[コンビニエンスストア]]などの業態が発展しにくいといった傾向が見られる。一般の商店([[サービス業]])でも、祝祭日には早々と店を閉める・そもそも祝祭日には店を開かない、もしくは法によって開けないという傾向も見られる。
 
特に[[イギリス]]や[[フランス]]などでは、正規労働者と非正規労働者の間の労働環境の格差が大きく、[[移民]]問題や[[人種差別]]とあいまって深刻な社会問題となっている(→[[外国人労働者]])。
 
北欧諸国では政府の労働市場への関与が強く、「[[同一労働同一賃金]]」原則の徹底により、労働市場の流動化と労働者保護の両立を図っており、国際競争力の維持強化にも寄与しているとされる(→[[福祉国家論]])。
 
== 社会的影響 ==
弊害ばかりが目立つ仕事中毒だが、その一方で以下のような統計もある。
 
日本では年々悪化の一途をたどる[[少子高齢化]]であるが、女性の[[就職率]]や労働時間が長い県では、他県よりも女性が生涯の内に子供をもうける数が多いというものである。[[2005年]]の[[厚生労働省]]が発表した[http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/05/index.html 白書]であるが、これによれば30代前後の女性がよく働いている県では、他県よりも明らかに子供を持つ率が高い。反面、男性の就労時間が長い地域では子供は少ない傾向も見られ、一概に「仕事中毒 = 少子化解消」という訳でもないが、特に女性の就労と少子化解消は、一定の関連性が見られる。
 
現代日本において子育てにかかるコストは第一子で約1300万円(育児期間は22年と計算)との試算がある([http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/ 国民生活白書2005年版]に基く)が、女性がよく働ける環境が整っている地域では、経済的に余裕があることから、子をもうける心理的な負荷が軽いと厚生労働省白書では見ている。これらでは、子供を預けて働きに出やすい非[[核家族]]の多い地域や、または[[保育園]]などの社会的な育児施設が充実している地域に重なっている。
 
しかしながら、就労が出産を促進しているわけではなく、<!--この見方では保育施設の多い地域に子を多く設ける母親が多い理由を説明し切れないが-->子供を多く産んだために育児費用がかさみ、子供の成長に手がかからなくなった後に、育児・教育の費用を稼ぐ目的で再就職をするためだともみなすことも可能である。各々の家庭には様々な事情が含まれることだろう。
 
: なお国民生活白書では、同じ22年間の間に掛かる育児コストに関して、第二子は2割減の1000万円・第三子は4割減の800万円と試算している。多く子をもうける程に、その一人当たりの養育費はいわゆる[[お下がり]]や慣れに伴って下がる傾向が見られ、また他方では子をもうけるたびに補助金を出す自治体もあり、これを加味すればさらに育児コストは下がると考えられる。
 
結婚した女性が家庭を気にせずに働くのは、それをサポートできる体制が整っているという副次的な結果であるが、逆を言えば家庭に煩わされることなく働ける人では、経済的余裕もあって子をもうけやすい(結果的に少子化解消)傾向も見られる。
 
この社会的な育児へのサポート体制に関しては、スウェーデン王国では特に育児福祉の拡充が少子化傾向の歯止めとなっている様子が見られるが、オーストラリア連邦や日本では福祉を年々充実させても、反比例的に出生率は下落しており、効果は不明確である。また日本では[[待機児童]]などの形で保育施設への入園待ちという事態も発生しており、これが出産をためらう一要因であるとも考えられ、必ずしも育児関係のサポートは十分ではない。
 
== 脚注 ==