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'''改正刑法草案'''(かいせいけいほうそうあん)とは、[[1974年]]([[昭和]]49年)5)[[5月29日]]に、[[日本]]の[[法制審議会]]総会で決定された[[刑法]]改正の草案である。
 
== 概略 ==
刑法(明治40年4月24日法律第45号)は、[[犯罪]]に関する[[則]]規定および犯罪の個別的要件やこれに対する刑罰を定める基本的[[律]]である。制定以来、随時条文の改正や[[削除]]は行われていたものの、時代の変遷や社会情勢高度化に伴い、現行の刑法が想定していない問題も出現した。また、当時の刑法の条文はカタカナ書き[[文語体]]のままで、法律の専門家以外には読解することも困難な状態となっていた。
改正刑法草案は、1974年(昭和49年)に法制審議会総会で決定された刑法の改正草案である。一般的な立法過程と異なり、その後、法律案として閣議決定されることも、国会に提出されることもなく、30年以上経過した。現在も、市販の[[六法全書]]等には、総則の部分が参考資料として掲載されている。
 
そこで、[[法務大臣]]の諮問機関である法制審議会は、[[罪刑法定主義]]の明文化や先端的な争点に関する規定([[原因において自由な行為]]、[[共謀共同正犯]]など)の新設、新たな[[刑罰]]となる[[保安処分]]の規定や現代的な犯罪類型を定め、全文をひらがな[[口語体]]とするなど、刑法の全面的な改正となる、全369条からなる改正刑法草案を決定した。
刑法(明治40年4月24日法律第45号)は、犯罪に関する総論規定および犯罪の個別的要件やこれに対する刑罰を定める基本的法令である。制定以来、随時条文の改正や削除は行われていたものの、時代の変遷や社会の高度化に伴い、現行の刑法が想定していない問題も出現した。また、刑法の条文はカタカナ書き文語体のままで、法律の専門家以外には読解することも困難な状態となっていた。
 
改正刑法草案は、1974年(昭和49年)に法制審議会総会で決定された刑法の改正草案である。一般的な立法過程と異なり、その後、法律案として[[閣議決定]]されることも[[国会]]に提出されることもなく、30年以上経過しかっ。現在も、市販の[[六法全書]]等には、総則の部分が参考資料として掲載されている。
そこで、[[法務大臣]]の諮問機関である法制審議会は、[[罪刑法定主義]]の明文化や先端的な争点に関する規定([[原因において自由な行為]]、[[共謀共同正犯]]など)の新設、新たな[[刑罰]]となる[[保安処分]]の規定や現代的な犯罪類型を定め、全文をひらがな口語体とするなど、刑法の全面的な改正となる、全369条からなる改正刑法草案を決定した。
 
なお、その後の刑法改正は、[[1995年]]([[平成]]7年)にもっぱら条文の平易化(口語化)を目的とする全条文の改正が行われたほかは、犯罪類型の追加や[[法定刑]]の変更等、部分的な改正にとどまっている。
== 批判 ==
改正刑法草案は、制定から70年を経て累積していた問題を一気に片付けるため、それまで慎重に扱われてきた事柄や学説・裁判例において大きく意見が対立している争点についても、大胆に方針転換、明文化する規定も多く含まれた。このため、刑法学者や刑法学会、日本弁護士連合会や各種の人権団体などから、犯罪となる行為の範囲が広くなりすぎ、社会活動を萎縮させることや、内容が国家主義的であることなど、多くの批判を受けた。特に、新たな刑罰として保安処分を新設すると定めたことに関しては、[[責任主義]]の観点から大きな問題があるとして、強い批判を受けることとなった。
 
== 批判 ==
こうした批判の影響もあって、改正刑法草案は草案のまま、法律案として国会に提出されることもなく、30年以上が経過して、現在に至っている。この間、1995年(平成7年)には、もっぱら法文の[[平仮名|ひらがな]][[口語化]]といった平易化を目的とする全条文の改正が行われたものの、内容的には新たな犯罪類型の追加(支払用カード電磁的記録に関する罪、危険運転致死傷罪、人身の自由に対する罪自動車運転過失致死傷罪など)のほかは、部分的な改正にとどまっている。
改正刑法草案は、刑法制定から70年を経て累積していた問題を一気に片付けるため、それまで慎重に扱われてきた事柄や[[学説]][[裁判例]]において大きく意見が対立している争点についても、大胆に方針転換、明文化する規定も多く含まれた。このため、刑法学者や[[日本刑法学会]][[日本弁護士連合会]]や各種の[[人権団体]]などから、犯罪となる行為の範囲が広くなりすぎ、社会活動を萎縮させることや、内容が[[国家主義]]的であることなど、多くの批判を受けた。特に、新たな刑罰として保安処分を新設すると定めたことに関しては、[[責任主義]]の観点から大きな問題があるとして、強い批判を受けることとなった。
 
==内容==