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{{Infobox software
| 名称 = SETI@Homehome
| 開発元 = [[カリフォルニア大学バークレー校]]
| 初版 = 1999年5月17日
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}}
 
'''SETI@home'''(セティアットホーム)は[[インターネット]]接続されたコンピュータ群を使う[[ボランティア・コンピューティング]]プロジェクトで、[[アメリカ合衆国]]の[[カリフォルニア大学バークレー校]] [[:en:Space Sciences Laboratory|Space Sciences Laboratory]] が運営している。''SETI'' は "Search for Extra-Terrestrial Intelligence"([[地球外知的生命体探査]])の略で、SETI@HomehomeはSETIの一部である。SETI@homeは1999年5月17日に一般公開された<ref>{{cite web|url= http://science.nasa.gov/newhome/headlines/ast23may99_1.htm|publisher=[[NASA]]|title=ET, phone SETI@home!|author= Dr. Tony Phillips|date=May 23, 1999|accessdate=2006-10-06}}</ref><ref>{{cite web|url= http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap990517.html|title= Astronomy Picture of the Day|date=May 17, 1999|author=Robert Nemiroff|coauthors=Jerry Bonnell|accessdate=2006-10-06}}</ref><ref>{{cite web|url= http://setiathome.berkeley.edu/classic.php|title=SETI@home Classic: In Memoriam|date=December 15, 2005|accessdate=2006-10-06}}</ref>。
 
== 科学的研究 ==
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後者の目的は一般に完全に成功したと見なされている。SETI@home の開発から発展した現在の[[Berkeley Open Infrastructure for Network Computing|BOINC]]環境では、様々な分野の計算量の多いプロジェクトにサポートを提供している。
 
前者の目的は今のところ達成されていない。SETI@HomehomeによってETI(地球外知的生命体)信号の証拠が見つかったという例はない。
 
SETI@Homehome では、[[アレシボ天文台]]の観測データを使い、その中に[[地球外生命|地球外知的生命体]]からの無線信号の証拠と見られるものがないか探索する。データは他の科学的プログラムに従って電波望遠鏡を使用しているときに便乗する形で採取されている。データは[[デジタイズ]]されて記録され、SETI@Homehome の施設に郵送される。そこでデータを時間と周波数で分割して小さな塊にし、それらを世界中のコンピュータに分配し、ノイズとは見なせない情報を含む可能性のある信号を探す。SETI@Homehomeの要点は、データを小さく切り分け、それらを数百万台のパーソナルコンピュータで分析させ、分析結果を返してもらうという点にある。そうすることで、通常なら最新のスーパーコンピュータを必要とするような分析をインターネット上のコミュニティの援助によって達成できるようにした。
 
ソフトウェアは、次のような4種類の信号をノイズから識別する<ref>{{cite web |url= http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/about_seti/about_seti_at_home_4.html |title=How SETI@Home Works - What is SETI@home Looking For? |publisher=SETI@Home Classic |accessdate=2010-06-23}}</ref>。
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* [[パルス波|パルス]]信号。[[ナローバンド]]のデジタル伝送の可能性がある。
 
ETI信号は星間物質によっても影響されうるし、地球との相対運動にも影響されうるため、様々なバリエーションが考えられる。そのため「信号」の可能性があるデータは様々な方法で処理され、ノイズでないかどうか確認する。例えば、惑星は恒星の周囲を公転していることが多く、地球からみて相対的に加速度運動していることが多い。そのため「信号」があったとしても周波数が時と共に変化する。そのようなことも考慮した分析がSETI@Homehomeのソフトウェアで実施される。
 
これは、信号強度計を見ながら[[ラジオ]]を放送局の周波数に合わせるのに似ている。技術的には[[離散フーリエ変換]]を中心とした[[デジタル信号処理]]を多用している。
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このプロジェクトでETI信号を実際に検出したことはないが、いくつかの候補とされる信号(信号強度の突出について説明がつかないもの)は識別しており<ref>{{cite web |url= http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/candidates.html |title=Signal Candidate |publisher=Classic SETI@home |accessdate=2010-06-23}}</ref>、さらなる分析が行われている。これまでで最も重大とされた候補信号は2004年9月1日のもので、[[:en:Radio source SHGb02+14a|Radio source SHGb02+14a]] と名付けられた。
 
天文学者 [[:en:Seth Shostak|Seth Shostak]] は2004年、[[ドレイクの方程式]]に基づくと、2020年から2025年までの間に決定的な証拠となる信号が見つかり、異星人の存在が証明されると述べた<ref>{{cite news | publisher = Space Daily | title = First Contact Within 20 Years: Shostak | url = http://www.spacedaily.com/news/seti-04e.html | date = 2004-07-22 | last = Shostak | first = Seth | authorlink = | accessdate = 2006-06-12}}</ref>。これは、SETI@Homehome がその時期まで継続されることを前提とした発言で、これまでのSETI@Homehomeの実績から推定したものである。
 
プロジェクトは地球外知的生命体の証拠を見つけるという目標を達成していないが、科学界にインターネット上の分散コンピューティング・プロジェクトが分析ツールとして有効であることを示し、最新の[[スーパーコンピュータ]]にも匹敵しうることを示した<ref>{{cite web |url= http://www.boincstats.com/stats/project_graph.php?pr=bo |publisher=BOINCstats |title=BOINC combined - Credit overview |accessdate=2010-06-23}}</ref>。しかし、もともとの想定よりも参加したコンピュータの台数は桁違いに大きく(本来は5万台から10万台とされていた<ref name="Sullivan">{{cite web|url= http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/woody_paper.html |title=Sullivan, et al.: Seti@Home |publisher=Seticlassic.ssl.berkeley.edu |date= |accessdate=2009-05-17}}</ref>)、それがプロジェクトの科学的成果に寄与している点はあまり検証されていない。
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== テクノロジー ==
[[ファイル:Setiathomeversion4point45.png|thumb|right|220px|SETI@home 4.45]]
インターネットに接続可能なコンピュータを持っていれば、誰でも[[電波望遠鏡]]の観測データをダウンロードして分析する無料のプログラムを実行させることでSETI@Homehomeに参加できる。
 
観測[[データ]]は、[[プエルトリコ]]にある[[アレシボ天文台]]で36[[ギガバイト]]の[[磁気テープ]]に記録される。テープ1本が15.5時間ぶんのデータを格納しており、それが[[カリフォルニア大学バークレー校]]に郵送される<ref name="Korpela">{{cite journal | title = SETI@home&nbsp;— Massively Distributed Computing for SETI | first = Eric | last = Korpela | coauthors = Dan Werthimer, David Anderson, Jeff Cobb and Matt Lebofsky | journal = Computing in Science & Engineering | month = January | year = 2001 | pages = 78–83 | url= http://setiathome.ssl.berkeley.edu/~korpela/papers/CISE.pdf | doi = 10.1109/5992.895191 | volume = 3}}</ref>。アレシボには高[[帯域幅]]のインターネット接続がないため、バークレーにまず[[郵送]]している<ref>{{cite web|url= http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/about_seti/about_seti_at_home_2.html |title=About SETI@home page 2 |publisher=Seticlassic.ssl.berkeley.edu |date= |accessdate=2009-05-17}}</ref>。バークレーでは、それを107秒ごとの[[時間領域]]で分割し、さらに[[周波数領域]]で分割した "work unit" にする<ref>{{cite web | title = The SETI@home Sky Survey | url = http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/sciencepaper.html | author = SETI@home | year=2001<!-- no valid last modified available --> |accessdate = 2006-06-02}}</ref>。個々の work unit は約0.35MBのサイズで、時間的には前後のデータと若干重なりがあるが、周波数領域では重なりはない<ref name="Korpela"/>。この work unit をSETI@Homehomeの[[サーバ]]から[[インターネット]]を経由して世界中のコンピュータに送り、分析させる。
 
かつて考えられなかったほどの計算能力を使えるため、従来の10分の1の強さの信号も検出できるという。
 
処理結果はSETI@Homehome用のバークレーのコンピュータ上で[[データベース]]に入れられる。そこで混信を排除した後、様々なパターン検出アルゴリズムを適用し、最も興味深い信号を探す。
 
=== ソフトウェア ===
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SETI@homeのクライアント[[ソフトウェア]]は、[[スクリーンセーバー]]として動作する形態とユーザーが普通にコンピュータを使っている間も動作し続ける形態があり、本来なら使われないCPU時間を利用する。
 
1999年5月17日から2005年12月15日まで使われていた初期のソフトウェアを今では「SETI@Homehome クラシック」と呼ぶ。このソフトウェアはSETI@Homehomeプロジェクト専用だった。これに取って代わったのが [[Berkeley Open Infrastructure for Network Computing]] (BOINC) で、SETI@Homehomeと同時に他の分散コンピューティング・プロジェクトにも貢献できるようになっている。
 
「SETI@home クラシック」からBOINCに切り替えられたことで、古い [[Mac OS]] を搭載した[[Macintosh]]がプロジェクトに参加できなくなった。
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== 今後 ==
南半球の分析を行うため、[[オーストラリア]]の[[パークス天文台]]の観測データを使うという計画があった<ref>{{cite web |url= http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/setifuture.html#southern |title=Southern Hemisphere Search - increasing SETI@home's sky coverage] in the "Future directions of SETI@home" |publisher=Classic SETI@home website |accessdate=2010-06-23}}</ref>。しかし2009年3月9日現在、プロジェクトのホームページにはその計画への言及はない。Multi-Beam Data Recorder、Near Time Persistency Checker、[[:en:Astropulse|Astropulse]](コヒーレント分散除去法を使ってパルス信号を探索するアプリケーション)を使うという計画もある<ref>{{cite web |url= http://setiathome.berkeley.edu/sah_plans.php |title=SETI@home Plans |publisher=SETI@home |accessdate=2010-06-23}}</ref>。Astropulseと本来のSETI@Homehomeを組み合わせれば、高速回転するパルサー、爆発する原始ブラックホール、その他未知の天体物理学的現象を検出できる可能性がある<ref>{{cite web|url= http://setiathome.berkeley.edu/ap_faq.php |title=Astropulse FAQ |publisher=Setiathome.berkeley.edu |date= |accessdate=2009-05-17}}</ref>。Astropulseの最終一般リリース版のベータテストは2008年7月に完了し、その直後から高性能なマシンへのAstropulse向け work unit の配布が開始されている。
 
== 競争的側面 ==
SETI@Homehomeのユーザーはプロジェクト開始直後から、どれだけ work unit を処理したかを互いに競うようになった。個人ユーザーが複数人でチームを組んで競い合う状況が生まれている。この傾向はBOINCに移行してからさらに顕著になっている。
 
競争の過程で、システムを騙して処理していないものを処理したと主張するということも行われている。これを防ぐためSETI@Homehomeシステムは work unit を複数のコンピュータに送り(現在は2台)、その結果が所定の台数(現在は2台)で合致したら実際に処理したと判定する。計算中にエラーが生じたりシステムを騙そうとしたりすると結果が合致しないため、同じ work unit をさらに別のコンピュータに送る。
 
SETI@Homehomeを仕事場のコンピュータにインストールしたユーザーもいる。これを「[[スタートレック]]」の[[ボーグ]]に因んで "Borging" と呼ぶ。work unit 数をかせぐためSETI@Homehomeを業務上重要な会社の設備で実行し、解雇されたユーザーが少なくとも2人いる<ref>{{cite news|url= http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/1782050.stm |title=BBC 2002 |publisher=BBC News |date=2002-01-28 |accessdate=2009-05-17}}</ref><!-- First firing was much earlier, but needs citation finding before one can use that information-->。[[ニュースグループ]] (alt.sci.seti) には1999年9月14日から "Anyone fired for SETI screensaver" と題したスレッドがある。
 
中にはSETI@Homehomeのために設備を集め、自宅に「SETI[[サーバファーム|ファーム]]」を作ったユーザーもいる<ref>{{cite web|url= http://bhs.broo.k12.wv.us/homepage/staff/seti/farms.htm |title=SETI Stack and farm systems |publisher=Bhs.broo.k12.wv.us |date= |accessdate=2009-07-14}}</ref>。
 
== プロジェクト打ち切りの可能性 ==
長期に渡るプロジェクトの常として、SETI@Homehomeにも打ち切りを招くかもしれない要因がいくつかある。以下にそれらを詳述する。
 
=== アレシボ天文台閉鎖の可能性 ===
現在、SETI@Homehomeで処理しているデータは[[アレシボ天文台]]が観測した結果であり、同天文台は米国天文学電離層センターが運営し、[[コーネル大学]]の管理下にある。予算削減で同天文台は赤字に陥っている。
 
[[アメリカ国立科学財団]]はアレシボへの資金援助がなければ2011年に同天文台を閉鎖することになるとしている。そうなれば、SETI@Homehomeへのデータ供給も止まる。
 
=== 分散コンピューティングプロジェクトの多様化 ===
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=== 職場でのコンピュータ利用制限 ===
オハイオ州政府のコンピュータにSETI@Homehomeをインストールして使用したために解雇された例がある<ref>{{cite web|date=Saturday October 9, 2004 |author=John Adams |url= http://www.oreillynet.com/databases/blog/2004/10/knock_down_then_kick.html |title=Knock Down, Then Kick - O'Reilly Databases |publisher=Oreillynet.com |date=2004-10-09 |accessdate=2009-05-17}}</ref>。また、SETI@Homehomeが学校内のコンピュータにインストールされ、その除去に100万ドルかかったということで、その学校のIT責任者は責任をとって辞任している<ref>{{cite web|url= http://www.foxnews.com/story/0,2933,578993,00.html?test=latestnews |title=Arizona School Employee Loses Job Searching for Aliens |publisher=FoxNews.com |date=2004-10-09 |accessdate=2009-05-17}}</ref>。この件は警察が捜査中である。
 
2005年10月16日時点で、BOINCベースでない古いバージョンのSETI@Homehomeの約3分の1が会社や学校のコンピュータにインストールされ稼動していた<ref>{{cite web | author = SETI@home | year = 2005 | url = http://seticlassic.ssl.berkeley.edu/stats/venues.html | title = SETI@home computer venues | accessdate = 2006-06-12}}</ref>。その多くは一般ユーザーが勝手にソフトウェアをインストールできるとは考えられず、それぞれの[[ネットワーク管理者]]がインストールしたという疑いが強い。
 
=== 資金不足 ===
SETIには現在政府の資金が投入されておらず、常に資金が不足している。バークレーの Space Science Lab は少ない予算で予定より長期間プロジェクトを続行する方法を見つけたが、SETIには他にも予算が必要なプロジェクトがいくつもあり、他の宇宙科学関連プロジェクトとも予算を奪い合っている。
 
SETI@Homehomeでは2007年12月16日、2008年もプロジェクトを継続するために47万6千ドルの寄付が必要だとして、寄付を呼びかけた。
 
=== 非公式な改造 ===
いくつかの個人や企業がSETI@Homehomeを非公式に改造して高速化を行い、そのために処理結果が一致しなくなる場合があった。これを防ぐためそのような変更を検出しやすくする修正が施された。ただしこれは[[Berkeley Open Infrastructure for Network Computing|BOINC]]が非公式なクライアントを許容しないという意味ではない。単に間違った結果を返してくるクライアントを許容しないという意味であって、それによってデータベースに不正データが混入するのを防いでいる。BOINCではデータをクロスチェックしているが<ref>{{cite web|url= http://boinc.berkeley.edu/trac/wiki/SecurityIssues |title=SecurityIssues - BOINC - Trac |publisher=Boinc.berkeley.edu |date= |accessdate=2009-05-17}}</ref>、2つのクライアントが同じ間違ったデータを返す可能性もあるため、一度不正なデータを返したクライアントは信頼できないクライアントとして登録される。よく見られる非公式クライアントとして、[[Streaming SIMD Extensions|SSE]](SSE2、SSSE3、SSE4.1)を使って処理を高速化するものがある<ref>{{cite web|url= http://lunatics.kwsn.net |title=Seti@Home optimized science apps and information |publisher=Lunatics.kwsn.net |date= |accessdate=2009-05-17}}</ref>。プロセッサがサポートしていない機能を使うよう選択すると、結果が不正になる可能性が高くなる。自分の使用しているプロセッサがどういう機能をサポートしているかを教えてくれるツールは容易に入手可能である。
 
== 関連項目 ==