「鉱物学」の版間の差分

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近代(1920年頃より、1970年頃までを指す)の鉱物学の主流は、[[X線回折|X線回折法]]や[[中性子回折法]]により鉱物の結晶構造解析を行う事であった。このため近代の鉱物学は[[結晶学]]の類縁分野とも見なすことが出来る。これは[[日本結晶学会]]が学会員を「物理学」「化学」「鉱物学」の3分野に区分していたことが代表例である。
 
1970年代までに、天然に産出するほとんどの鉱物のおおまかな結晶構造は解明されつくされた。この頃は、鉱物学の手法的な進歩は一時的に停滞期にあったと言える。しかし1980年代後半以降、[[高圧合成法]]や[[溶液成長法]]、[[気相成長法]]などの実験手法が発達し、またコンピュータを駆使して結晶の挙動を原子レベルでシミュレーションすることが可能になってきた。このため、最先端である現代鉱物学の主流分野は、実験やシミュレーションにより
* 温度・圧力・時間と元素の化学反応との関係を解明し、鉱物の生成過程を実証すること(無機化学)。
* 極限状況高温・高圧力下での鉱物の物性を解明測定し、例えば地球深における鉱物の状態を予測すること(固体物理学)。
の2分野が主流となりつつある。また、近代鉱物学の延長にある結晶学的手法も長足の進歩を遂げ、人工では合成出来ない結晶構造の物質を見いだすに至った。つまり、最先端の鉱物学は「天然の結晶を対象とした無機化学・固体物理学および結晶学」であると言える。現に鉱物学者から無機化学者や固体物理学者、材料科学者へ転身する例は珍しくない。一例として[[高温超伝導]]物質を最初に発見した一人である[[ヨハネス・ゲオルグ・ベドノルツ]]は、元々ペロブスカイト構造型鉱物について研究していた鉱物学者である。
 
一方、鉱物学では鉱物の産地ごとの差異についても引き続き研究を行っている。よって、鉱物学にとって[[フィールドワーク]]の重要性は衰えていない。一般的に鉱物の化学組成や結晶構造は無機化合物としては非常に複雑である。また産地ごとの変異も多く、未だに人工環境下で合成産出状態を再現できない鉱物は多数ある。したがってフィールドワークによって、産出する鉱物の記載とその周辺の環境を記録していく事についての学問的意義は大きい。
 
また、実験室で解明された鉱物の生成過程は、[[惑星]]や[[隕石]]の成因を解明する基礎データとなる。そして地球物理学において、地球内部の環境をシミュレーションするためには、鉱物学者が解明測定した鉱物の物性データは欠かせない。このため、地味ではあるが、地球惑星科学において、鉱物学は基礎分野の一つである。
 
== 関連項目 ==