「錯誤」の版間の差分

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客観的事実と認識の食違いが同一の構成要件の範囲内である場合('''具体的事実の錯誤'''とも呼ばれる)。
 
例えば、[[殺人罪]]を行おうとする意思を持ち、客観的にも殺人罪に当たる行為を行った場合である。
 
同一構成要件内の事実の錯誤には、[[客体の錯誤]]・[[因果関係の錯誤]]・[[方法の錯誤]]([[打撃の錯誤]])などの例がある。
そこで、この修正された法定的符合説を前提に、'''構成要件の重なり合い''' の有無の判断基準が問題となるが、「保護法益の共通性と、行為態様の共通性」の観点から考えるとする説が有力である。
 
例えば、[[殺人罪]]と[[傷害罪]]/殺人罪と同意殺人罪と自殺幇助罪/強盗罪と恐喝罪と窃盗罪と占有離脱物横領罪/一項詐欺罪と二項詐欺罪/横領罪と業務上横領罪では重なり合い(包摂関係)が認められるとされる。ただ、一般に'''傷害罪と器物損壊罪'''の間では重なり合い(包摂関係)は認められないとされる。したがって、傷害のつもりで器物を損壊した場合には、[[器物損壊罪]]の故意は成立しないとされる。器物損壊(軽い罪)のつもりで客観的に傷害罪や殺人(重い罪)の結果を生じた場合に、傷害罪や殺人罪の故意は成立しないとするのはもちろんのこと、器物損壊罪の故意も成立しないとする。したがって、この場合器物損壊罪(上限懲役3年)は成立せず、[[過失致死罪]](上限罰金50万円)や[[過失致傷罪]](上限罰金30万円)が成立しうるにとどまる。この点で、抽象的符合説と異なる。
 
他方、例えば、覚せい剤を輸入する意図でヘロインなどの麻薬を輸入した場合を考えると、行為者は覚せい剤取締法違反(覚せい剤輸入罪)を意図しつつ、麻薬及び向精神薬取締法違反(麻薬輸入罪)を犯している。よって覚せい剤輸入罪の認識はあるが事実がないためこれによって罰することはできず、麻薬輸入罪の事実はあるが認識がない(故意がない)ためこちらでも罰することができないように思われる。しかし最高裁は、この二つの法律は取締りの目的が同一で取締りの方法も類似しており、覚せい剤も麻薬も有害性や外形が似ているため、両罪の構成要件は実質的に重なり合っているとして麻薬輸入罪の故意を認めた。