「ギ酸」の版間の差分

m
styなど
m (styなど)
{{Chembox
| ImageFileL1ImageFile1 = formic_acid.svg
| ImageSizeL1ImageSize1 = 120px
| ImageFileR1ImageFile2 = Formic-acid-3D-ball-stick.png
| ImageSizeR1ImageSize2 = 140px
| IUPACName = メタン酸, methanoic acid(acid (系統名)<br />ギ酸, formic acid(acid (許容慣用名)
| Section1 = {{Chembox Identifiers
| SMILES = O=CO
| CASNo = [64-18-6]
| RTECS = LQ4900000
}}
| Density = 1.2196 g cm<sup>&minus;3</sup>
| Solubility = 任意に混和
| BoilingPt = 100.75 {{}}
| MeltingPt = 8.40 {{}}
| Viscosity = 1.57 cP at 26 {{}}
| pKa = 3.75
}}
| NFPA-F = 2
| NFPA-R = 0
| FlashPt = 69 {{}}
| RPhrases = {{R10}}, {{R35}}
| SPhrases = {{S1/2}}, {{S23}}, {{S26}}, {{S45}}
}}
 
'''ギ酸'''(ぎさん、formic acid)は、低級の[[カルボン酸]]の1つ。'''蟻酸'''とも書き表される。[[化学式]]は HCOOH。[[IUPAC命名法]]では'''メタン酸''' (methanoic acid) が系統名である。&minus;CHO基を持つため、[[アルデヒド]]の性質([[還元|還元性]])も示す。工業的に作られており、水溶液が市販されている。加熱すると発火しやすい。
 
== 生成方法 ==
: CH<sub>3</sub>OH + CO &rarr; HCOOCH<sub>3</sub>
 
工業的にはこの反応は高圧液相下で行われる。典型的な反応条件は80℃ 80 {{℃}}、40気圧で[[ナトリウムメトキシド]]を用いるというものである。ギ酸メチルを[[加水分解]]するとギ酸が生成する。
: HCOOCH<sub>3</sub> + H<sub>2</sub>O &rarr; HCOOH + CH<sub>3</sub>OH
 
ギ酸は水や多くの[[極性溶媒]]、[[炭化水素]]に溶解する。炭化水素に溶解している場合や気体の場合、[[水素結合]]によりカルボン酸の[[二量体]]を形成している。この結合の存在により、気体は[[理想気体]]の性質から大きく外れたものとなる。液体及び固体状態では効率的な水素結合のネットワークを形成している。
 
ギ酸はカルボン酸であるが、通常の条件下では[[カルボン酸ハロゲン化物|酸塩化物]]や[[カルボン酸無水物|酸無水物]]を形成しないという特徴を持つ。これらを生成させようとした実験のほとんどは一酸化炭素が生成するという結果に終わった。その後 &minus;78℃78 {{℃}} でフッ化ホルミルをギ酸ナトリウムと反応させると酸無水物が、&minus;60℃60 {{℃}} で1-ホルムイミダゾールの[[クロロメタン]]溶液と塩酸を反応させると酸塩化物が生成するという報告がなされた<ref>Cohen, J. B. (1930). ''Practical Organic Chemistry''; MacMillan, 1930.</ref>。加熱するとギ酸は一酸化炭素と水に分解する。
 
カルボン酸としては独特の性質を持ち、[[アルケン]]と反応する。ギ酸とアルケンが反応すると[[ギ酸エステル]]を生成する。しかし硫酸や[[フッ化水素]]などの酸が存在すると[[コッホ反応]] (Koch reaction) によりギ酸がアルケンに付加し、炭素鎖が伸長したカルボン酸が生成する。
 
ギ酸水溶液は、一価の脂肪族カルボン酸の中では最も強い酸であることに加えて[[腐食性]]を持ち、皮膚に触れると水泡を生じ、痛みを与える。0.1 mol dm<sup>&minus;3</sup>水溶液中の電離度は0.042である。また100%ギ酸のハメットの[[酸度関数]]は''H''<sub>0</sub> = &minus;2.22であり比較的強い酸性媒体である<ref name=tanaka>田中元治  『基礎化学選書8  酸と塩基』  裳華房、1971年</ref>。
: HCOOH (aq) <math> \rightleftarrows\ </math> H<sup>+</sup> (aq) + HCOO<sup>&minus;</sup> (aq)
その酸解離に対する[[熱力学]]的諸量は以下の通りである<ref name=tanaka /><ref name=Parker>{{cite journal | author = Wagman, D. D.; WagmanEvans, W. H.; EvansParker, V. B.; ParkerSchumm, R. H.; SchummHalow, I. Halow,| S.M.title Bailey,= K.L.The Churney,NBS R.I.tables Nuttal,of K.Lchemical thermodynamics properties. ChurneySelected Values for Inorganic and R.I.C1 Nuttal,and TheC2 NBSOrganic tablesSubstances ofin chemicalSI thermodynamicsUnits properties,| journal = J. Phys. Chem. Ref. Data | volume = 11 | pages = Suppl. 2 (| year = 1982)}}</ref>。
{| class="wikitable" style="text-align: center; white-space:nowrap;"
|-
! Δ''H''<sup>○</sup>
!! style="white-space:nowrap"| <math>\mathit{\Delta} H^\circ</math>
! Δ''G''<sup>○</sup>
!! style="white-space:nowrap"| <math>\mathit{\Delta} G^\circ</math>
! Δ''S''<sup>○</sup>
!! style="white-space:nowrap"| <math>\mathit{\Delta} S^\circ</math>
! Δ''Cp''<sup>○</sup>
!! style="white-space:nowrap"| <math>\mathit{\Delta} Cp^\circ</math>
|-
| style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| &minus;0.12 kJ mol<sup>&minus;1</sup>
| style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| 21.4 kJ mol<sup>&minus;1</sup>
| style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| &minus;72 J mol<sup>&minus;1</sup>K<sup>&minus;1</sup>
| style="white-space:nowrap; background-color:#ffffff"| &minus;172 J mol<sup>&minus;1</sup>K<sup>&minus;1</sup>
|-
|}
 
また、[[硫酸|濃硫酸]]または[[三酸化硫黄]]を加えて熱すると一酸化炭素を生じる。
: HCOOH &rarr; CO + H<sub>2</sub>O
: HCOOH + SO<sub>3</sub> &rarr; CO + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
 
ギ酸はアルデヒドでもあるため、還元性を持つ。にもかかわらず、[[フェーリング反応]]はほとんど示さない。これは、ギ酸イオンが銅イオンと安定な[[キレート|キレート錯体]]を形成するためで、ギ酸イオンが銅イオンを包み込み、銅イオンが[[酸化銅(I)]]として沈澱するのを妨げるからだと考えられる。<br />
 
同じく還元性に由来する[[銀鏡反応]]は問題なく起こる。
 
有機合成化学では、しばしば[[水素化物イオン]]源として用いられる。[[エシュバイラー・クラーク反応]]や[[ロイカート反応|ロイカート・ヴァラッハ反応]]は良い例である。
 
研究室内では、硫酸と混合することで一酸化炭素源として用いられる。ホルミル源としても用いられることがあり、トルエン中でメチルアニリンからN-メチルホルムアニリドを生成する反応が例として挙げられる<ref>{{OrgSynth | author = Fieser, L. F.; Jones, J. E. "| year =1940 | title = ''N''-methylformanilide".Methylformanilide ''[[オーガニック・シンセゼス|Org. Synth.]]'',volume= Coll.20 Vol.| 3,pages p.590= (1955);66 Vol.| 20,collvol p.66= (1940).3 | collvolpages = 590 | [http://www.orgsyn.org/orgsyn/orgsyn/prepContent.asp?prep =cv3p0590 オンライン版]cv3p0590}}</ref>
 
ギ酸を燃料とする[[ギ酸燃料電池]]も開発中である。
== 関連化合物 ==
=== ギ酸塩 ===
[[Image:Formate.png|rightthumb|120px|ギ酸イオン]]
ギ酸の[[電離]]により生成する[[イオン]]を'''[[ギ酸イオン]]'''(formate (formate, HCOO<sup>&minus;</sup>) と呼び、ギ酸イオンを含む塩を'''[[ギ酸塩]]'''と呼ぶ。
 
ギ酸イオンは多くの金属イオンおよび[[アンモニウム]]と塩を生成するが、[[銀]]塩は室温で不安定である。多くのものはギ酸イオンを含む[[イオン結晶]]であるが、[[ベリリウム]]、[[クロム]](III)および[[鉄]](III)などはギ酸イオンで架橋した金属[[多核錯体]]を形成している<ref name=kagakudaijiten>化学大辞典編集委員会  『化学大辞典』  共立出版、1993年</ref>。
 
多くのものが水溶性であるが、[[スズ]]塩、[[鉛]]塩および[[ビスマス]]塩などは難溶性である。
 
* [[ギ酸ナトリウム]] (HCOONa) は繊維の染色や印刷の過程などで用いられる。
 
=== ギ酸エステル ===
<div style="float:right">[[Image:Methyl formate.png|thumb|120px]]</div><div style="float:right">[[Image:Methyl-formate-3D-vdW.png|110pxギ酸メチル]]</div>
ギ酸と[[アルコール]]が[[脱水縮合]]した構造を持つ[[エステル]]を'''ギ酸エステル'''と呼び、HCOORの構造を持つ。
 
ギ酸エステルには果実の芳香の成分となっているものが存在し、ギ酸エチル HCOOC<sub>2</sub>H<sub>5</sub> は[[桃]]、ギ酸アミル HCOOC<sub>5</sub>H<sub>11</sub> は[[リンゴ]]、ギ酸イソアミル HCOOCH<sub>2</sub>CH<sub>2</sub>CH(CH<sub>3</sub>)<sub>2</sub> は[[梨]]の香りの成分の一つであり、[[香料]]として用いられる<ref name=kagakudaijiten />。
 
* [[ギ酸メチル]] (HCOOCH<sub>3</sub>)
[[ギ酸メチル]] HCOOCH<sub>3</sub> はエーテル用芳香を持ち、化成品原料として用いられる。
 
その他、ギ酸誘導体には、[[ニトリル]]として[[シアン化水素]] HCN、[[アミド]]として[[ホルムアミド]] HCONH<sub>2</sub> などが存在する。また[[カルボン酸ハロゲン化物]]としてのギ酸クロライド HCOCl は室温では安定でない。
20,476

回編集