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[[File:Guide book-旅行ガイドブックPA024792.jpg|thumb|240px|right|書店の棚に並ぶ旅行ガイド]]
 
'''旅行ガイドブック'''(りょこうガイドブック)とは、[[観光]]や[[仕事]]などの目的で[[未知]]の地域へ向かう([[旅行]]する)者に対して、その目的地となる特定地域の[[情報]]や移動手段の[[情報]]などを提供するための[[出版物]]のことである。'''旅行ガイド'''、'''旅行案内書'''、または単純に'''ガイドブック'''とも呼ばれる。
 
== 構成概要 ==
旅行ガイドブックは、目的となる地域の情報を提供するものである。内容としては[[地形]]、[[気候]]、動植物などの[[地理]]、[[歴史]]、[[文化]]、[[経済]]、[[言語]]などの情報を提供すべき特定地域の背景を示し、[[鉄道]]・[[バス (交通機関)|バス]]・[[自動車]]・[[人力車]]([[リクシャー]])・[[レンタサイクル]]・[[船]]・[[航空機]]などによる移動手段の紹介、[[服装]][[宿泊]][[食事]]、見どころ、[[祭り]]、[[登山]]や[[ハイキング]]その他の[[アクティビティ]]や体験、[[土産物]]などについての情報を正確にかつ読者に伝わりやすく記述する。また観光地や[[ホテル]]などの宿泊施設、[[レストラン]]などの批評やランク付けなども行う。
 
[[File:Bremen inner 1910.jpg|thumb|『[[ベデカー]]』の[[ブレーメン]]地図(1910)]]
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日本においても旅の記録をつけることは古くより存在した。しかし、旅日記や紀行文などと明確に異なる案内記の書式は、[[江戸時代]]から現れた。
 
[[江戸幕府]]は、[[武家]][[庶民]]の区別なく人々の移動を厳しく制限した。一方で、街道の整備が進み、長く続いた太平の時代となり、[[物見遊山]]の旅を促進もした。[[富士講|富士参詣]]や[[伊勢参り]]などである。これにともない、'''道中記'''<ref>江戸時代末期に日本を訪れた[[アーネスト・サトウ]]は道中記のことを日本の『マレー』と表している。『一外交官の見た明治維新』(上・下)岩波文庫</ref>と呼ばれる、いわゆるガイドブックが多数登場した。
 
[[江戸時代]]で一番古いとされる道中記は、[[小島弥兵衛]]の著のものである。[[1655年]][[明暦]]元年)頃のもので、[[江戸]]から[[東海道]]を通り[[京都]]までの宿間の距離、駄賃等が記載されている。
 
また八隅蘆庵(やすみろあん)の『旅行用心集』(1810年)は、旅の心得61カ条を始め、諸国の[[温泉]][[街道]]の里程など詳しく記されていた。「可愛い子には旅をさせよ」など現在にも残る表現がある。
 
日本の近代的な旅行ガイドブックは明治期に入り、鉄道とともに進歩した。日本で最初の近代的な旅行ガイドブックは、[[明治時代]]の[[山陽鉄道]]によるといわれる。以後、主要な鉄道が国有化されると旅行ガイドブックの出版も[[鉄道院]][[鉄道省]]と鉄道事業主導・国家主導ですすめられた。
 
[[1911年]]、鉄道院が『鉄道院線沿道遊覧地案内』を刊行。その後、『鉄道旅行案内』と改訂される。また『鉄道旅行案内』で執筆・編集に関わっていた谷口梨花が、博文館より『汽車の窓から』(「西南部」と「東北部」の二巻立て)を1918年に出版した。
 
[[1929年]](昭和4年)頃より、鉄道省が編集した『[[日本案内記]]』が刊行された<ref>後に博文館に編集が変わる</ref>。北海道編、東北編、関東編、中部編、近畿編(上・下)、中国四国編、九州編の8冊でからなり、ほとんどの名所・旧跡が紹介された。この『日本案内記』が現在の日本国内のガイドブックの原型となったといわれる。
 
[[1949年]]に[[ジェイティービー|日本交通公社]]から、『日本案内記』をモデルに『新旅行案内』が、続いて『最新旅行案内』が登場した。『最新旅行案内』はエリア毎に17巻立てであった。1973年に当時日本全国すべての市町村を紹介し、ガイドブックとしても貴重な地理資料としても評価の高い『新日本ガイド』が出版される。その後、『エースガイド』へと続いた。
 
朋文堂で山岳ガイドブックである『マウンテンガイドブック』のシリーズを手がけていた横山元昭らが[[実業之日本社]]に移り、1961年に『ブルーガイド』を刊行する。登山やハイキングだけでなく、個人旅行をターゲットにした編集方針で人気を博す。後年さらに目的に合わせてシリーズは細分化した。
 
[[1960年代]]以降、他の出版社からもガイドブックが競って出版されるようになり、種類と数が飛躍的に増えた。その中には特定ジャンルの食物の情報についてのみ扱うものも多く、特にいわゆる『[[ラーメン本]]』や[[香川県]]における[[讃岐うどん]]店のガイドブックなどはそれ単体で出版物の一ジャンルとして成立している程で、多くの出版社が情報の充実を競っている。
 
また[[JTBパブリッシング]](日本交通公社出版事業局の分社)の出版する旅行情報雑誌『[[るるぶ]]』のムックとして、『るるぶ情報版』が1984年に京都版が登場。以後、[[昭文社]]の『[[まっぷる]]マガジン』シリーズとともに自家用車によるドライブ旅行をターゲットにしたものがシリーズ化される。