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'''階層分析法'''(かいそうぶんせきほう)は、[[意思決定]]における問題の[[分析]]において、人間の主観的判断と[[システムアプローチ]]との両面からこれを決定する問題解決型の意思決定手法。'''AHP''' ( Analytic Hierarchy Process ) とも
階層分析法の主な工程として、「階層構造の構築」、「一対比較」、「ウェイトの計算」、「総合評価値の計算」が挙げられる。
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階層構造の構築では、問題の要素を「最終目標」、「評価基準」、「代替案」の3階層に分ける。これによって、明確に問題を捉えることができる。評価基準とは、代替案を評価する際の基準となるものである。具体的には、「価格」や「大きさ」、「デザイン」が挙げられるだろう。代替案は、最終目標を達成するために必要と思われる項目のことで、例えば問題が「[[ゲーム機]]の選定」であれば、各社のゲーム機が代替案の候補に挙がることとなるであろう。
一対比較は、評価基準や代替案を全ての組み合わせにおいて比較することである。先の評価基準の例を用いると、「価格」と「大きさ」、「価格」と「デザイン」、「大きさ」と「デザイン」を比較することとなる。実際の比較には、9点法がよく用いられる。
ウェイトの計算は、先の一対比較の結果を基にしてウェイトを算出する工程である。ウェイトとは、代替案の重要度を表
総合評価値の算出では、各代替案の最終的な総合評価値を求めて、最も優れた代替案を選出する。
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<big>'''概要'''</big>
[[ファイル:AHPLeadImage Japanese.jpg|thumb|350px|'''例.AHP階層(最終結果を含む)'''3人の候補者の中から
AHP(階層分析法)は複雑な状況での意思決定を行うための構造化法の
AHPは1970年代にトーマス・L・サーティ(現在、ピッツバーグ大学名誉教授)によって創始された意思決定法で、数学と心理学がベースになっている。
AHPは包括的かつ合理的な意思決定のためのいくつもの枠組みを提供する。これから検討する問題を構造化する枠組み、問題に含まれる要素を数量化する枠組み、それら要素の評価を互いに関連づける枠組み、そして代替案として設定される解決案を問題全体の中で評価する枠組みである。AHPは世界中で、政治、ビジネス、産業、医療、教育など様々な分野の意思決定場面で利用されている。またこの手法を手軽に使うためのコンピュータ・ソフトウェアが、いくつかの企業から販売されている(訳者注:無償で利用できるものもある)。
AHPでは、まず自分
いったん階層が構築されれば、
ところでAHPは、上記のようにして得られた評価を、問題全体の中で比較できるよう数量化する。実際、階層内の各要素に対して重要度あるいは優先度が具体的な数値として得られる。この際、同一基準では計れないような要素についても、合理的かつ一貫した方法を利用して比較していくことができる。これを可能にしたところも、AHPが他の意思決定法と差別化されるところである。
最後に、各代替案に対する優先度が具体的な数値として計算される。ここで得られる数値が、
冒頭の図は、AHPの最終段階で得られる階層図の簡単な例である。決定者が決めた数値を
== 用途と適用例 ==
AHP(階層分析法)は個人的な決定問題で大いに役立つが、複雑な決定問題に取り組む集団意思決定場面で大きな効果を発揮する。
また意思決定に必要とされる要因が比較も数量化も難しい場合や、専門性や用語あるいは立場の違いにより集団内でのコミュニケーションが妨げられる場合などにも強い意思決定法である。
AHPの活用場面として次が挙げられる:<ref name='FormanGass'> {{cite journal|title=The Analytical Hierarchy Process—An Exposition|journal=Operations Research|date=2001-07|first=Ernest H.|last=Forman|coauthors=Saul I. Gass|volume=49|issue=4|pages=469–487|id= |url=|format=|accessdate=2010-09-28|doi=10.1287/opre.49.4.469.11231 }}</ref>
* 選択 - 複数の代替案の中から
* 順位付け - 代替案を
* 優先順位付け- 各代替案に対し、代替案間での相対的な重要度を決定する。
* 資源配分 - 代替案間で資源を配分する。
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* 品質マネジメント- 多次元からみた品質のあり方や品質改善を扱う。
複雑な意思決定場面での AHP の活用例は何千件にも達しており<ref name='de Steiguer 2003'> {{Cite book| first=J.E. | last=de Steiguer| coauthors=Jennifer Duberstein, Vicente Lopes| contribution=The Analytic Hierarchy Process as a Means for Integrated Watershed Management| title=First Interagency Conference on Research on the Watersheds| editor-first=Kenneth G.| editor-last=Renard| publisher=U.S. Department of Agriculture, Agricultural Research Service| place=Benson, Arizona| pages=736–740| date=October 2003| year=| id= | contribution-url=http://www.tucson.ars.ag.gov/icrw/Proceedings/Steiguer.pdf| format=| accessdate=| editors=et al. }}</ref>、計画、資源配分、優先順位の設定、代替案間での選択など広範囲にわたり多くの成果が得られている。<ref name="Bhushan, 2004"/> これらの他にも、予測、総合的品質マネジメント、ビジネスプロセス・リエンジニアリング、品質機能展開、バランス・スコアカードでの利用がある。<ref name="FormanGass"/> 一流企業での活用例も多く
* 世界的な気候変動の影響を減らす最良の方法は
* ソフトウェアシステムの総合品質の数量化(マイクロソフト株式会社)<ref name='MSDN'> {{cite journal|title=Test Run: The Analytic Hierarchy Process|journal=MSDN Magazine|month=June | year=2005|first=James|last=McCaffrey|coauthors=|volume=|issue=|pages=|id= |url=http://msdn2.microsoft.com/en-us/magazine/cc163785.aspx|format=|accessdate=2010-09-28 }}</ref>
* 大学教授の選抜(Bloomsburg University of Pennsylvania)<ref> {{cite journal|title=Improving the Faculty Selection Process in Higher Education: A Case for the Analytic Hierarchy Process|journal=IR Applications|month=August | year=2005|first=John R.|last=Grandzol|coauthors=|volume=6|issue=|pages=|id= |url=http://airweb.org/images/IR%20App6.pdf|format=PDF|accessdate=2010-09-28 }}</ref>
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* アメリカ合衆国の分水点に関する最良なマネジメント法の策定(アメリカ農務省)<ref name="de Steiguer 2003"/>
AHP は歴史的重要性から
== 教育と学術的研究 ==
AHPを使うのに専門性や学術的なスキルは必要ないが、4年制大学の工学部<ref> {{cite journal|title=Using the Analytic Hierarchy Process in Engineering Education|journal=International Journal of Engineering Education|year=1998|first=P.R.|last=Drake|coauthors=|volume=14|issue=3|pages=191–196|id= |url=http://www.ijee.dit.ie/articles/Vol14-3/ijee1017.pdf|format=PDF|accessdate=2010-09-28 }}</ref>やビジネススクール(ビジネスに関する大学院)<ref> {{cite journal|title=Exercises for Teaching the Analytic Hierarchy Process|journal=INFORMS Transactions on Education|date=January, 2004|first=Lawrence|last=Bodin|coauthors=Saul I. Gass|volume=4|issue=2|id= |url=http://archive.ite.journal.informs.org/Vol4No2/BodinGass/|accessdate=2010-09-28 }}</ref>など、多くの高等教育機関で重要な科目の
AHPは品質の分野では特に重要な科目とされ、シックスシグマ、リーン・シックスシグマ、QFD(品質機能展開) と一緒に多くの専門コースで教えられている。<ref> {{cite journal|title=Analytical Hierarchy Process (AHP) – Getting Oriented|journal=iSixSigma.com|month=January | year=2005|first=David L.|last=Hallowell|coauthors=|volume=|issue=|pages=|id= |url=http://www.isixsigma.com/index.php?option=com_k2&view=itemlist&layout=category&task=category&id=64&Itemid=195|format=|accessdate=2010-09-28 }}</ref><ref> {{cite journal|title=Analytic Hierarchy Process (AHP)|journal=QFD Institute|date=|first=|last=|coauthors=|volume=|issue=|pages=|id= |url=http://www.qfdi.org/workshop_ahp.htm|format=|accessdate=2010-09-28 }}</ref><ref> {{cite journal|title=Analytical Hierarchy Process:: Overview|journal=TheQualityPortal.com|date=|first=|last=|coauthors=|volume=|issue=|pages=|id= |url=http://thequalityportal.com/q_ahp.htm|format=|accessdate=2010-09-28 }}</ref>
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[[Image:AHPDevice.jpg|thumb|right|150px|AHPを使った集団意思決定会議で判断結果の入力に使われる装置]]
AHP の手順は次のように要約できる:
# まず意思決定したい問題を階層によりモデル化する。この階層には、
# 階層に含まれる各要素について、要素間での優先度を確定する。このとき要素間での一対比較が利用される。例えば、不動産投資家
# 2で得られた優先度を合成し、代替案の階層における統合的な優先度を算出する。先の例では、場所、価格、タイミングに関する投資家の判断結果を合成することで、各代替案(具体的な不動産)の統合的な優先度としてまとめることになる。
# 3で得られた判断結果の整合性を検討する。
# AHPを活用した最終結論を得たことになる。<ref name='DMFL'>{{cite book | last = Saaty | first = Thomas L. | authorlink = | coauthors = | title = Decision Making for Leaders: The Analytic Hierarchy Process for Decisions in a Complex World | publisher = RWS Publications | date = 1999-05-01 | location = Pittsburgh, Pennsylvania | pages = | url = http://www.amazon.com/Decision-Making-Leaders-Hierarchy-Decisions/dp/096203178X/ref=sr_1_1/105-2850894-2453264?ie=UTF8&s=books&qid=1191602292&sr=1-1 | doi = | id = | isbn = 0-9620317-8-X|accessdate=2010-09-28 }} </ref>
以下これらの手順について、節を
=== 階層による問題のモデル化 ===
階層分析法における第1段階は、検討する問題を階層を利用してモデル化することである。この段階で意思決定者
==== 階層の定義 ====
階層とは、人、ものごと、考え方などを順位付けしたり、組織化するためにレベル分けしたシステムである。このシステムでは、一番上に要素が一つだけ配置され、その下に
企業の組織なども階層で表され、責任の所在、リーダーシップの遂行、コミュニケーションの促進のために利用されている。「もの」に関する階層としてよく知られているものにパソコンがある。一番上にパソコン本体があり、その下にモニター、キーボード、マウスが配置される。
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概念の世界においても、複雑な実体を詳細に表現するために階層が使われる。実際その実体をいくつかの成分に分解し、それらを順次階層に落とし込むことで構造化される。このときの階層数(訳者注:階層を構成する段の個数)は我々の認識を反映していることになる。なおこれらの手続きにおいて、各要素を全体から理解するように心がける必要がある。同レベルの要素であれ他のレベルの要素であれ、対象とする要素以外は一時的に無視することになる。このような方法により、どんな複雑な実体でも包括的に理解していくことができる。
この階層を解剖学を学ぶ医学生が使う場面で考えてみる。彼らは筋骨格系(手とそれを形成する筋肉や骨といった、組織と下位組織)、循環器系(たくさんのレベルと枝を含む)、神経系(たくさんの成分とサブシステムを含む)などについて独立に学んでいきながら、それら
これと同じことが、我々が複雑な決定問題に取り組むときにも言える。すなわち、階層を使うことで大量の情報を統合しながら、その問題の本質を理解できる。情報を構造化しながら、全体として徐々に問題の見通しを良くしていくことができる。<ref name="DMFL"/>
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==== AHPの階層 ====
AHP階層とは、意思決定問題を構造化によりモデル化したものである。この階層は、'''総合目標'''、それを達成するための選択肢あるいは'''代替案'''のグループ、そしてこれら代替案を総合目標に関係
AHPの活用例に関するほとんどの出版物に、この階層図とその解説が掲載されている。この文献でも簡単なものを紹介する。より複雑なAHP階層については、書籍にまとめられたものがあるので、そちらを参照のこと。<ref> {{cite book |title=The Hierarchon: A Dictionary of Hierarchies |last=Saaty |first=Thomas L. |authorlink= |coauthors=Ernest H. Forman |year=1992 |publisher=RWS Publications |location=Pittsburgh, Pennsylvania |isbn=0-9620317-5-5 |url=http://www.amazon.com/Hierarchon-Dictionary-Hierarchies-Analytic-Hierarchy/dp/0962031755|accessdate=2010-09-28 }} </ref>
どのようなAHP階層も、検討中の問題の性格の
ここでAHP階層についての理解を深めるために、総合目標とそれを達成するための3つの代替案、さらにそれら代替案を評価する4つの評価基準を含む意思決定問題について考えてみる。
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この階層は下図のように、一番上に総合目標、一番下に3つの代替案、そしてその中間に4つの評価基準をもつダイアグラムとして描かれる。
このようなダイアグラムに描かれる
[[ファイル:AHPHierarchy3.0 Japanese.jpg|thumb|center|953px|'''例.単純な AHP階層''' 総合目標を達成するための3つの代替案と、代替案を評価する4つの評価基準がある。]]
スペース省略するために、下の図のように、各代替案に
[[ファイル:AHPHierarchy1Labeled Japanese.jpg|thumb|center|450px|'''例.単純な AHP階層(簡易版''')すぐ上の例を同じ階層を表す。総合目標を達成するための3つの代替案と、代替案を評価する4つの評価基準がある。]]
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=== 階層の評価 ===
階層が完成したら、意思決定者たちは各ノードを'''一対比較'''により評価する。この評価は
上述の「リーダー選び」について考えるならば、意思決定者の重要な仕事は、リーダーを選ぶために用意した評価基準の重要度を決めることであり、各評価基準に関して各候補者の重要度を決めることである。AHPは各代替案だけでなく、各評価基準にも意義あるかつ主観的な数値を割り振る。
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==== 優先度の定義と解釈 ====
'''優先度'''とは、AHP 階層内の各ノードに結び
優先度は、確率のように0から1の間の絶対値になるが(ただし0にはならない)、単位や次元といったものはない。
優先度はそのアーキテクチャにより階層の中で配分されたものであり、それらの実体は、階層を作る過程で意思決定者により入力された情報により適宜解釈されるべきものである。なお、総合目標、評価基準、代替案の優先度は密接には関係してはいるが、それぞれ独立に考えることが必要である。
総合目標の優先度は1.000と定義する。これより代替案の優先度は常に1.000以下になる。評価基準の優先度は
[[ファイル:AHPHierarchy1.1 Japanese.jpg|thumb|center|400px|'''例.該当のデフォルト優先度を持つ簡単なAHP階層''']]
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ここで2つの新しい概念を与える。これらは階層内に2つ以上の評価基準のレベルがある場合、すなわち下位評価基準がある場合に適用されるもので、'''ローカルな優先度'''と'''グローバルな優先度'''である。各評価基準の下にいくつかの下位評価基準がある次の例により説明する。
[[Image:AHPHierarchy4.0 Japanese.jpg|thumb|center|550px|'''例.ローカルなデフォルト優先度とグローバルなデフォルト優先度をもつ少し複雑なAHP階層'''
ある親ノードに関して、姉妹関係にある子ノード間での相対的な重要度がローカルな優先度(灰色の数値)である。評価基準の組にしろ、それらの下にある姉妹関係にある評価基準の各組にしろ、ローカルな優先度の総和は1.000になる。一方、姉妹関係にある子ノードのローカルな各優先度と、それらの親ノードのグローバルな優先度を
これらの規則は以下のように書ける:
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== AHPへの批判 ==
AHPは今やオペレーションズ・リサーチや経営科学の
1990年代初頭、AHPについて批評家たちと提案者たちの間の一連の討論が学術雑誌 Management Science<ref>Dyer, J. S. (1990): Remarks on the Analytic Hierarchy Process. In: Management Science, 36 (3), S. 249-258.</ref><ref>M. V. Mikhalevic "Remarks on the Dyer-Saaty controversy" Cybernetics and Systems Analysis, Volume 30, Number 1 / January, 1994 </ref><ref>Patrick T. Harker, Luis G. Vargas, "Reply to 'Remarks on the Analytic Hierarchy Process' by J. S. Dyer", Management Science, Vol. 36, No. 3 (Mar., 1990), pp. 269-273</ref><ref>Dyer, J.S. (1990b), "A clarification of ‘Remarks on the analytic hierarchy process’", Management Science, Vol. 36 No.3, pp.274-5.</ref>やThe Journal of the Operational Research Society<ref>Holder, R.D., Some Comment on the Analytic Hierarchy Process,The Journal of the Operational Research Society, 1990, 41, 11 1073-1076. </ref><ref>Thomas L. Saaty "Response to Holder's Comments on the Analytic Hierarchy Process" The Journal of the Operational Research Society, Vol. 42, No. 10 (Oct., 1991), pp. 909-914</ref><ref>R. D. Holder "Response to Holder's Comments on the Analytic Hierarchy Process: Response to the Response" The Journal of the Operational Research Society, Vol. 42, No. 10 (Oct., 1991), pp. 914-918</ref>に掲載された。これらの討論は AHPに有利な方で落ち着いたようだ。
* 2001年にAHPの学術的批判を真っ向から反証する詳細な論文が、学術雑誌Operations Researchに掲載された。<ref name='FormanGass'/>
* 2008年に出版されたManagement Scienceの論文に多目的意思決定全分野における過去15年間の発展経過をレビューしたものがあるが、AHPに関する論文の数は他のどの分野よりも多く、この分野でいかに多くの発展が
* 同じく2008年に、オペレーションズ・リサーチと経営科学の分野で主要とされる国際学会<ref>[http://www.informs.org/ The Institute for Operations Research and the Management Sciences](INFORMS)はオペレーションズリサーチと経営科学の分野における実務家を対象とした国際学会であり、''Management Science''という学術雑誌を出版している。2008年にトーマス・L・サーティは階層分析法の発展への寄与を評されINFORMSのインパクト賞を受賞している。</ref>において、それらの分野におけるAHPの多大な影響を公式に認めた。
しかし批判が完全に収まった
AHPへの批判のほとんどが順位逆転と呼ばれる現象に関するものである。これについては、節を
=== 順位逆転現象 ===
評価基準あるいは代替案の属性による代替案の順位付けは一般的な意味で意思決定理論の一部である。確かに、意思決定のプロセスにおいて、
しかしこの仮定の妥当性はいささか疑わしいものがある。事実、一般的な意思決定場面において、新しい代替案を追加することで、
2000年のアメリカ合衆国大統領選挙は、順位逆転現象を理解する上での好例である。実際ラルフ・ネイダーは、民主党、共和党いずれの候補者からも劣勢にあったことから、当初は”無関係な”代替案だったといえる。ところが彼が後に共和党より民主党に投票していた人たちからのたくさんの票を獲得したことで逆転現象が起こった(訳者注:ジョージ・ブッシュ・Jrが勝利した)。ネイダーが立候補していなければ、アル・ゴアが勝っていたことは誰もが認めるところであり、いわば当初「無関係」であった彼の存在が順位逆転現象を引き起こしたと説明できる。1992年のジョージ・ブッシュの敗北にロス・ペローが与えた影響についても同様のことが言える(訳者注:ビル・クリントンが勝利した)。
順位逆転現象への対処には2つの方向性がある。
順位逆転現象と理想代替案については、学術雑誌Operations Research<ref name='FormanGass'/>で広範にわたり議論されている。またAHP の現時点での標準的テキストとされる書籍ではRank preservation and reversal という章にて扱われている。<ref name='SaatyFundamentals'>{{cite book | last = Saaty | first = Thomas L. | authorlink = | coauthors = | title = Fundamentals of Decision Making and Priority Theory | publisher = RWS Publications | year = 2001 | location = Pittsburgh, Pennsylvania | pages = | url =http://www.amazon.com/Fundamentals-Decision-Priority-Analytic-Hierarchy/dp/0962031763/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1285698917&sr=1-3 | doi = | id = | isbn = 0-9620317-6-3 |accessdate=2010-09-28}}</ref>なお後者には、AHPの枠組みを超えて、一般によく知られる順位逆転現象の例が掲載されている。コピー代替案あるいはそれに近い代替案を追加することにより起こる順位逆転現象、決定ルールの非推移性により起こる逆転現象、幻とおびき寄せ代替案を追加することにより起こる逆転現象、そして効用関数におけるスイッチング現象による逆転現象である。AHPの DistributiveモードとIdealモードについてもその書籍で紹介されている。
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