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=== 概念 ===
{{main|化け狸}}
[[ファイル:JSLtanuki001.gif|thumb|right|100px|[[日本手話]]の「たぬき」は、「タヌキの腹鼓」の伝承による。]]
タヌキが現在のような[[滑稽]]なイメージになったのは、実は[[近世]]以降のことであり、我々の知るようなイメージが古代以来伝えられたものと考えるのは誤りであるという。
江戸時代になって、民俗イメージの中のタヌキは腹がふくれ、大きな[[陰嚢]]をもつようになり、やがて「[[腹鼓]](はらつづみ)」まで打つようにまでなったが、鎌倉・室町時代の説話に登場するタヌキには、ときに人を食うこともあるおどろおどろしい[[化け物]]としてのイメージが強い([[御伽草子]]の「[[かちかち山]]」前半の凶悪なタヌキは、おばあさんを騙して殺し、さらにおじいさんを騙して「婆汁」を食わせる)。タヌキの腹鼓は和歌にもよまれた。たとえば「夫木集」に「人すまでかねも音せぬ古寺にたぬきのみこそつづみうちけれ」。
 
[[ファイル:ShigarakiYaki.jpg|thumb|left|200px|[[信楽焼き]]のタヌキ]]タヌキと言えば、巨大な陰嚢をもった意匠が思い浮かぶが、これは[[金]]細工の際に、タヌキの[[毛皮]]で金を延ばすとよく延びるとされていたことが原形となったもので、転じて福を呼ぶモチーフとして、庭先に飾られるようになったらしい。つまり、かつてタヌキは、金工、[[金鉱]]のシンボルとして扱われていた{{要出典|date=2009年7月}}。
 
この意匠を題材にした「たんたんたぬきの~」という歌い出しの[[俗謡]]が知られるが、これは[[賛美歌]]「[[まもなくかなたの]]」([[日本福音連盟]]制定第678番/原題:Shall we gather at the river?)の替え歌として生まれたが、メロディーは微妙に変化している。
 
なお、タヌキの[[剥製]]は、上記のような直立させた姿(尾を前に回して陰嚢に見たてる)で飾ることが多く、飲み屋や山間部の旅館などで見かける。
[[ファイル:SekienTanuki.jpg|thumb|200px|right|[[鳥山石燕]]『[[画図百鬼夜行]]』より「狸」]]
 
=== 伝承 ===
タヌキは金の精霊であり、金は本来的に再生を意味する鉱物である。したがって、再生の精霊であることをも意味しているが、ネコと同様、[[死]]のシンボルとしての側面も持っていた。金が再生のシンボルとされるのは、不純物を排出していく過程で、金の輝きは一度死に(輝度が一時的に低下する)、次の瞬間、眩いばかりに輝きを再生すという現象があるからである。この金の死をもたらすため、金工師らは、[[炉]]に本種の[[死体]]を釣り下げたと伝えられている。しかし、この伝承は金工師に限ったもので、ネコと同じく、狸の場合も精霊的要素はほとんど伝承されなかった。タヌキの化けるという能力は[[キツネ]]ほどではないとされているが、これは化ける狸の多くが、古猫と同じく[[付喪神]](つくもがみ)であるためである。ただ、一説には「狐の七化け狸の八化け」といって化ける能力はキツネよりも一枚上手とされることもある。実際伝承の中でキツネは人間の女性に化けることがほとんどだが、タヌキは人間のほかにも物や建物、[[妖怪]]、他の動物等に化けることが多い。また、キツネと勝負して勝ったタヌキの話もあり、[[佐渡島]]の[[団三郎狸]]などは自身の領地にキツネを寄せ付けなかったともされている。また、犬が天敵であり人は騙せても犬は騙せないという<ref>{{Cite book|和書|author=[[水木しげる]]|title=妖怪大図鑑|year=1996|publisher=[[講談社]]|series=講談社まんが百科|isbn=978-4-06-259041-9|volume=II|pages=36頁}}</ref>。
 
;[[文福茶釜]]
[[ファイル:Taxidermy of Raccoon Dog-Morinji, Tatebayashi, Gunma.JPG|thumb|200px|タヌキの[[剥製]]([[草鞋]]を履いて立っている)[[群馬県]][[館林市]][[茂林寺]]にて、(2008年2月11日撮影)]]
:[[群馬県]][[館林市]][[茂林寺]]の伝説として語り継がれている昔話のひとつ。タヌキが守鶴という僧に化けて七代寺を守り、汲んでも尽きない[[茶]]を沸かしたとされている。普通、[[物怪]](もののけ)は鉄を嫌うが、このタヌキはその[[鉄]]の[[茶釜]]に化けており、金の精霊たる所以を表している。また、金工には火が重要なエレメントとなるが、[[鳥山石燕]]は『[[画図百鬼夜行]]』において、文福というネーミングは、「文武火」のことであり、文火は緩火、武火は強火を意味するとしている。火の様子が茶釜の名前になったのも、タヌキが金工のエレメントであることを示すが故である。汲めども尽きぬとは、富、すなわち金を表す言葉である。
;[[ムジナ]](貉)
:[[茨城県|茨城]]の炭焼き小屋に毎晩女が現れ、いたずらがひどいので殺すと[[ムジナ]](貉)であったというが、ムジナは2尾いっしょにならないと女に化けられないと伝えられる。
;{{Anchor|宗固狸|ソウコタヌキ(宗固狸)}}
:茨城県飯沼弘教寺に墓がある。寺の僧に化けていたが、ある日昼寝をして正体を現した。しかし、長く仕えたというのでその後も給仕をさせていたと伝えられている<ref name="refktada">{{Cite book|和書|author=[[多田克己]]|title=幻想世界の住人たち|volume=IV|year=1990|publisher=[[新紀元社]]|series=Truth in fantasy|isbn=978-4-915146-44-2|pages=238頁}}</ref>。タヌキはよく[[僧侶]]に化ける。
;[[狸囃子|タヌキバヤシ]]
:[[江戸]]では、番町七不思議のひとつで、深夜にどこからともなく太鼓の音が聞こえてくるものを「[[狸囃子|タヌキバヤシ]]」といった。童謡『[[証城寺の狸囃子]]』は[[證誠寺 (木更津市)|證誠寺]]に伝わる伝説を元に作られた。
;{{Anchor|袋下げ}}(ふくろさげ)
:[[長野県]][[北安曇郡]][[大町 (長野県)|大町]](現・[[大町市]])。タヌキが高い木に登り、通行人目がけて白い袋をぶら下げたという<ref>{{Cite book|和書|author=民俗学研究所編著|editor=[[柳田國男]]監修|title=綜合日本民俗語彙|year=1955|publisher=[[平凡社]]|volume=第3巻|pages=1354頁}}</ref>。
;{{Anchor|負われ坂}}(おわれざか)
:[[大阪府]]南河内郡。夜にある坂を通ると「おわれよか、おわれよか」という声がするので、気丈な男が「負うたろか負うたろか」と言うと、松の株太が乗りかかった。家に帰って[[ナタ]]で割ろうとすると、古狸が正体を顕わして詫びたという<ref>{{Cite book|和書|author=民俗学研究所編著|editor=柳田國男監修|title=綜合日本民俗語彙|year=1955|publisher=[[平凡社]]|volume=第1巻|pages=308頁}}</ref>。
;{{Anchor|重箱婆}}(じゅうばこばば)
: [[熊本県]][[玉名郡]]、[[宮崎県]][[日向市]]。古狸が[[重箱]]を手に持った老女に化けて現れたという。熊本ではさらに重箱婆が「重箱婆じゃ、ご馳走はいらんかえ」と言いながら、人に石のようなものを担がせるという<ref>{{Cite journal|和書|author=能田太郎|year=1935|month=8|title=玉名郡昔話 (3)|journal=昔話研究|volume=1巻|issue=4号|pages=25頁|publisher=[[三元社]]}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=加藤恵|year=1989|month=12|title=県別日本妖怪事典|journal=歴史読本|volume=第34巻|issue=第24号(通巻515号)|pages=331頁|publisher=[[新人物往来社]]|id=[[雑誌コード|雑誌]] 09618-12}}</ref>。
;[[風狸]]
:『[[画図百鬼夜行]]』、『和漢三才図会』、『[[本草綱目]]』などには「風狸」というものが見え、「風によりて巌をかけり、木にのぼり、そのはやき事飛鳥の如し」とある。ある草を狙いすまして鳥に当て、これを餌とするともいうが、[[ムササビ]]や[[モモンガ]]などの[[野衾]](のぶすま)のことであろう。
 
この種の話は、各地に伝わっている。しかし、タヌキの本場は何と言っても[[四国]]で、怪異といえば、原因はたいていタヌキの仕業である。全国的には八百八匹の眷属を従えていたとされている[[隠神刑部]]等が知られる。
 
;{{Anchor|赤殿中}}(あかでんちゅう)
:[[徳島県]][[板野郡]]堀江村(現・[[鳴門市]])。夜中、タヌキが赤いでんちゅう(袖のない半纏)を着た子どもに化けて背負うことをしつこくねだる。仕方なく背負うといかにも嬉しそうな様子で、その人の肩を叩くという<ref name="refawa">{{Cite book|和書|author=笠井新也|title=日本民俗誌大系|year=1974|publisher=[[角川書店]]|volume=第3巻|isbn=978-4-04-530303-6|pages=261-263頁|chapter=阿波の狸の話}}</ref>。
;{{Anchor|傘差し狸}}(かささしたぬき)
:徳島県[[三好郡]][[池田町 (徳島県)|池田町]](現・[[三好市]])。雨の降る夕方など、[[傘]]をさした人に化けて通行人を招く。傘を持ち合わせない人がうっかり傘に入れてもらうと、とんでもない所に連れていかれるという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|首吊り狸}}(くびつりたぬき)
:徳島県三好郡箸蔵村湯谷(現・三好市)。人を誘い出して首を吊らせるという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|小僧狸}}(こぞうたぬき)
:徳島県[[麻植郡]]学島村(現・[[吉野川市]])。小僧に化けて夜道を行く人を通せんぼし、怒った相手が突き飛ばしたり刀で斬ったりすると、そのたびに数が倍々に増えて一晩中人を化かすという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|坊主狸}}(ぼうずたぬき)
:徳島県[[美馬郡]]半田町(現・[[つるぎ町]])。坊主橋という橋を人が通ると、気づかぬ間に坊主頭にしてしまうという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|白徳利}}(しろどっくり)
:徳島県[[鳴門市]]撫養町小桑島字日向谷。狸が白徳利に化け、人が拾おうとしてもころころ転がって捕まえることができないという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|兎狸}}(うさぎたぬき)
: [[徳島県]]。[[吉野川]]沿いの高岡という小さな丘で、[[ウサギ]]に化けてわざとゆっくりと走り、それを見つけた人は格好の獲物と思って追いかけた挙句、高岡を何度も走り回る羽目になったという<ref name="refawa" />。
;{{Anchor|打綿狸}}(うちわただのき)
:[[香川県]]。普段は綿のかたまりに姿を変えて路傍に転がっているが、人が拾おうとして手を伸ばすと動き出し、天に上ってしまう<ref>{{Cite journal|和書|author=三宅周一|year=1939|month=8|title=妖怪語彙|journal=民間伝承|volume=4巻|issue=11号|pages=2頁|publisher=民間伝承の会}}</ref>。
 
=== 食用 ===