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しまあじ (会話 | 投稿記録)
{{誰}}が貼られた日時:2010年3月7日02:12(UTC)
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'''繁殖'''(はんしょく)とは[[生物]]の[[個体]]が増えることを指す。自然に増える時にも、人工的に増やす時にも、この言葉が用いられる。この項では、人工繁殖について扱う
 
==人工繁殖が行われる目的==
ある生物を飼育し、人工的に繁殖を行い、場合によっては累代飼育で代を重ねる、その目的は何なのか?この節では、人工繁殖の主たる目的を大まかに分類して説明する。なお、生物によって複数の目的に利用される種がいるということも留意されたい
 
===食糧生産===
[[狩猟]][[採集]]では安定した食料確保が出来できないため、古代より家畜や農作物の飼育・繁殖は行われてきた。最初は、野生の生物を特定の場所で飼養し、大きくしてから食べるだけだったと考えられている。その後、食料となる生物の育成方法が確立されてくると、繁殖も含めた「ライフサイクル」の全てを人の手で管理するようになっていった。そうなると、「品種改良」や「計画的な生産」という、現代の[[第一次産業]]でも行われているようなことが出来できるようになり、狩猟採集より効率的で確実な食糧生産が可能となった。食料生産を目的とした繁殖は、人々の暮らしを変えた。農業や畜産業が始まると、狩猟採集の移動生活から農村に定住する暮らしへと、生活スタイルを変えた地域が多く出現した。それが、文明と都市国家が成立するきっかけのひとつになったといわれている。
 
===使役動物===
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===原料用===
何らかの工業製品、加工品などを作る原料として、生物を飼育・栽培する場合もある。[[皮革]]製品には[[ウシ|牛]]、[[ウマ|馬]]、[[ヒツジ|羊]]など様々な動物の革が使われるが、それらは食用や使役用の動物から採る場合が多い。しかし、原料を採集することを主目的に飼育されている生物というのも、少なからず存在する。[[絹]]を採取する目的で[[蚕]]を飼育する、[[畳]]などの原料を得るために[[イグサ]]を栽培する、[[ムスク]]を得るために[[ジャコウジカ]]を飼育する、こういったケースの繁殖が具体例として当てはまる。
 
===実験動物===
理化学の実験のために、多種多様な[[実験動物]]が飼育栽培されている。科学的な比較実験などを行うために、特殊な環境化(無菌状態など)で飼われるケース、特殊な処置を施されて繁殖させるケース(放射線を浴びせたり、[[安定同位体]]を摂取させて飼育したり)など、特殊な飼育繁殖が行われる場合が多い。実験に都合がいいという理由だけでなく、他の近い種の生物にもみられる特徴を顕著に備えているという理由で飼育繁殖が行われる場合もある(詳しくは→[[モデル生物]])。代表的な実験動物として[[ハツカネズミ|マウス]]、[[ラット]]、[[ハムスター]]、[[ショウジョウバエ]]、[[メキシコサラマンダー]]、[[メダカ]]などがある。
 
===観賞用===
食用など実用的な目的の中から、観賞用に特化した改良種が作られたケース(例としては[[金魚]]など)もあれば、最初から観賞用として採集された野生生物から改良が進められた種もある(例としては[[グッピー]]など)。
 
[[花卉]]や[[園芸植物]]や[[観賞魚]]の多くは、観賞用のためだけに飼育栽培が行われている。変わった例として、[[トマト]]のように、当初は観賞用として導入されたが、次第に食用に使われるようになった生物もいる。こういった生物も歴史が古いものでは数千年以上人間に飼いならされた種も存在する([[金魚]]や[[バラ]]など)。
 
===愛玩動物===
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生物の保全というのは、環境も含めた[[生態系]]の保全であり、特定の生物種だけを保護することは自然保護ではないという批判的意見は多い。実際、生物が自然の中で暮らすには、環境の保全が不可欠であり、ある生物だけ増やすことは、種の保護としては緊急避難的な保護であるとされる場合が多い。たとえば、特定の魚だけ殖やす(最近は[[めだか]]で多い)ことを保護活動と謳うケースは多いが、いくら殖やしても汚い川に放しては生きていけない。こういったことから、生物の保全と環境の保全は両輪であるという考え方は根強い(この辺のことについて詳しく知りたい方は→[[生態系]]参照)
 
また、飼育することが保護に繋がるという名目で野生動物を捕獲することは、捕獲圧をけることになり、かえって種の保全に悪影響を与えているという批判もある{{誰|date=2010年3月}}。特に、アマチュア飼育者やそういった人に生物を提供する業者が捕獲することに対して多い批判である。ほかに、累代飼育を続ければ続けるほど、野生種と遺伝的・形態的に差異がある個体が増える傾向があるという事実からも、人工繁殖より自然の保護を優先させてこそ、種の保全や[[遺伝資源]]の保全に繋がるとする意見もある。
 
しかし、野生種は絶滅寸前、あるいは既に絶滅してしまったという生物の中には、累代で飼育・栽培されているからこそ生き残っているという種、言い換えれば、水槽や植木鉢など人工的な空間の中しか生息場所が残っていない種というものも少なからず存在し、それらが[[ペット]]としては非常にポピュラーである場合も多い。具体例として、[[アカヒレ]]や[[カナリア]]、[[ゴールデンハムスター]]が挙げられる。
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金銭目的だけの副業として、あくまでサイドビジネスとして、生物を繁殖させている人もいるが。愛玩動物や園芸植物のアマチュア繁殖家は、それを副業とするほどの飼育規模と設備とやる気を持つ人でも、ブリーダーであると同時に繁殖対象の生物の愛好家である場合が多い。単なる趣味から副業にまで発展したという人も多い。
 
また、金銭が主目的ではない、もしくは、金銭を得るつもりはないという目的意識で繁殖に取り組む人もアマチュアには多い。具体的に、あくまで個人的な趣味で楽しみながら繁殖を行う人、個人レベルでの種の保護への貢献といった意識から繁殖を行う人などが当てはまる。アマチュアの繁殖家はプロが手がけないようなマイナーな生物を繁殖させている場合も少なくない。一愛好家レベルかそれに近い規模での繁殖が行われている程度だが、マニアックな市場で流通している種というものも存在する。
 
この項目の以下では、プロのみならずアマチュアによる繁殖及び品種改良も盛んな種を、[[生物の分類]]別に紹介する。
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[[バラ]]、[[多肉植物]]、[[ハーブ]]、など
 
[[山野草]]、[[ラン科|蘭]]、[[水草]]、[[多肉植物]]、[[食虫植物]]などマイナーな種も多いマニアックな植物は、アマチュア繁殖家の活動が盛んな種が多い。アマチュアが繁殖させた個体が流通している場合や、アマチュア同士で繁殖した生物を交換する場合などが多く見られる。
 
植物の繁殖は[[挿し木]]、[[挿し芽]]といった無性生殖に拠る方法と、実から採取した[[種子]]をいて発育させる有性生殖による方法の二通りがある。前者は比較的容易だが、後者は特に[[ラン]]などにおいては開花までに数年といった時間がかかることがある。しかし前者の方法では遺伝的に全く同一の個体しか得られないため、趣味で品種改良する場合などは後者の方法による。
===哺乳類===
[[犬]]、[[ネコ|猫]]、[[ウサギ]]、[[モルモット]]、[[ハムスター]]など
 
一般家庭においては、これらの動物を趣味で繁殖させる人は少なく、逆に飼育個体に[[避妊]]手術を施すなどして避けられている場合が多い。その理由として哺乳類は短命な魚類や鳥類と異なり長命なので、頻繁に繁殖させて飼育個体を確保する必要があまりないこと、多産なので一度でも仔が産まれるとその引き取り手に困ったり、飼育者自らが飼うにしても一方的に、飼育下では増えまく一方あるため経済的な負担が大きいこと、特にイヌやネコの場合、[[品種]]や[[血統]]を重んじる価値観が成立しているので、一方の親の品種や血統が怪しい個体は価値が下がり、引き取り手を見つけ難いこと、などが挙げられる。またこうした理由から、哺乳類の繁殖はむしろ専門の[[ブリーダー]]の手にゆだねられる場合が多い。
 
なお、知名度が低かったり流通量が少なかったりするマニアックな[[エキゾチックアニマル]]はアマチュアの繁殖個体の取引が多い場合もある。
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===鳥類===
趣味で手がける鳥類の繁殖を[[巣引き]]という。生業として繁殖を行う[[家禽]]の場合、ほとんどが[[ニワトリ]]より大きな鳥を対象とするが、巣引きは[[愛玩鳥]]と呼ばれるスズメ大の小鳥を対象とする。[[キンカチョウ]]、[[カナリア]]、[[ジュウシマツ]]、[[ブンチョウ]]などが代表で、これらは一般家庭でも容易に巣引きができる。また孵化(ふか)してすぐに自前で採餌(さいじ、エサとり)ができる[[キジ科]]鳥類や[[ガン]]、[[カモ]]も巣引きがされることが多いが、こういった鳥の飼育には広い敷地や池を必要とするため、趣味でなされることはあまりない。
 
[[コキンチョウ]]を代表とする高級[[フィンチ]]は卵を産んでも自ら暖めることはないので、ジュウシマツを仮親として育てさせるなど技術面でのハードルが高い。これらも一般家庭で巣引きができるが、どちらかといえば専門のブリーダーが手がけるものである。
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カメ目では[[アカミミガメ|ミシシッピアカミミガメ]]などは養殖された個体が流通する。少なくない種でブリーダーにより殖やされた飼育下繁殖個体が流通する。
 
有鱗目(ゆうりんもく)ではヒョウモントカゲモドキやコーンスネークなどは主に飼育下繁殖個体が流通し、一般の飼育者でも繁殖成功例が多い。ブリーダーによっては交配などにより新しい品種を作出している。
 
===両生類===
[[カエル]]は卵の数が多いことや餌に生餌を必要とされることが多いことから趣味として繁殖させることは少ない。生物実験に供されるカエルも、そのほとんどが野外捕獲されたものである。唯一の例外として[[アフリカツメガエル]]があるが、総じて実験用に用いられるもので趣味で繁殖させているとはえない。
 
[[有尾目]]もまた、日本国内では野生個体が捕獲されペットとして流通していたので積極的に繁殖されることはなかった(イモリ属に関しては在来種の飼育下繁殖は難しくないものの、野生個体が安価で大量に流通することから飼育下繁殖個体の流通は少ない)。外国産の種に関しては個体数減少により絶滅が危惧されているので、近年は飼育下繁殖個体が流通する種もいる。メキシコサラマンダーなどは、飼育下繁殖個体のみ流通する。
 
===魚類===
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==繁殖の行われ方==
===累代飼育===
何世代にも渡り代を重ねて飼育することである。累代飼育が可能な種はある程度生態がわかっていて飼育しやすい場合が多いが累代飼育が行われているからといって生態が解りき完全にわかっている動物限らない。
===CB(キャプティブ・ブリード)===
交配から生まれるまで、人間の管理下で作られた子供のことである。これに対して、野生個体は'''「WC(ワイルドコート)」'''と呼ばれる。何世代も飼われている動物の子ではない野生動物を飼育し、飼育下で交配して繁殖させた子供も当てはまる。野生動物と飼育された動物の交配で出来た子も、飼育下で繁殖させた場合は当てはまる。
 
===CH(キャプティブ・ハッチ)===
妊娠・抱卵している野生の個体を捕獲して、ファーム(養殖場)で産卵・孵化させた個体のこと、漁業でいうところの半養殖とほとんど同じものである。WCより負荷は少ないものの、野生生物に対する捕獲圧を掛けるものである。単に他の方法で個体を得るより安上がりだからという理由でこれが行われることも多いが飼育法・繁殖法に不明な点が多いということもある。
 
===半養殖===
稚魚や卵を捕まえて、成体になるまで育ててから利用する方法。
CH同様、これが行われる種は、飼育法・繁殖法に不明な点が多いという場合が多く、特に産卵方法や卵・稚魚の育成法が不明である場合が多い。半養殖されている水産物で代表的なものは[[マグロ]]、[[ウナギ]]が有名である。(※注・実用化はされていないものの、マグロの完全養殖には成功している)
 
== 関連項目 ==