「杏林大病院割りばし死事件」の版間の差分

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== 影響 ==
事件後、この事件を契機として、[[医療崩壊]]が大きく進行した<ref name="nikkeimedical">「割りばし事件」に対する報道はペンの暴力 (日経メディカルオンライン 2009.6.18)</ref>。それまで、大病院の[[勤務医]]は[[労働条件]]に見合わない低収入や過酷な勤務状況に対しても、不満を自ら封印して社会のために貢献してきたが、[[善意]]に基づいて行った[[医療行為]]の結果が思わしくなかったという理由で、[[刑事責任]]を問われる事態が起こり、現場から立ち去っていった<ref name="nikkeimedical" />。特に[[救急医療]]においては、日本ではもともと[[救急専門医]]が少なく、こわごわと働く非救急専門医によって支えられてきた現状があった<ref name="komatsu" />が、この事件を期に、医師は自分も[[犯罪者]]として糾弾される可能性があると考えるようになり、専門外の診療を避ける傾向が強まった<ref name="asahi081121">「謝罪して欲しい」両親ら痛切 男児割りばし死亡事件 (朝日新聞2008.11.21)</ref>。また、財政上、24時間あらゆる事態に即座に対応できる体制にある病院は存在せず、多くの中小の救急病院は、紛争を恐れて、救急医療から撤退した<ref name="komatsu">小松秀樹:『医療の限界』(新潮社)</ref>。このような医師への刑事責任追及に対して[[報道機関]]の果たした役割は極めて大きく、割り箸事件についてのマスコミの[[報道]]こそが今日の[[医療]]の危機的状況を作り出したといわれている<ref name="nikkeimedical" />。また、[[2009年]][[12月28日]]放送の[[テレビ朝日]]系列『[[中居正広]]の10文字で解説できたら格好いい!ニュースの素朴なギモン』では、当事件における遺族の言動や医師の起訴、遺族寄りの報道を続けたマスコミの姿勢を、出演者一同が「[[福島県立大野病院産科医逮捕事件]]」と並んで'''「日本における医療崩壊の最大の元凶の一つ」'''と明確に断じたうえで、男児の両親を大野病院事件で死亡した女性の父親とともに「彼らが[[冤罪]]事件の加害者であると同時に、[[モンスターペイシェント]]であることに疑いの余地は無い」と手厳しく批判した
 
また、本件等での刑事事件化は[[医学研究]]にも深刻な影響を及ぼしている。現在、刑事責任につながる可能性があるとの思いから、[[学会]]や[[医学雑誌]]で[[症例報告]]、[[合併症]]報告、[[副作用]]報告が激減している<ref name="vol4">医療維新スペシャル企画 “割りばし事件”◆元杏林大教授・長谷川誠氏インタビュー◆Vol.4 (m3.com, 2009.7.22)</ref>。もし[[報道機関|マスコミ]]がその場にいれば「過失あり」と報道されかねないため、学会に行っても相手の間違いを指摘する質問さえしにくい雰囲気になっているという<ref name="vol4" />。医師同士の医学的経験・情報の共有を阻害する可能性が示唆されている<ref name="vol4" />。
 
 
== その後の経過 ==