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2011年4月9日 (土) 15:30時点における版
津波てんでんこ(つなみてんでんこ)とは、日本の東北地方の三陸海岸地域にある津波防災伝承の一つである。「命てんでんこ」ということもある。
意味
「てんでんこ」とは「てんでんばらばら」という意味であり、「津波が来たら、肉親に構わず、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろ」ということがこの伝承の本来の意味である。津波は到達速度が速いため、肉親等に構っていると逃げ遅れて共倒れになってしまう。一族を存続させるためにも、自分一人だけでもとにかく早く高台へと逃げよ、ということであるが、「自分の命は、自分の責任で守れ」ということも含意しているとされる。
成立の経緯
この伝承の成立経緯については不明であるが、古来より何度も津波の来襲を受け、リアス式海岸のため被害の大きかった三陸地域において、津波から身を守り、一族を全滅から防ぐ知恵として言い伝えられてきたものと考えられる。
岩手県大船渡市三陸町出身の山下文男は、自身の昭和三陸地震津波体験から、津波災害史研究者としてこの伝承を広め、三陸地域の防災教育にも採り入れられるようになっていった。
実例
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による津波において、釜石市立釜石東中学校では、この伝承を基に、地震後、生徒たちが教師からの指示も待たずに各自高台へと避難した。その結果、校舎が津波に飲み込まれたにも関わらず、登校者全員の無事が確認された[1]。
課題
自力での避難が困難な高齢者等のいわゆる「災害弱者」の救済策が課題とされる。
脚注
- ^ “防災の教え、命救った 釜石「津波てんでんこ」生かす 小中学生、高台へ一目散”. 北海道新聞. (2011年3月27日) 2011年4月10日閲覧。
参考文献
- 山下文男『津波てんでんこ―近代日本の津波史』新日本出版社、2008年。ISDN 9784406051149