「守備率」の版間の差分

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選手が守備に関わった回数のうち、[[失策]]をしなかった率を表す。次式で求める。
 
::{{Indent|'''守備率'''=([[刺殺]]+[[補殺]])÷([[刺殺]]+[[補殺]]+[[失策]])=(刺殺+補殺)÷ [[守備機会]]}}
 
守備率が高いほど、守備機会に対して失策する確率が低い選手であることを示している。
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=== アウト寄与率・レンジファクター ===
'''アウト寄与率'''(レンジファクター、RF: Range factor)とは、[[1977年]]にセイバーメトリクスの始祖、[[ビル・ジェームズ]]によって提唱された、ある選手が1試合平均(9イニング換算)でいくつのアウトに関与したかを示す指標である。野球の守備はアウトを積み重ねることが目的であるので、寄与率によって守備時における選手の貢献度を数値的に理解することができる。守備範囲が広く、安打性のあたりをアウトにできる選手ほど数値が高くなる傾向にある。アメリカ・メジャーリーグの公式記録にもレンジファクター(RF)が採用されている。
 
アメリカ・メジャーリーグの公式記録にもレンジファクター(RF)が採用されている。
 
算出方法は以下の通り。
::アウト寄与率(RF)=(刺殺+補殺)÷ 守備イニング数 × 9
*投手陣の奪三振数に左右される面はあるものの、同一リーグ内の同じポジションの選手どうしの比較としてはある程度有効な指標である。たとえば、あるチームの遊撃手Aの寄与率が4.50であり、別のチームの遊撃手Bの寄与率が5.00ならば、BはAよりも「優秀な遊撃手」であろうという判断の材料になる。
: 同一ポジションの複数の選手を比較する場合、守備イニング数が選手によって違い、取ったアウト数では守備力の優劣を比較できないため、「守備についたイニング数」に占める「取ったアウト数」の比率によって守備力を比較する指標である。守備範囲が狭い選手と、守備範囲が広く守備力が飛びぬけている選手では数値の差が大きくなり、同じポジションの選手どうしの守備力を相対的に比較するのに適している。
*例: 2人の選手の守備成績を比較して'''守備率'''と'''レンジファクター'''の違いを例示する。
 
::{{Indent|'''アウト寄与率'''(RF)=(刺殺+補殺)÷ 守備イニング数 × 9}}
::     試合 守備機会  刺殺  補殺  殺数 失策  併殺 <span style="color:red">守備率 レンジファクター</span>
:: A選手 144   640   200 + 434 = 634   6    80  <span style="color:red">.991    4.40</span>
::<u> B選手 144   720   235 + 470 = 705  15   100  <span style="color:red">.979   4.90</span>   .</u>
::  差    0    80    35   36    71    9    20 -.012   0.49
 
*投手陣の奪三振数に左右される面はあるものの、同一リーグ内の同じポジションの選手どうしの比較としてはある程度有効な指標である。たとえば、あるチームの遊撃手Aの寄与率が4.50であり、別のチームの遊撃手Bの寄与率が5.00ならば、BはAよりも「優秀な遊撃手」であろうという判断の材料になる。同一ポジションの複数の選手を比較する場合、守備イニング数が選手によって違い、取ったアウト数では守備力の優劣を比較できないため、「守備についたイニング数」に占める「取ったアウト数」の比率によって守備力を比較する指標である。守備範囲が狭い選手と、守備範囲が広く守備力が飛びぬけている選手では数値の差が大きくなり、同じポジションの選手どうしの守備力を相対的に比較するのに適している。
:(※ 両選手は2人とも遊撃手とする。同一リーグの異なるチームで全試合にフル出場し、守備イニング数も同じとする。同一リーグの同一ポジションの場合、そのポジションの守備範囲へ打たれる打球の数には大きな違いが無い。)
 
:例:2人の選手の守備成績を比較して'''守備率'''と'''レンジファクター'''の違いを例示する(※ 両選手は2人とも遊撃手とする。同一リーグの異なるチームで全試合にフル出場し、守備イニング数も同じとする。同一リーグの同一ポジションの場合、そのポジションの守備範囲へ打たれる打球の数には大きな違いが
:この例では、守備率の1位( .991)はA選手だが、2位のB選手の方が、守備の成績・実績が良く守備力が高いことが数字に表れている。
: 守備の能力が表れる数値として最も重要視され一般的に最も評価されている指標は、「守備機会」の数である。この例ではA・B両遊撃手はいずれも全試合に出場し守備イニング数も同じであるが、B選手の方が守備機会が80回多い。このことは、遊撃の守備範囲へ打たれた打球に対し、A選手よりもB選手の方が打球に追い付いており、B選手はA選手よりも守備範囲が広い(守備時のスタート、スピードが速く、フットワークが良い)、または、B選手は試合の状況・投手の傾向と調子・打者の傾向と調子・捕手の配球(遊撃手と二塁手は捕手の出すサインが見える)などによって打球の方向を予想し守備位置を変更する判断力が良いことが示されている。
:A選手では打球に追い付かず安打になったような打球に、B選手は約80回追い付いてアウトにしたことが数字に表れる。その結果、打者に遊撃へ打たれる回数が同じでも、打球に追い付かない(守備範囲が狭い)A選手は守備機会が少なく、打球に追い付く(守備範囲が広い)B選手は守備機会が多くなる。
: また、内野守備の評価では、「補殺」の数およびアウトにした総数(刺殺数+補殺数)が重視されている。B選手は打者をアウトにした数がA選手よりも71回多い。失策数はA選手の6失策に対してB選手は2倍以上の15失策したため守備率はやや低いが、アウト獲得数はB選手の方がA選手より71回多い。また、併殺参加数もB選手の方が20回多い。
: すなわち、B選手はA選手よりも多くのアウトを獲得できる遊撃手であり、守備でチームの失点を減らすことによって、チームの勝利へ貢献していることがわかる。
:アウト寄与率(レンジファクター)は、A選手が4.40であるのに対してB選手は4.90と高い数字である。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center"
:なお、プロ野球では、打者の打率3割と2割5分(平均約500打数)の年間安打数の違いは約25本であるため、打者をアウトにした数が71回多いB選手の守備の貢献度は高く、相手チームの3人の3割打者を打率2割5分台に抑えるのと同等の効果に相当する。
::     ! !! 試合  !! 守備機会   !! 刺殺  !! !! 補殺  !! !! 殺数  !! 失策   !! 併殺 <span !! style="color:red"> | 守備率 レンジファクター</span> !! style="color:red" | レンジファクター
|-
! A選手
| 144 || 640 || 200 || + || 434 || = || 634 || 6 || 80 || style="color:red" | .991 || style="color:red" | 4.40
|-
! B選手
| 144 || 720 || 235 || + || 470 || = || 705 || 15 || 100 || style="color:red" | .979 || style="color:red" | 4.90
|- style="border-top:2px solid #888"
! 差
| 0 || 80 || 35 || || 36 || || 71 || 9 || 20 || -.012 || 0.49
|}
 
: このことが例では、守備率や失策数にの1位( .991)A選手だが、2位のB選手の方が、守備成績・実績がく守備力高いことが数字に表れにく典型的な例の一つである。
:野球チームでは、守備率は高いが守備力がやや低く(守備範囲が狭く)守備機会が少ないA選手よりも、守備率はやや低いが守備力が高く(守備範囲が広く)打者をより多くアウトにするB選手を起用する方がチームの失点が減少し試合に勝てる確率が上昇する。
 
: 守備の能力が表れる数値として最も重要視され一般的に最も評価されている指標は、「守備機会」の数である。この例ではA・B両遊撃手はいずれも全試合に出場し守備イニング数も同じであるが、B選手の方が守備機会が80回多い。このことは、遊撃の守備範囲へ打たれた打球に対し、A選手よりもB選手の方が打球に追い付いており、B選手はA選手よりも守備範囲が広い(守備時のスタート、スピードが速く、フットワークが良い)、または、B選手は試合の状況・投手の傾向と調子・打者の傾向と調子・捕手の配球(遊撃手と二塁手は捕手の出すサインが見える)などによって打球の方向を予想し守備位置を変更する判断力が良いことが示されている。A選手では打球に追い付かず安打になったような打球に、B選手は約80回追い付いてアウトにしたことが数字に表れる。その結果、打者に遊撃へ打たれる回数が同じでも、打球に追い付かない(守備範囲が狭い)A選手は守備機会が少なく、打球に追い付く(守備範囲が広い)B選手は守備機会が多くなる。
*ただし、1試合のアウト数は通常は27個でありどのチームもほぼ同じであるため、優秀な守備力をもつ選手ばかりのチームも守備力の劣る選手ばかりチームも、チームのレンジファクターの総合計はほぼ同じ数字である。
 
: また、内野守備の評価では、「補殺」の数およびアウトにした総数(刺殺数+補殺数)が重視されている。B選手は打者をアウトにした数がA選手よりも71回多い。失策数はA選手の6失策に対してB選手は2倍以上の15失策したため守備率はやや低いが、アウト獲得数はB選手の方がA選手より71回多い。また、併殺参加数もB選手の方が20回多い。
::チームの年間総アウト数 ÷ チームの年間守備イニング数 = どのチームもほぼ同じ
 
:すなわち、B選手はA選手よりも多くのアウトを獲得できる遊撃手であり、守備でチームの失点を減らすことによって、チームの勝利へ貢献していることがわかる。アウト寄与率(レンジファクター)は、A選手が4.40であるのに対してB選手は4.90と高い数字である。なお、プロ野球では、打者の打率3割と2割5分(平均約500打数)の年間安打数の違いは約25本であるため、打者をアウトにした数が71回多いB選手の守備の貢献度は高く、相手チームの3人の3割打者を打率2割5分台に抑えるのと同等の効果に相当する。
*守備位置が違う選手の寄与率を比較することは無意味である。近辺に打球が飛んでこなければ処理しようがない遊撃手と、守備機会の9割以上が三振の投球を捕球することによる捕手の寄与率の数値を比較して、どちらがアウトに貢献しているかを評価することは無意味である。
*日本では守備イニング数は公式記録として発表されていないため算出が難しく、そのため出場試合数で代用した簡易版レンジファクターが用いられることも多い。
 
:このことが、守備率や失策数には守備力の良否が表れにくい典型的な例の一つである。野球チームでは、守備率は高いが守備力がやや低く(守備範囲が狭く)守備機会が少ないA選手よりも、守備率はやや低いが守備力が高く(守備範囲が広く)打者をより多くアウトにするB選手を起用する方がチームの失点が減少し試合に勝てる確率が上昇する。
::簡易RF =(刺殺+補殺)÷ 出場試合数
 
*ただし、1試合のアウト数は通常は27個でありどのチームもほぼ同じであるため、優秀な守備力をもつ選手ばかりのチームも守備力の劣る選手ばかりチームも、チームのレンジファクターの総合計はほぼ同じ数字である(チームの年間総アウト数 ÷ チームの年間守備イニング数 = どのチームもほぼ同じ)
:アメリカでは、メジャーリーグの公式記録は守備イニングによるFRを単に"RF"と表示しているが、スポーツメディアは守備イニングによるFRを"RF/9"(9イニングでのRF)と表示し、簡易RFを"RF/G"(Game数によるRF)と表示している。
 
:しかし簡易RFは、出場した試合ではほぼフルイニングを守る選手どうしの比較には簡便で有効であるが、途中出場の多い選手の守備力を表すには不適切である。
*守備位置が違う選手の寄与率を比較することは無意味である。近辺に打球が飛んでこなければ処理しようがない遊撃手と、守備機会の9割以上が三振の投球を捕球することによる捕手の寄与率の数値を比較して、どちらがアウトに貢献しているかを評価することは無意味である。
 
*日本では守備イニング数は公式記録として発表されていないため算出が難しく、そのため出場試合数で代用した簡易版レンジファクターが用いられることも多い。
 
::{{Indent|簡易RF =(刺殺+補殺)÷ 出場試合数}}
 
:アメリカでは、メジャーリーグの公式記録は守備イニングによるFRを単に"RF"と表示しているが、スポーツメディアは守備イニングによるFRを"RF/9"(9イニングでのRF)と表示し、簡易RFを"RF/G"(Game数によるRF)と表示している。しかし簡易RFは、出場した試合ではほぼフルイニングを守る選手どうしの比較には簡便で有効であるが、途中出場の多い選手の守備力を表すには不適切である。
 
このようにレンジファクター(RF)はメジャーリーグの公式記録に用いられるが欠点もあるため、投手の奪三振率やゴロ/フライ傾向、投手の左右の投球回数割合、チーム守備力の影響などによる偏りの補正を行った'''[[RRF(Relative Range Factor)]]'''が考案され用いられている。
 
=== ゾーンレーティング ===
{{Main|ゾーンレーティング}}
'''ゾーンレーティング'''(ZR: Zone Rating)とは、レンジファクター(RF)の欠点を補正するために考案された守備指標。守備範囲内に飛んできた打球を処理できたかどうかを示す数値。あらゆる打球およびプレーをビデオ等に記録して解析する。守備範囲であるか否かの判断はメジャーリーグのデータ統計を行うStats社によって行われているため、個人で算出することはできない。
 
アメリカのスポーツジャーナリズムは、メジャーリーグの守備成績の公式記録であるレンジファクター(RF)と共に、このゾーンレーティング(ZR)の数値を一般的に公表している。[[さらにこの数値を改良した'''アルティメットゾーンレーティング|(ゾ'''(UZR)、UZRを150試合に当てはめたUZR/150という指標もあり、スポンレツジャティングの詳細)]]ナリズムが数値を公表している。
 
さらにこの数値を改良した'''アルティメットゾーンレーティング'''(UZR)、UZRを150試合に当てはめたUZR/150という指標もあり、スポーツジャーナリズムが数値を公表している。
 
=== プラス・マイナス・システム ===
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=== 守備防御点 ===
'''守備防御点'''(DRS: Defensive Runs Saved)は、プラス・マイナス・システムを発展させた指標。同一ポジションの野手の平均的な守備の数値と比較し、個々の選手が1シーズンに失点を何点防いだか・招いたかを数値化した指標である。[[守備防御点|(守備防御点の詳細)]]
 
=== 守備効率 ===
'''守備効率'''(DER: Defensive Efficiency Rating)とはインプレーとなった打球をチーム全体でどれだけアウトにしたかという割合を表す。選手個人の守備成績ではなく、チームごとの守備力を比較する際に使われる指標である。
 
DERは、メジャーリーグの公式記録に採用されている。算出方法は以下の通り
 
算出方法は以下の通り。
:::守備効率 =(ゴロアウト+フライアウト+併殺)÷ 総打球数
*投手陣の奪三振数に左右される。
 
:::{{Indent|守備効率 =(ゴロアウト+フライアウト+併殺)÷ 総打球数}}
 
*投手陣の奪三振数に左右される。
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== 脚注 ==
{{Reflist}}
<div class="references-small"><references/></div>
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== 関連項目 ==
* [[野球の各種記録]]
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== 外部リンク ==
*[http://mlb.mlb.com/mlb/official_info/baseball_basics/abbreviations.jsp MLB Official Info(英語)]
:**メジャーリーグの公式記録項目の解説。セイバーメトリクスに基づく指標が公式記録に複数含まれている。
*[http://sports.espn.go.com/mlb/news/story?page=stats/glossary MLB Statistics Glossary, ESPN(英語)]
:**ESPNが公表するメジャーリーグの記録・指標の解説
*[http://sportsillustrated.cnn.com/baseball/mlb/stats/2010/fielding/ml_8_byRANGE_FACTOR.html MLB Fielding Leaders, Sports Illustrated (英語)]
:**CNN/Sports Illustratedによるメジャーリーグの守備成績 (summary)
*[http://espn.go.com/mlb/stats/fielding/_/position/ss/sort/rangeFactor MLB Fielding Stats, ESPN (英語)]
:**ESPNによるメジャーリーグの守備成績 (summary)
*[http://msn.foxsports.com/mlb/sortableStats?stat=ZR&table=defense&dir=descending&timeframe=&start=1&end=50&selectedSeason=2010&league=MLB&position=2B&Go=Go MLB Fielding Stats, MSN (英語)]
:**MSNによるメジャーリーグの守備成績 (summary)