「氷河地形」の版間の差分

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== 侵食作用による地形 ==
; a''' [[圏谷]]'''
 : 圏谷とは、山地の屋根近くの谷頭に形成された安楽椅子状にくぼんだ谷地形で圏谷氷河の侵食でつくられたものである。典型的な圏谷では、谷頭と側方の急斜面は一般に崩壊し、谷底は氷河によって滑らかにけずられて[[盆地]]状をなし、盆地の出口には弓なりに延びる[[堤防]]状の[[モレーン]]や岩盤のしきいがある。[[日本]]では圏谷よりも[[ドイツ]]語の[[カール]](Kar)がよく使われている。1902年、当時の[[東京大学]]の[[地理学]]教室の創設者である[[山崎直方]]が[[飛騨山脈]]北部にカールを発見したことが、この言葉の普及の原因になったようである([[山崎カール]])
 
; b''' トラフ谷'''([[U字谷]])
 圏谷とは、山地の屋根近くの谷頭に形成された安楽椅子状にくぼんだ谷地形で圏谷氷河の侵食でつくられたものである。典型的な圏谷では、谷頭と側方の急斜面は一般に崩壊し、谷底は氷河によって滑らかにけずられて[[盆地]]状をなし、盆地の出口には弓なりに延びる[[堤防]]状の[[モレーン]]や岩盤のしきいがある。[[日本]]では圏谷よりも[[ドイツ]]語の[[カール]](Kar)がよく使われている。1902年、当時の[[東京大学]]の[[地理学]]教室の創設者である[[山崎直方]]が[[飛騨山脈]]北部にカールを発見したことが、この言葉の普及の原因になったようである。([[山崎カール]])
: [[トラフ]]は細長い箱、ふね、細長い窪地を意味し、谷氷河の侵食によってできた谷地形である。横断面がU字に近いことからU字谷ともよばれる。河川がつくる[[V字谷]]とはちがい、幅ひろい谷底と急傾斜の谷壁よりなることが特徴である。トラフ谷は三つのタイプに分けられ、(1) 山地にある氷河発生前の[[河谷]]に谷氷河が流れてつくられたもので、谷頭はしばしば圏谷に終わるもの、(2) [[アイスランド]]型とよばれるもので、氷冠や[[氷床]]の縁辺部が[[山地]]の稜線の低いところをしきいとして氷が塧れ出すとそこにこのタイプのトラフができ、塧流氷河谷や[[フィヨルド]]はこの典型的な例である。最後に、(3) [[全通谷]](スルー・ヴァレー)である。トラフ谷が[[山脈]]を貫通していて、現在はたがいに反対方向に流れる二つの河の源流部になっている。日本のトラフ谷は、[[北アルプス]]の[[槍沢]]が谷氷河によって形成された、といわれている。
 
; c''' 流線型の突起'''
b'''トラフ谷'''([[U字谷]])
: [[氷食]]谷底や氷床や氷冠におおわれていた岩盤上には、圏谷やトラフ谷にくらべはるかに小規模な氷食地形がみられる。氷河の流動方向に対し、上流側が丸みを帯び傾斜がゆるく、下流側に先細り傾斜が急で、しばしば氷河によって岩塊がもぎとられ凹凸になっており、このような特質から氷河の流れを知ることができる。また、群をなしていることが多い。[[羊背岩]](羊群岩ともいう)とよばれるものはこの種の地形の一つで、節理の発達したゆか岩の表面に現れる流線型の地形で表面に氷河に取り込まれた岩屑による引っ掻き傷([[擦痕]])が残されている。
 
[[トラフ]]は細長い箱、ふね、細長い窪地を意味し、谷氷河の侵食によってできた谷地形である。横断面がU字に近いことからU字谷ともよばれる。河川がつくる[[V字谷]]とはちがい、幅ひろい谷底と急傾斜の谷壁よりなることが特徴である。トラフ谷は三つのタイプに分けられ、①山地にある氷河発生前の[[河谷]]に谷氷河が流れてつくられたもので、谷頭はしばしば圏谷に終わるもの、②[[アイスランド]]型とよばれるもので、氷冠や[[氷床]]の縁辺部が[[山地]]の稜線の低いところをしきいとして氷が塧れ出すとそこにこのタイプのトラフができ、塧流氷河谷や[[フィヨルド]]はこの典型的な例である。最後に、③[[全通谷]](スルー・ヴァレー)である。トラフ谷が[[山脈]]を貫通していて、現在はたがいに反対方向に流れる二つの河の源流部になっている。日本のトラフ谷は、[[北アルプス]]の[[槍沢]]が谷氷河によって形成された、といわれている。
 
c'''流線型の突起'''
 
[[氷食]]谷底や氷床や氷冠におおわれていた岩盤上には、圏谷やトラフ谷にくらべはるかに小規模な氷食地形がみられる。氷河の流動方向に対し、上流側が丸みを帯び傾斜がゆるく、下流側に先細り傾斜が急で、しばしば氷河によって岩塊がもぎとられ凹凸になっており、このような特質から氷河の流れを知ることができる。また、群をなしていることが多い。[[羊背岩]](羊群岩ともいう)とよばれるものはこの種の地形の一つで、節理の発達したゆか岩の表面に現れる流線型の地形で表面に氷河に取り込まれた岩屑による引っ掻き傷([[擦痕]])が残されている。
 
== 堆積作用による地形 ==
; a''' 氷堆積([[モレーン]]'''
: 氷堆積([[モレーン]])は、氷河によって削りとられた[[漂礫土]](テイル)または[[氷礫土]]などとよばれる岩屑がつくる地形である。氷河堆積物のうちで、過去の氷河の挙動を探るためにもっとも重要なものは氷堆積である。氷河はその底や側壁の接触面から岩石を搔き取ったり(プラッキング)、氷河におおわれていない側壁上部や[[ヌナタク]]から転落する大小の岩屑を乗せて下流に運ぶ。側壁から転落した岩屑は氷河の両岸に列をなして堆積し、側堆積(ラテラルモレーン)とよばれる。この岩屑は徐々に下流に移動し、二つの氷河が合流すると片側の岩屑は氷河の中央に出るので、主谷の氷河上には合流する支谷の氷河の数にみあった岩屑の縞模様ができることになる。
 
: 氷河の末端では、氷河の前進量と消耗量が釣り合うと氷河の前進は止まり、末端部には氷体に取り込まれていた岩屑や氷河の表面に押し出された岩屑が堆積する。これを終堆積、端堆積(末端モレーン)という。終堆積からは、氷河の拡大した範囲を知ることができる。
氷堆積([[モレーン]])は、氷河によって削りとられた[[漂礫土]](テイル)または[[氷礫土]]などとよばれる岩屑がつくる地形である。氷河堆積物のうちで、過去の氷河の挙動を探るためにもっとも重要なものは氷堆積である。氷河はその底や側壁の接触面から岩石を搔き取ったり(プラッキング)、氷河におおわれていない側壁上部や[[ヌナタク]]から転落する大小の岩屑を乗せて下流に運ぶ。側壁から転落した岩屑は氷河の両岸に列をなして堆積し、側堆積(ラテラルモレーン)とよばれる。この岩屑は徐々に下流に移動し、二つの氷河が合流すると片側の岩屑は氷河の中央に出るので、主谷の氷河上には合流する支谷の氷河の数にみあった岩屑の縞模様ができることになる。
; b''' [[エスカー''']]
 
[[: エスカー]]は、長い[[堤防]]状の地形で、氷河中の[[トンネル]]状水路に淘汰のよい[[成層]]した砂や礫が堆積し、氷河がとけ去ったあと、長い丘となって残る。丘の高さは20~30m、長さは数kmにも達する。エスカーの延びの方向は、ほぼ氷河の流れの方向を示している。
氷河の末端では、氷河の前進量と消耗量が釣り合うと氷河の前進は止まり、末端部には氷体に取り込まれていた岩屑や氷河の表面に押し出された岩屑が堆積する。これを終堆積、端堆積(末端モレーン)という。終堆積からは、氷河の拡大した範囲を知ることができる。
; c''' [[氷縞粘土]](ヴァーヴ)'''
 
[[: 氷縞粘土]]とは、氷床の末端にできた[[氷河湖]]の堆積物である。一枚の年層は、ほぼ数ミリの厚さを有する。氷河湖は、氷床の後退にともないつぎつぎと新しく形成され、古いものは消滅していく。[[スウェーデン]]では、氷縞粘土の花粉分析から、氷床が後退するにつれ、草原から森林へと移りかわる植生の変化が明らかにされている。
b'''エスカー'''
 
[[エスカー]]は、長い[[堤防]]状の地形で、氷河中の[[トンネル]]状水路に淘汰のよい[[成層]]した砂や礫が堆積し、氷河がとけ去ったあと、長い丘となって残る。丘の高さは20~30m、長さは数kmにも達する。エスカーの延びの方向は、ほぼ氷河の流れの方向を示している。
 
c'''氷縞粘土(ヴァーヴ)'''
 
[[氷縞粘土]]とは、氷床の末端にできた[[氷河湖]]の堆積物である。一枚の年層は、ほぼ数ミリの厚さを有する。氷河湖は、氷床の後退にともないつぎつぎと新しく形成され、古いものは消滅していく。[[スウェーデン]]では、氷縞粘土の花粉分析から、氷床が後退するにつれ、草原から森林へと移りかわる植生の変化が明らかにされている。
 
<!-- == 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}} -->
== 参考文献 ==
*『氷河時代と人類』 酒井潤一・熊井久雄・中村由克著 共立出版株式会社 1985.8.25
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*『氷河時代』 小林国夫・阪口豊著 岩波書店 1982.6.23
 
== 関連項目 ==
<!-- {{Commonscat|Glacial landform}} -->
* [[氷河]]
* [[侵食]]
43 ⟶ 36行目:
* [[マッターホルン]]
 
== 外部リンク ==
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{{節stub}} <!-- {{Cite web}} -->
 
{{地形}}
{{geoGeo-stub}}
 
{{DEFAULTSORT:ひようかちけい}}
[[Category:氷河地形|*]]