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[[ファイル:Uemura Shoen.jpg|thumb|上村松園]]
'''上村 松園'''（うえむら しょうえん、本名：'''上村 津禰（つね）'''（常子（つねこ）とも）、[[明治1875年]]8年（[[1875年明治]]8年）[[4月23日]] - [[昭和1949年]]24年（[[1949年昭和]]24年）[[8月27日]]）は、[[日本画|日本画家]]。明治の[[京都府|京都]][[下京区|下京（しもぎょう）]]に生まれ育ち、女性の目を通して「[[美人画]]」を描いた。同じく日本画家の[[上村松篁]]（しょうこう）は息子、[[上村淳之]]（あつし）は孫にあたる。
== 画風 ==
=== 情念 ===
気品あふれる作品群の中で、特異な絵が2枚ある。「花がたみ」と「焔（ほのお）」である。[[大正1915年]]4年（[[1915年大正]]4年）の「花がたみ」の題材、[[謡曲]]「[[花筐]]（はながたみ）」は、[[継体天皇]]の皇子時代に寵を受けた「[[照日の前]]」が形見の花筐を手に都に上り、紅葉狩りに行き逢った帝の前で舞うという内容である。208×127cmの大作である。松園は能面「十寸髪（ますがみ）」を狂女の顔の参考にしたという。
大正7年（[[1918年]]（大正7年）の「焔」の題材、謡曲「[[葵上]]」は、『[[源氏物語]]』に登場する[[六条御息所]]の生霊を桃山風俗にて描いた、松園言うところの「数多くある絵のうち、たった一枚の凄艶な絵」である（誇り高い六条御息所は[[光源氏]]の正妻、[[葵の上]]への屈辱と嫉妬から生霊になり、葵の上を取り殺してしまう）。後れ毛を噛む女の着物には藤の花と蜘蛛の巣が描かれている。189×90cmの大作で、大変な迫力をもって見る者に迫る絵である。
== 略歴 ==
* [[明治1875年]]8年（[[1875年明治]]8年） - 京都の[[下京区]]四条通御幸町の葉茶屋「ちきり屋」の次女として生まれる。
*明治20年（ [[1887年]]（明治20年） - [[京都府画学校]]（現：[[京都市立芸術大学]]）に入学、四条派の鈴木松年（すずきしょうねん）に師事。
*明治23年（ [[1890年]]（明治23年） - 第3回内国勧業博覧会に「四季美人図」を出品、一等褒状受賞（この絵を、来日中であった[[ヴィクトリア (イギリス女王)|ヴィクトリア女王]]の三男[[アーサー (コノート公)|アーサー]]王子が購入し話題となった）。
*明治26年（ [[1893年]]（明治26年） - [[幸野楳嶺]]（こうのばいれい）に師事。火事のため高倉蛸薬師に転居。市村水香に漢学を学び始める。
*明治28年（ [[1895年]]（明治28年） - 楳嶺の死去にともない、[[竹内栖鳳]]に師事。
*明治35年（ [[1902年]]（明治35年） - 息子信太郎（松篁）が誕生。
*明治36年（ [[1903年]]（明治36年） - 車屋町御池に転居。
* [[大正1914年]]3年（[[1914年大正]]3年） - 間元町竹屋町に画室竣工。金剛巌に謡曲を習い始める。
* [[昭和1934年]]9年（[[1934年昭和]]9年） - 母、仲子没。
*昭和16年（ [[1941年]]（昭和16年） - [[帝国芸術院]]会員。
*昭和20年（ [[1945年]]（昭和20年） - 奈良平城の唳禽荘に疎開。
*昭和23年（ [[1948年]]（昭和23年） - [[文化勲章]]受章（日本人女性として初）。
*昭和24年（ [[1949年]]（昭和24年） - 逝去。[[従四位]]に叙される。享年74。[[法名 (浄土真宗)|法名]]は、寿慶院釋<small>尼</small>松園。
== 代表作品 ==
=== 古典・故事 ===
* [[清少納言]]（せいしょうなごん：御簾を掲げる） … [[明治1892年]]25年（[[1892年明治]]25年）
* 娘深雪（むすめみゆき：浄瑠璃「朝顔日記」より） … [[大正1914年]]3年（[[1914年大正]]3年）
* 花がたみ（はながたみ：謡曲「花筐」より） … 大正5年（[[1915年]]（大正5年）
* 焔（ほのお：謡曲「葵上」より） … 大正8年（[[1918年]]（大正8年）
* [[楊貴妃]]（ようきひ） … 大正11年（[[1922年]]（大正11年）
* [[伊勢大輔]]（いせのたゆう：平安前期の歌人） … [[昭和1930年]]5年（[[1930年昭和]]5年）
* 草子洗い小町（そうしあらいこまち：謡曲および金剛巌の能舞台より） … 昭和12年（[[1937年]]（昭和12年）
** 古歌の剽窃との濡れ衣を掛けられた小町は、その証拠とされる草子を洗って、疑いを晴らしたという題材。
* 雪月花 （三幅対：皇太后御用画） … 1937年（昭和12年（1937年）
* 砧（きぬた：謡曲『[[砧 (能)|砧]]』の妻の端麗な姿を元禄風俗にて） … 昭和13年（[[1938年]]（昭和13年）
* 静（[[静御前]]） … 昭和19年（[[1944年]]（昭和19年）
=== 娘・新妻 ===
[[ファイル:Jo-no-mai by Uemura Shoen.jpg|thumb|『序の舞』（（1936年〔昭和11年、1936年〕）。昭和40年（[[1965年]]（昭和40年）発行の[[切手趣味週間]]の図案に採用されている。]]
* 人生の花 … [[明治1899年]]32年（[[1899年明治]]32年）
** 婚礼の席に向かう花嫁とその母の姿。
* 舞支度（一対） … [[大正1914年]]3年（[[1914年大正]]3年）
* 待月、良宵之図 … 大正15年（[[1926年]]（大正15年）
* 簾のかげ、新蛍 … [[昭和1929年]]4年（[[1929年昭和]]4年）
* 春秋図（一対） … 昭和5年（[[1930年]]（昭和5年）
** うら若い娘たちを春に、やや年長の女を秋に見立てた図。
{{anchor|序の舞|}}
* 序の舞（[[重要文化財]]<ref>[http://www.bunka.go.jp/bsys/maindetails.asp?register_id=201&item_id=10395 国指定文化財等データベース]</ref>） … 昭和11年（[[1936年]]（昭和11年）
** 「なにものにも犯されない、女性のうちにひそむ強い意志」を、静かなうちに凛として気品のある[[仕舞]]「序の舞」を通して描いている。絵のモデルは上村松篁の妻(上村淳之の母)の未婚時代の姿である。
** 後に[[宮尾登美子]]によって書かれた松園の伝記の題名にもなった。宮尾の作品『序の舞』はさらに映像化もされており（映画：：1984年（昭和59年（1984年）、[[東映]]、[[名取裕子]]主演 / テレビドラマ『[[序の舞・新春ドラマスペシャル]]』：：1984年（昭和59年（1984年）、[[テレビ朝日]]、[[大原麗子]]主演）、明治期の周囲の無理解に屈することなく画業を貫いた松園と、それを支えた母勢以の生き方が活写されている。
=== 市井の女性、母の面影 ===
* 母子（ぼし）（[[重要文化財]]<ref>[http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1383 特集陳列 2011年（平成23年）新指定重要文化財]</ref>） … [[昭和1934年]]9年（[[1934年昭和]]9年）
* 青眉（あおまゆ） … 1934年（昭和9年（1934年）
* 晴日（せいじつ） … 昭和16年（[[1941年]]（昭和16年）
** たすきがけで着物の洗い張りをしている女性。
* 夕暮（ゆうぐれ） … 1941年（昭和16年（1941年）
** 障子を開けて、夕暮れの光で針に糸を通そうとしている女性。
* 晩秋（ばんしゅう） … 昭和18年（[[1943年]]（昭和18年）
** 障子の破れを繕っている女性。
== 著書 ==
* 『松園美人画譜』 芸艸堂、[[明治1909年]]42年（[[1909年明治]]42年）
* 『青眉抄』 蒼生社、[[昭和1947年]]22年（[[1947年昭和]]22年）
: 三彩社、[[1972年]]
: [[講談社]]〈講談社文庫〉、[[1977年]]
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