「テンポ・ルバート」の版間の差分

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'''テンポ・ルバート'''({{lang-it-short|tempo rubato}})とは、[[テンポ]]を自由に動かしながら[[演奏]]すること。{{lang|it|rubato}}とは訳せば「盗まれた時間」という意味。元来であり同じテンポ本来的には隣接する音符の音価の一部保つべきとされ奪い、後続す西洋どれかの符に返すことで句を拍上でずらすことを意味していた。こ演奏場合では全体的なテンポは変化は生じな。19世紀以降ではこの概念は退化して、同じ柔軟にテンポを保たないことであ変え。[[楽譜]]には単に{{lang|it|Rubato}}記さいう意味で用いられることがあるようになった<ref>クルト・ザックス 『リズムとテンポ』 音楽之友社、1979年</ref>
 
テュルクの『クラヴィーア教本 』(1789)では「最も普通には、先取または遅延によって音符をずらすことをいう」と記述されているが、実際には古典派の時代を通してテンポ・ルバートの概念は衰退し、単にテンポを厳格にしすぎない程度の意味になっていた。
[[バロック音楽|バロック時代]]初期の作曲家、[[ジローラモ・フレスコバルディ]]は『トッカータ集第1巻』''Toccate e partite d'intavolatura di cimbalo''の序文で「この演奏様式では厳格な[[拍子]]に合わせてはならない」として自由なリズムによる演奏を指示している。当時は[[モノディ]]の流行と共に、非常に自由なテンポ操作がなされていたと考えられる。テンポ・ルバートが再び脚光をあびるのは[[フレデリック・ショパン|ショパン]]の楽曲においてである。テンポ・ルバートは[[マズルカ]]、[[バラード]]、[[スケルツォ]]、[[ワルツ]]、[[ノクターン]]、[[即興曲]]といった、叙情的な作品の演奏において多く用いられる。普通は、フレーズの最初と最後を遅めに、また、強調したい音を長めに演奏するためにその前後を遅めに演奏し、それ以外の場所を速めに演奏する。この場合、完全にテンポが自由というよりは、基本のテンポを設定しておいて、それを基準に遅め、速めにずらす、という手法を採るのが一般的である。なお、ショパンの場合、このようなテンポの変化は楽譜に書かれていないから、演奏者の解釈に任されている。というよりも、テンポの変化が楽譜に書かれていない楽曲ではテンポを演奏者があまり自由に揺らすべきでないとされる器楽曲において、ショパンの楽曲は伝統的に書かれていないテンポの変化を演奏者が付ける習慣となっている、と言ったほうが正しいかもしれない。
 
[[バロック音楽|バロック時代]]初期の作曲家、[[ジローラモ・フレスコバルディ]]は『トッカータ集第1巻』''Toccate e partite d'intavolatura di cimbalo''の序文で「この演奏様式では厳格な[[拍子]]に合わせてはならない」として自由なリズムによる演奏を指示している。当時は[[モノディ]]の流行と共に、非常に自由なテンポ操作がなされていたと考えられる。テンポ・ルバートが再び脚光をあびるのは[[フレデリック・ショパン|ショパン]]の楽曲においてである。テンポ・ルバートは[[マズルカ]]、[[バラード]]、[[スケルツォ]]、[[ワルツ]]、[[ノクターン]]、[[即興曲]]といった、叙情的な作品の演奏において多く用いられる。普通は、フレーズの最初と最後を遅めに、また、強調したい音を長めに演奏するためにその前後を遅めに演奏し、それ以外の場所を速めに演奏する。この場合、完全にテンポが自由というよりは、基本のテンポを設定しておいて、それを基準に遅め、速めにずらす、という手法を採るのが一般的である。なお、ショパンの場合、このようなテンポの変化は楽譜に書かれていないから、演奏者の解釈に任されている。というよりも、テンポの変化が楽譜に書かれていない楽曲ではテンポを演奏者があまり自由に揺らすべきでないとされる器楽曲において、ショパンの楽曲は伝統的に書かれていないテンポの変化を演奏者が付ける習慣となっている、と言ったほうが正しいかもしれない。またショパンは右手のテンポを揺らしても、左手のリズムは常に一定であるべきであることを強調している。つまり時間を盗む(そして返す)という本来の用法に従っていた
 
実際の演奏においては、{{lang|it|Rubato}}と譜面に指示されていないところでテンポを揺らして演奏することも「ルバート」と呼ばれる。
また、ルバート奏法は流派によって異なるかもしれない。ヴァイオリニストのジョシュア・ベルは、イザイの高弟であった師ギンゴルトから教えられた伝統的なフランコ=ベルギー派のヴァイオリニストのルバートとして、(語義通りに)ある音符が他の音符の音の長さを盗むもの、すなわち(盗まれた音符の長さがそのぶん短くなることによって)より長いスパンではテンポを崩さず、辻褄を合わせるように演奏するべきものだと説明している。これは現代でも、ピエール・アモイヤルらの演奏にみとめられる。譜面の上でも、ドビュッシーなどの近代フランス音楽では、{{lang|it|''ad lib''}}とは明確に区別して表記されている。
一方、演奏の流派によってはどちらもあまり区別されず、テンポを自由にデフォルメして演奏される。
== 参考文献 ==
 
{{reflist}}
== 関連項目 ==
* [[アゴーギク]]