削除された内容 追加された内容
Sokku (会話 | 投稿記録)
Sokku (会話 | 投稿記録)
25行目:
 
== 天敵利用の功罪 ==
先述のとおり、伝統的生物的防除の場合は、標的の侵入種を特異的に攻撃しない場合は、非標的に他の生物を攻撃するため、生態系に悪影響がある。しかし、現在では導入しようとしている天敵の攻撃範囲をあらかじめ調べることが推奨されているため、現代的には生態系に悪影響があるような天敵導入はあり得ない。例えば、もっとも近年に日本に戦略的に導入された天敵昆虫であるヨーロッパトビチビアメバチに関しても、対象となる侵入害虫のみしか攻撃しないと考えられている。マングースなどの哺乳類の導入は、その食性幅が広く、一般的に生態系への悪影響があり、推奨されていない。しかし、逆に節足動物の導入の場合は、侵入害虫による生態系への悪影響を防いだ例の方が圧倒的に多い。
天敵を利用した害虫防除は、うまく行けば大変な効果を上げる。何しろ天敵の方で勝手に殖えてどんどん害虫を食ってゆくのだから当然である。特に、移入種の[[昆虫類|昆虫]]を防除する場合、それを捕食またはそれに寄生する昆虫を探してきて持ち込み、効果を上げた例が多数ある。[[イセリアカイガラムシ]]に対する[[テントウムシ|ベダリアテントウ]]、[[ルビーロウカイガラムシ]]に対するルビーアカヤドリコバチなど、今ではこれらのカイガラムシを見るのが難しいほどの防除効果を上げている。
 
そういった場合ではなく、在来の昆虫を相手に天敵を使う場合、全滅に持ち込むことはできない。自然の生物群集では、自分の餌を食い尽くすようでは、自分が絶滅するので、必ずそうはならない仕組みが存在するからである。したがって、天敵利用は、害虫を一定量以下に抑えるか、要所要所で退治するかという形を取る。たとえばハダニのついた枝にハダニを食うカブリダニの入った袋をぶら下げれば、その近辺ではハダニを全滅に持ち込むことが期待できる。
 
ただし、さまざまな問題点も指摘されている。
 
[[病原体]]を利用する場合、[[抵抗力]]を持つ害虫が出現することがあり得る。
 
また、外来の天敵を持ち込む場合、天敵が、目標だけを攻撃するかどうか分からない場合がある。[[沖縄本島|沖縄]]で、[[ハブ (動物)|ハブ]]退治を目的に[[マングース]]を放したのはこの例である。結果として、ハブは減ったかどうか不明で、むしろマングースによる[[ヤンバルクイナ]]など[[固有種]]が食害され、問題となっている。また、[[タヒチ]]や[[ハワイ諸島]]、[[父島]]では[[アフリカマイマイ]]の駆除のために[[ヤマヒタチオビ]]を導入したところ、ヤマヒタチオビはより捕食の容易な現住の陸生貝類を攻撃し、いずれの地域でもほとんどの貴重な固有種が絶滅に追い込まれている。寄生性の昆虫等、天敵がごく狭い攻撃対象を持つものでは、この危険は少なくなるが、それでも、害虫と近縁の自生の昆虫が攻撃される場合があるようだ。
 
== 関連項目 ==