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{{参照方法|date=2011年5月}}
'''永劫回帰'''(えいごうかいき、[[ドイツ語]]: {{Lang-de|ewig wiederkehren)wiederkehren}})または'''同じものの永劫回帰'''(Ewige({{Lang|de|Ewige Wiederkunft des Gleichen}}) とは[[フリードリヒ・ニーチェ]]の思想で、経験が一回限り繰り返されるという世界観ではなく、[[超人]]的な意思によってある瞬間とまったく同じ瞬間を次々に、永劫的に繰り返すことを確立するという思想である。ニーチェは『この人を見よ』で、永劫回帰を「およそ到達しうる最高の肯定の形式」と述べている。
 
== 概要 ==
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しかし、『[[歴史の終わり]]』を書いた[[フランシス・フクヤマ]]らに批判されているように、蓄積している知識や歴史が、近代化という不可逆な方向性を持っているのは社会科学的な事実であり、永劫回帰の思想は人類史的なスタンスから見れば誤りである。歴史は繰り返しているようで、弁証法的に発展しているのである。
 
また、自然科学的観点に立てば、1.世界は[[エントロピー]]増大の法則により常に拡散・多様化していくので類似の状況が再現されてもまったく同じ状況が再現されることはないという[[熱力学]]的見解や、2.有限の系に無限の時間を与えても繰り返しが起こるとは限らないことを発見した[[カオス理論]]、あるいは、3.本質的に不確定性を内包する[[量子論]]など、特に物理学によって永劫回帰を否定することが可能であるとする意見もある。<ref group="注釈">しかし、1.多重宇宙間でのエントロピーの交互やり取り、2.散逸的事象と揺動的事象がマクロスケールと量子スケールにそれぞれ留まる場合、実質的な永劫回帰である、3.多重宇宙間で決定論的である可能性が残されている事、これらを考慮すると十分な論ではない、と言う指摘もある。</ref>ただし、もしかしたら、この宇宙の物理学的なパラメータが繰り返しを許すような値になっているかもしれず、あるいは、発見されていない自然法則が存在するかもしれず、数百億年、数兆年のSFSF的時間軸で見たら、歴史が繰り返されている可能性もゼロではないのかもしれない。だが、それは誰にも証明できないことであり、あくまで空想の域を出ない。
 
また、ニーチェの能動的ニヒリズムは、[[ナチス]]に[[ヴェルサイユ体制]]打破という政治的目的に利用され、結果的にヨーロッパに破滅的な戦災を与えた。戦後、新左翼の若者たちの間でも流行し、彼らの刹那的で、盲動的な暴力行為を煽った。{{独自研究範囲|その反体制に利用されやすい危険性と反省から|date=2011年11月}}、哲学者の[[永井均]]はその敗北の完璧さにおける思想的な意義を賛美しつつも、「ニーチェは思想家としては敗北した。マルクスには復活の可能性があるが、もはやニーチェにはない」と指摘している<ref>{{Harvnb|永井|1998|Ref=CITEREF永井1998|p=11}}</ref>。フランシス・フクヤマも、「ユダヤ的対等願望(奴隷道徳)は、ゲルマン的優越願望(貴族道徳)に勝利した」<ref group="注釈">しかし、ユダヤ教そのものは、ユダヤを神に選ばれた民とする旧約聖書中の選民思想である。</ref>と指摘している。ブッダは「犀の角のようにただ独り歩め」と説き、ニヒリズムの政治化を戒めている。それはニヒリズムがナチスのような破壊衝動や刹那主義につながることを、2500年前から警戒していたのかもしれない。諸行無常だが、だからといって、安易かつ積極的に現状の体制を破壊していいというわけではない。
 
永劫回帰は科学的に確定される現象や政治思想としてではなく、あくまでも実存主義の構えの柱の一つであり、個人の心的現象内によって発生しうるものなのかもしれない。ニーチェは、個人幻想の枠内ならば、人間は因果律も時間軸も超えられることを叫び、個人幻想の絶対的自由を主張したかったとも解釈しうる。これについて、永井均は永劫回帰は思想と言うよりも、ある日突然ニーチェを襲った体験である点を強調している<ref>{{Harvnb|永井|1998|Ref=CITEREF永井1998|pp=169,174-175}}</ref>
 
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{Reflist|group=注釈}}
=== 出典 ===
{{Reflist}}
 
==参考文献==
*フランシス・フクヤマ「歴史の終わり」三笠書房
*{{Cite book|和書
*永井均「これがニーチェだ」講談社現代新書
|author=[[永井均]]
|date=1998-05-20
|title=これがニーチェだ
|series=講談社現代新書
|publisher=[[講談社]]
|isbn=4-06-149401-5
|ref=CITEREF永井1998
}}
*ブッダ「ブッダのことば―スッタニパータ」中村 元 (翻訳)岩波文庫
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