「地上権」の版間の差分
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日本では[[土地]]と[[建物]]とは別々の[[不動産]]であるとの法制をとるが、欧米では「地上権は土地に従う」の法原則から基本的に建物は土地に附合する関係にあるとみられ日本のような借地は例外的とされる<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、175頁</ref>。
なお、日常において「地上権」という語が用いられる場合、民法上の地上権(265条)ではなく、賃貸借に基づく土地使用権や地上物の採取権を指して用いられることもあり注意を要する<ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、226頁</ref>。
=== 地上権ニ関スル法律 ===
明治33年の地上権ニ関スル法律(明治33年3月27日法律第72号)は「本法施行前他人ノ土地ニ於テ工作物又ハ竹木ヲ所有スル為其ノ土地ヲ使用スル者ハ地上権者ト推定ス」(同法第1条)とし、ただし、「第一条ノ地上権者ハ本法施行ノ日ヨリ一箇年内ニ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」と規定していた(同法第2条第1項)。この法律に基づく登記件数は実際には少なかったといわれる<ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、226頁</ref>。
=== 土地賃借権との差異 ===
地上権と同様に土地利用権として用いられる権利に土地賃借権がある。建物所有を目的とする地上権及び土地賃借権は「借地権」として[[借地借家法]]の適用を受ける(借地借家法2条1号)。その結果、土地賃借権についても借地借家法の適用による対抗力の具備、長期の存続期間、更新事由の法定などにより限りなく物権に近づいており('''賃借権の物権化''')<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、265頁</ref>、譲渡性などの点を除いて地上権と土地賃貸借との違いは大きなものではなくなっている<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、175頁</ref>。とはいえ現実に用いられているほとんどの土地利用権は地上権ではなく土地賃借権である<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、265頁</ref>。地上権か賃借権か不明の場合は当事者間の意思解釈
== 地上権の目的 ==
地上権の目的は工作物や竹木の所有である([[b:民法第265条|第265条]])。「工作物」とは、建物、[[道路]]、[[橋梁]]、[[水路]]、[[池]]、[[井戸]]、[[トンネル]]、[[テレビ塔]]、[[ゴルフ場]]、[[鉄塔]]、[[地下鉄]]、[[地下街]]など一切の地上及び地下の施設をいう<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、267頁</ref><ref>川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、195頁</ref><ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、226頁</ref>。また、「竹木」とは植林を目的とする樹木や竹類をいうが、[[
== 地上権の取得 ==
=== 法律行為による取得 ===
==== 地上権設定行為 ====
通常、地上権は地上権設定行為により取得される(設定行為による地上権を'''約定地上権'''と呼
==== 地上権譲渡契約 ====
地上権は譲渡契約によっても取得しうる。後述の地上権者の権利(地上権の処分)を参照。
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==== 取得時効 ====
地上権も取得時効により取得しうる([[b:民法第163条|第163条]]、最判昭45・11・26判時596号41頁、最判昭46・11・26判時654号53頁)。不動産賃借権も時効取得しうることから両者の区別が問題となりうるが、設定行為による場合とは異なり当事者意思によって取得する場合ではないことから原則として地上権と推定すべきとされる<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、268頁</ref>。
==== 相続 ====
地上権は[[相続]]によっても取得される<ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、227頁</ref>。
== 地上権の対抗要件 ==
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: 地上権者は目的の範囲内で土地を使用する権利を有する([[b:民法第265条|第265条]])。地上権者間あるいは地上権者と土地所有者との関係については原則として[[相隣関係]]の規定が準用される([[b:民法第267条|第267条]])。
* 物権的請求権
: 地上権は物権(本権)であるので[[物権的請求権]]が認められる<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、269頁</ref><ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、226頁</ref>。
* 地上権の処分
** 土地賃借権とは異なり、地上権者は所有権者の承諾なくして自由に土地を第三者に譲渡・賃貸しうる(賃貸につき大判明36・12・23民録9輯1472頁)<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、269・271頁</ref><ref>川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、201頁</ref>。したがって借地権の場合、その経済価値は、地上権か賃借権かで影響を受けることとなる([[不動産鑑定評価基準]]各論第1章)。譲渡や賃貸を禁止する特約も可能であるが、禁止の特約には登記方法がなく債権的効力のみであり第三者に対抗することができない(高松高判昭32・5・10下民集8巻5号906頁)<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、271頁</ref><ref>川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、201頁</ref><ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、226頁</ref>。
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* 土地上の工作物・竹木の処分の場合
: 伐採目的での竹木の処分などを除き、土地上の工作物・竹木の処分は原則としてその存立の基盤となっている地上権を伴う
=== 地上権者の義務 ===
* 地代支払義務
: 地代は地上権の要素ではないので、地上権者に地代支払義務を生じるのは当事者間で約定のある場合に限られる(永小作権における小作料とは異なる)<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、271頁</ref><ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法2 物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1996年12月、227頁</ref>。法定地上権における地代については388条後段に定めがある。
: 地代は一時払いか定期払いかを問わない<ref>近江幸治著 『民法講義Ⅱ 物権法 第3版』 成文堂、2006年5月、271頁</ref>。地代が定期払いの場合には[[b:民法第270条|第270条]]から[[b:民法第270条|第276条]]までの規定が準用され、また、その性質に反しない限り賃貸借に関する規定が準用される([[b:民法第266条|第266条]])。判例は266条1項は任意法規であるとするが(大判明37・3・11民録10輯264頁)、学説の多数説は強行法規と解すべきとする<ref>川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、198-199頁</ref>。
: 地代が対抗力をもつには登記を要する(不動産登記法78条2号・3号、罹災都市借地借家臨時処理法17条)。地代の約定を地上権譲受人へ対抗する場合については登記必要説(多数説)と登記不要説があり対立する<ref>川井健著 『民法概論2 物権 第2版』 有斐閣、2005年10月、199頁</ref>。
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区分地上権については設定行為で地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる(269条の2第1項)。第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有している場合にも、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があることを条件に設定可能である([[b:民法第269条の2|第269条の2]]第2項)。
なお、対抗要件として通常の地上権と同様に登記を要する(177条、不動産登記法78条2号・5号)。また、借地借家法の適用もある<ref>遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法3 担保物権 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年1月、226頁</ref>。
=== 区分地上権の価格 ===
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