「円記号」の版間の差分

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<div style="float:right; margin: 10px; padding:30px; font-size: 400%; background-color: #ddddff; border: 1px solid #aaaaff;">&yen;</div>
{{通貨記号}}
'''円記号'''(えんきごう)、つまり '''&yen;''' は、[[日本]]の[[通貨]][[単位]]の[[円 (通貨)|円]]や[[中華人民共和国|中国]]の[[人民元]] (Yuan) などを表す[[通貨記号]]である。金額を表す数値の前に置いて使用する。
 
この円記号は、[[コンピュータ]]での取り扱いに厄介な問題('''円記号問題''')を抱えた[[記号]]のひとつとして知られる。
 
== 円記号の由来 ==
[[幕末]]の英米人の影響で、'''「円」'''は'''「en」'''ではなく'''「yen」'''と綴られることとなった(詳細は[[円 (通貨)]]を参照)。[[ドル]]の習慣に合わせて、その頭文字Yに同様の二重線を入れたものが'''「&yen;」'''の由来であるとする説が一般的である。
 
[[Image:receipt_JPY.jpg|thumb|250px240px|領収書に書かれた円記号]]
[[Image:Yuan sign single.svg|thumb|70px|中国元の[[通貨記号]]]]
 
一方、[[中国]]では本来の通貨単位である'''「[[]]」'''を、[[貨幣]]を表すにふさわしい・[[筆画|画数]]が少ない等の理由から、[[同音異字]]の'''「元」'''に代替した。双方、[[ピンイン]]で'''「Yuan」'''と綴り、この頭文字に横線を1本加えた記号'''「{{Lang|zh|¥}}」'''を[[漢字]]と同じ[[マルチバイト文字|2バイト文字]]として用意し、コンピュータ用の[[文字集合]][[GB2312GB 2312]]に採用した結果、徐々に実社会でも普及した。
 
このように、日中両国で普及した記号は本来[[字体]]が異なるが、[[Unicode]]で[[CJK統合漢字]]を定めた際に、この異なる記号をひとつのコード位置にまとめ、[[フォント]]の違いで使い分けるという対応がなされた。
 
{{節stub}}
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例:&yen;200(200円)
 
また、「&yen;200.-」のように数字の前に円記号、数字の後に[[終止符|ピリオド]]と[[ダッシュ (記号)|ダッシュ]]を入れて、前や後に数字を書き加えられることを防ぐこともある。これは[[ (曖昧さ回避)|銭]]の単位が日常的に用いられていた主に戦前に、例えば「10円50銭」を「&yen;10.50」といったように表記していた名残である。
 
== 中国における用法 ==
[[Image:Yuan sign single.svg|thumb|70px75px|中国人民元の[[通貨記号]]]]
数字の前につけることにより〜元という意味になる。
 
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日本円と特に区別したい場合は、CN{{Lang|zh|&yen;}}またはRMB{{Lang|zh|&yen;}}(人民幣元、Renminbi Yuanの略)と書くことも行われる。
 
==  コンピュータにおける円記号の扱い  ==
===  日本語用文字コードにおける円記号  ===
[[日本語]]用の[[文字コード]]規格である[[JIS X 0201]]では、円記号は[[十六進記数法#表記方法|0x]]5C番地に割り振られている。
 
JIS X 0201は、[[アメリカ合衆国|米国]]で制定された文字コードである[[ASCII]]をベースにした[[国際規格]]の[[ISO/IEC 646]]に基づくものである。ISO/IEC 646は128文字分の領域を持つコード体系だが、このうち12文字は各国で自由に決めてもよい領域とされていた。JIS X 0201で円記号が割り当てられた0x5C番地はこの12文字の1つであり、本家の米国版ASCIIでは[[バックスラッシュ]]({{backslash}})記号が割り当てられていた番地である。
 
従って、ASCIIなどで記述された文書をJIS X 0201によるものと解釈して読むとバックスラッシュ({{backslash}})が円記号(&yen;)に[[文字化け]]することとなり、逆もまた同様である。現在広く用いられている日本語用文字コードの[[Shift_JIS]]などにもJIS X 0201に基づく部分があり、それらでも同じ現象が発生する。
 
バックスラッシュは、[[MS-DOS]]では[[ディレクトリ]]名を区切る記号として、[[C言語]]なら[[文字列]]の中で[[特殊文字]]を意味する記号として扱われるなど、ISO/IEC 646で未定義の文字を、各種[[オペレーティングシステム]]や[[プログラミング言語]]、その他の[[ソフトウェア]]で制御コードとして使用するという誤った使用が一般化してしまった。
 
日本語用の文字コードにはバックスラッシュが存在せず、同じ0x5C番地に円記号が割り当てられているのであるが、これらのソフトウェアでは0x5C番地の文字が制御コードとして扱われるようにされていたため、'''日本語用文字コードでは円記号が同等の制御コードとして解釈される'''ことになった。
 
===  西ヨーロッパ言語用文字コードにおける円記号  ===
西[[西ヨーロッパ]]で使われている文字コードである[[ISO/IEC 8859-1|ISO-8859-1]]は、0x5CはASCIIと同じくバックスラッシュであり、円記号は別の番地0xA5に配置されている。従って、ISO-8859-1の円記号は制御コードとはならない。また、日本語用文字コードで記述された文書をISO-8859-1によるものと解釈して読む場合、やはり、円記号がバックスラッシュに文字化けする。
 
==  Unicodeにおける問題点(円記号問題) ==
日本語用文字コードから[[Unicode]]に変換する際に発生する、円記号の扱いについての問題である。
 
=== Unicodeへの統合 ===
世界の文字コードを単一の体系で包含するためUnicodeという文字コードが生まれた。Unicodeに世界のあらゆる文字を含ませ、あらゆる文書言語をUnicodeで表現できるようにすることが目指された。世界の各種文字コードの文字はUnicodeの文字と対応付けられ、それに従って各種文字コードからUnicodeへの変換を可能にするものであったが、円記号の扱いについては問題があった。
 
前述のとおり、日本語用の文字コードでは円記号が0x5Cに位置し、制御コードとして扱われる。それに対し、西ヨーロッパ言語用のISO-8859-1は0x5C(バックスラッシュ)とは異なる番地の0xA5に円記号が配置されており、円記号は制御コードとして扱われない。したがって、これらの文字コードで書かれた文書をUnicodeに変換し、いずれの円記号をもUnicodeの円記号(U+00A5)にマッピングした場合、変換後の円記号はバックスラッシュ(U+005C)と同等の制御コードと見なすべき'''日本版の円記号'''なのか、文字の一種でしかない'''ヨーロッパ版の円記号'''なのか判別できなくなってしまうのである。また、Unicodeの円記号(U+00A5)を制御コードと見なさないものとすれば、'''制御コードとして使われている円記号はU+005C(バックスラッシュ)に'''、'''そうでないもの(通貨単位などを表すために使われているもの)はU+00A5(円記号)に'''変換せねばならないが、この処理は困難である。
 
=== 現実的解決 ===
この問題に対する現実的解決のひとつが、[[マイクロソフト]]製のOS(OS(英語版を除く)で実装されている変換法である。この変換法では、日本の円記号はUnicodeのバックスラッシュ(U+005C)に変換される。そして、[[日本語]]用の[[フォント]]ではバックスラッシュ(U+005C)を円記号として表示してしまうのである。
 
賛否両論の対応ではあったが、旧来のソフトウェアを捨て去ることなくUnicodeを利用できる現実的な方法として広く使われている。
 
== Shift_JISにおける問題 ==
Shift_JISでは文字の2バイト目が0x5C(円記号・バックスラッシュ)と成りうるため、当該箇所が誤って制御文字と認識されてしまい、問題が発生することがある。この問題の詳細については、[[Shift_JIS#2バイト目が0x5C5C等にりうることによる問題]]を参照すること。
 
== 文字実体参照による出力 ==
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== 参考文献 ==
* S. Gorn, R. W. Bemer, J. Green: American Standard Code for Information Interchange, Communications of the ACM, Vol.6, No.8 (1963(1963年8月), pp.422-426.
* 情報処理交換用 新標準コード案 決定さる, 情報処理, Vol.6, No.6 (1965(1965年11月), pp.173-174.
* 海宝顕: 電子計算機と情報処理におけるコード標準化の現況と課題, IBM Review, 第17号 (1967(1967年7月), pp.167-176.
* R. W. Bemer: A View of the History of the ISO Character Code, The Honeywell Computer Journal, Vol.6, No.4 (1972(1972), pp.274-286.
* 山下良蔵: MS-DOSの漢字機能, ASCII, Vol.7, No.5 (1983(1983年5月), pp.228-230.
* The Unicode Standard, Version 1.0, Vol.1, Addison-Wesley, Reading, 1991.