「白血病」の版間の差分

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Jade0416 (会話 | 投稿記録)
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== 原子爆弾と白血病==
1978年の鎌田らの研究(Kamada N,et al:Blood 51:843,1978)によると、造血幹細胞に生じた染色体の突然変異(フィラデルフィア染色体またはbcr-abl遺伝子変異)によって1個の慢性骨髄性白血病の幹細胞が発生し、たった一つ発生した白血病幹細胞が6年後には、末梢血での白血球数が1万個/μl(基準値は3500-9000程度)になるまで数を増やす。血液分画では好塩基球が増加し、好中球と、時には好酸球も増加する。白血球数が2万個/μlを超えると芽球も出現して慢性骨髄性白血病の状態が明白になる<ref name="阿部p225">阿部『造血器腫瘍アトラス』p.225</ref>。
 
1945年、広島と長崎が[[原子爆弾]]に被爆したが、その被曝者では5年後の1950年から10年後の1955年にかけて慢性骨髄性白血病の発生頻度が著明に増加した<ref name="できったp130">村川『新・病態生理できった内科学(5)血液疾患』p.130</ref>。被曝した放射線量が0.5Gy<ref group="註">胸部レントゲン撮影で被曝量は0.3mGy、胸部CT検査の被曝量は10mGyなので-出典、[http://www.takatsuki.aijinkai.or.jp/department/radiology3.html 高槻病院・放射線科] 0.5Gyという被曝量は胸部レントゲン撮影の千倍以上、胸部CT検査の50回分を一度に受けたのと同等程度になる。</ref>以上の被曝者では通常の数十倍の慢性骨髄性白血病の発生<ref group="註">慢性骨髄性白血病の通常の発症率は年間10万人あたり1-1.5人程度である。前述</ref>が記録され<ref name="小川p123">小川『内科学書』p.123</ref>、原爆の被曝から5-10年後に発症はピークを迎え、その後には発症率は急激に低下し通常レベルになっている<ref name="押味p22">押味『WHO分類第4版による白血病・リンパ系腫瘍の病態学』p.22</ref>。
 
放射線影響研究所の調査では、全白血病では原爆被爆後6-8年の間が発症率のピークとされる。放射線影響研究所の詳細なデータは1950年の国勢調査から始まり、それ以前には推計もはいるが被曝2年後から白血病は増え始めていると考えられている。放射線影響研究所が被曝者約5万人を1950年-2000年までの50年間観察したところ、被爆者5万人×50年間の中で204人が白血病で死亡し、それは自然な白血病死亡率とくらべて46%の過剰発生であった。当然、骨髄への被曝線量が多いほど白血病の発症率は高く、1Gy以上の被曝者では約2700人中56人が放射線が原因の白血病で亡くなったと考えられ、0.005-0.1Gyの被曝者約3万人では白血病での死亡は69人、その中で被曝していなくても発症・死亡したであろう自然発生率を勘案して除去した過剰発生は4人とされている。被曝者の白血病はAML,ALL,CMLで顕著であり、CLLは目立たない<ref group="註">この白血病の過剰発生数は1950年以前の数字は入っていないので実際には過剰発生はこれより多いと思われる。ただし発症のピークは調査開始後の6-8年後になっているので1945-1950年の数字が入っていても過剰発生のオーダー(桁)は変わらないと考えられる。</ref><ref name="放射線影響研究所・原爆被爆者における白血病リスク">[http://www.rerf.or.jp/radefx/late/leukemia.html 放射線影響研究所・原爆被爆者における白血病リスク]2011.8.9閲覧</ref>。(被曝量の単位については脚注<ref group="註">被曝量を表す単位はGy(Gy(グレイ)のほかSv(Sv(シーベルト)が用いられる。SvはX線、γ線についてはGyと同じである。Sv=補正係数×Gyとなる。補正係数はX線、ガンマ線、ベータ線は 1、 陽子線は 5、 アルファ線は 20、 中性子線はエネルギーにより 5 から 20 までの値をとる。原爆の直接被爆では中性子線も浴びるので0.1Gyの被曝の影響は0.1Sv=100mSv(1Sv=100mSv(ミリシーベルト)よりは大きくなる。胸部CT検査はX線の検査なので胸部CT検査1回での被曝量は10mGy=10mSvになる。</ref>を参照のこと))。
 
原爆ではないが、医療行為でも[[強直性脊椎炎]]患者で脊椎に放射線照射を受けた者、[[子宮頸癌]]に対しての放射線治療で骨髄に放射線を浴びた者では数年後に慢性骨髄性白血病の発症率が高くなっていることが報告されている<ref name="三輪血液病学p1460">浅野『三輪血液病学』p.1460</ref>。ただし、これらの放射線被曝量は日常生活ではありえない放射線量であり、これらの放射線が原因と思われる慢性骨髄性白血病は慢性骨髄性白血病患者全体の中では例外と言えるほど少なく、大半の慢性骨髄性白血病の発生原因は不明である<ref name="三輪血液病学p1460"/>。