「ゴート語」の版間の差分

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ゴート語の大半の動詞は、インドヨーロッパ語族の動詞活用のうち幹母音型 ([[:en:Athematic|en]]) と呼ばれるタイプに従う。幹母音型と呼ばれるのはこの型ではインド・ヨーロッパ祖語で*eまたは*oと再建される母音が語根と語尾のあいだに挿入されるためである。このパターンはラテン語とギリシア語にも存在する。
 
* ラテン語 leg-i-mus ("「我々は読む」"):語根" leg-"+幹母音" -i-" (<*e)+人称語尾" -mus"
* ギリシア語 {{lang|el|λύ-ο-μεν}} ("我々は解く"):語根" {{lang|el|λυ-}}" +幹母音'' {{lang|el|-ο-}}" +人称語尾" {{lang|el|-μεν}}"
* ゴート語 nim-a-m ("「我々は受け取る」"):語根" nim-"(独:nehmen)+幹母音" -a-" (*oから)+人称語尾" -m"
 
他にゴート語には、無幹母音型 ([[:en:Athematic|en]]) と呼ばれる動詞変化がある。これは語根に直接的に語尾が付くものであり、ギリシア語とラテン語同様ゴート語でも造語力はなく古い形式の化石としてしか存在しない。これが例証されるもっとも重要なものが[[コピュラ動詞|コピュラ]]で、ギリシア語、ラテン語、サンスクリット、ほか多数のインド・ヨーロッパ語でも無幹母音型変化である。
 
ゴート語の動詞は、名詞と形容詞のように、強変化型の動詞と弱変化型の動詞に分けられる。弱変化動詞は、接尾辞-daまたは-taを付けることによって過去形の特徴が付与され、並行して過去分詞に-þ / -tが伴う。強変化動詞は、語根の母音を置き換えることにより過去時制を表すか、語根の最初の子音を二重にするが、いずれにせよ接尾辞を加えることはない。同様のものはギリシア語とサンスクリット語の[[完了形|完了時制]]に見られる。この二分法は、現在のゲルマン語派言語にも残っている。
* 弱変化動詞 (「持つ」)
* 強変化動詞 (「与える」)
 
{| class="wikitable"
|-
!rowspan=2| ||colspan=3|弱変化「持つ」||colspan=2|強変化「与える」
|-
!||不定詞||過去形||不定詞||過去形||過去分詞
|-
|ゴート語||haban||habái'''da'''||habái'''þ'''s||g'''i'''ban||g'''a'''f
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ゴート語の動詞は、次のような形態を持つ。
* [[態]]:[[能動態]][[中動態]]
* [[数_(文法)|数]]:単数・双数・複数(双数には3人称はない)
* [[時制]]:現在・過去
* [[法 (文法)|法]]:直説法接続法(形態上は希求法([[:en:Optative mood|en]])に由来)命令法
* 現在不定詞現在分詞過去受動分詞
ただし、全ての時制と人称がすべての態と法を示すいう訳ではない。いくつかの動詞変化は助動詞を伴う。
 
最後に、過去現在動詞(preterit-present verb)と呼ばれるものがある。古いインド・ヨーロッパ諸語では現在時制として解釈し直された完了時制である。ゴート語のwáitは、インド・ヨーロッパ祖語の*woid-h<sub>2</sub>e(「見る」の完了時制)に相当し、これはサンスクリットでの同根語のvedaとギリシア語の{{lang|el|(Ϝ)οἶδα}}に一致する。双方とも、語源的には「私は見る」の完了を意味するが、実際には「私は知っている」という過去現在としての意味である。ラテン語はいくつかの同じ決まりを受け継いでいる。(例)nōuī(「私は知った」と「私は知っている」)。過去現在動詞は他にもaihan(「所有する」)やkunnan(「知っている」)などがある。