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[[Image:Pocketfilm.jpg|thumb|110フィルムのカートリッジ(裏面・表面)。フジカラー200の24枚撮(生産終了)。]]
'''110フィルム'''(ワンテンフィルム<ref name="110フィルム_大辞泉">{{Kotobank|110フィルム|2=デジタル大辞泉}}、2011年12月20日閲覧。</ref>)は、[[スチル写真]]用の[[フィルム]]の規格。[[カートリッジ]]に充填されたタイプの[[16mm]]幅の[[写真フィルム]]である<ref name="110フィルム_大辞泉" />。[[スチル写真]]用であが充填されており、画面サイズは13×17mmである。日本では'''ポケットフィルム'''などとも呼ばれ、110フィルム用の[[写真機]]を'''110カメラ'''(ワンテンカメラ<ref name="110カメラ_大辞泉">{{Kotobank|110カメラ|2=デジタル大辞泉}}、2011年12月20日閲覧。</ref>)、'''ポケットカメラ'''などと呼ぶ。[[1972年]]に[[コダック]]が導入した規格であり、先行する{{仮リンク|126フィルム|en|126 film}}より小さい。
 
== 略歴・概要 ==
[[Image:110-film-negative.jpg|thumb|350px|現像済みネガ。この写真にあるフィルムストリップのサイズは {{convert|111|x|16|mm|abbr=on}}である。]]
[[プラスチック]]製のカートリッジにフィルムが格納されている。フィルムには裏紙がついており、撮影枚数がフィルム後部に空けられた部分に表示される。この窓の横には通常フィルムタイプ(メーカー・枚数・感度)が貼り付けられており、カメラにはこれらを外部から確認できるよう、窓が設けられており、カメラ側にカウンターを設ける必要がない。カートリッジ式のためカメラへの脱着も容易で、初心者でも簡単に扱える。フィルム格納側と巻き取り側とにマガジンを備える、いわゆるダブルマガジン構造であり、フィルムは巻き戻す必要はなく、カートリッジごと現像業者に依頼する。現像済みの110フィルムはカートリッジを取り外され、フィルムストリップの状態で戻ってくる。フィルムには出荷時点でフレーム線とフレームナンバーが焼付けされた、現像をする業者にとってより簡単かつ能率的であることを意図した機能である。以上の特徴は、126フィルムのそれをほぼそのまま受け継いでいる。
110フィルムは、1972年(昭和47年)、[[ポケットインスタマチック]]カメラとともにコダックが発表したものである。1963年(昭和38年)に[[インスタマチック]]カメラとともに発表された126フィルム(画面サイズ26×26mm)と入れ替わっての登場である。このポケットサイズの写真機は、すぐに人気を勝ち取り、市場において競合していた[[ミノルタ16シリーズ]](1957年発売)のような{{仮リンク|超小型写真|en|Subminiature photography}}とその地位を入れ替えた。
 
[[Image:110film.jpg|thumb|切り欠きのないISO400フィルムのカートリッジ。感度を自動検出するカメラで使用するため、手で切り欠きを作った例。]]
同フィルムはプラスティック製のカートリッジに完全に収納されており、フィルムが前に送り進められているときには画像を記録する。裏打ちした紙に、フレームナンバーとフィルムタイプがカートリッジの裏側にある窓を通して見える。フィルムは巻き戻す必要はなく、カメラからの出し入れの方法もとても単純である。あらかじめ露光しているフレーム線とフレームナンバーは、焼付けをする業者にとってより簡単かつ能率的であることを意図した機能である。
110フィルムのカートリッジには、一端にプラスティック製のタブがついている。このタブは感度検知用に利用されており、タブの下部が切り欠かれていれば高速度、切り欠きがなく長ければ低速度となっていて、一般に高感度側はISO400、低感度用はISO64 - 125用の設定に、カメラの側の感度が自動的に設定される。ただし、ISO400の110フィルムは110規格登場時には発表されていなかったので、初期のカメラにはこの設定機能がない。また、[[トイカメラ]]に近い安価な製品にも装備されていないことがほとんどである。ただし、末期にコダックが製造したISO400のフィルムには、このタブの切り欠きがなく<ref>[http://www.frugalphotographer.com/cat110.htm Frugal Photographer]</ref>、適正スピードを感知させるためには、ユーザーがナイフ等で切り欠きを作らねばならなかった(右写真)。
 
110カメラは、一般に、チープなつくりをしており、平凡なレン画面サイと基本的な露出制御しかもたない。110フィルムの小さなネガフィルムはいため、うまく引き伸ばしをすることがなかなか難しい。110フィルムといえば、粒子が粗く、シャープさに欠けた仕上がり、とされている。カートリッジ自体がフィルムをフラットに保てず、高品質のネガを得られないものだという誤解につながっている。
後に登場する[[ディスクカメラ|ディスクフィルム]](1982年発売)やAPS([[アドバンストフォトシステム]]、1996年発売)とは異なり、現像済みの110フィルムはカートリッジを取り外され、フィルムストリップの状態で現像業者から戻ってくる。
 
== 略歴 ==
コダックは1994年(平成6年)には、110カメラの生産をやめている<ref>[http://www.kodak.com/global/en/consumer/products/techInfo/aa13/aa13.pdf ]、[[コダック]]、2011年12月20日閲覧。</ref>。
110フィルムは1972年(昭和47年)に、対応カメラ([[ポケットインスタマチック]]カメラ)とともにコダックが発表したものである。それ以前に発売されていた[[126フィルム]]([[インスタマチック]]・画面サイズ26×26mm)の特徴を継承しつつ小型化等がはかられている。110フィルムとそれを使用するカメラは、すぐに人気を勝ち取り、多くのメーカーの参入もあって、インスタマチックや、[[ミノルタ16シリーズ]]など従来市場にあった各社独自規格の小型カメラを代替した。
 
高級なカメラも登場したが、35mm判カメラの低価格化・小型化の進展により、次第に安価な機種のみの製造へとシフトした。1980年代半ばには、ほとんどの著名なカメラメーカーが製造を中止している。ただし、その後も輸入された簡単な構造のカメラが、雑貨として販売されていた。また、コダックは1982年(昭和57年)にディスクカメラを発表して、簡便なカメラの主軸をそちらへ移したが、21世紀にも110カメラの出荷を継続している<ref>[http://www.kodak.com/global/en/consumer/products/techInfo/aa13/aa13.pdf ]、[[コダック]]、2011年12月20日閲覧。1999年現在のリストだが、終売になっていない110カメラ("ON THE MARKET TO"が空欄)がいくつか見える。</ref>。
アグファフォトは2008年(平成20年)12月、コダックは2009年(平成21年)3月に110フィルムの製造販売を終了した<ref>[http://www.superheadz.com/110/news.html 110 filmに関する重要なお知らせ]、[[パワーショベル (企業)]]、2011年12月20日閲覧。</ref>。[[富士フイルム]]は、同年9月、110フィルムの生産を終了した<ref>{{cite web|title=Sayonara 110 – Fujifilm discontinues 110 colour negative film|url=http://www.japanexposures.com/2009/10/05/sayonara-110-fujifilm-discontinues-110-colour-negative-film/|work=|archiveurl=http://www.webcitation.org/5kLgT5ozh|archivedate=2009-10-07|deadurl=no|accessdate=2009-10-05}}</ref>。イタリアの{{仮リンク|フェッラーニア|en|Ferrania}}も同年に生産終了したとされており<ref>[http://www.frugalphotographer.com/info-110.htm The 110 "Pocket Instamatic" format] {{en icon}}, 2011年12月20日閲覧。</ref>、少なくとも2011年(平成23年)12月現在では、すでに生産終了したものと公式に述べられている<ref>[http://ferrania.jp/aboutus.html Ferrania社について]、{{仮リンク|フェッラーニア|en|Ferrania}}、2011年12月20日閲覧。</ref>。
 
一方、継続して出荷されていた安価なカメラは、粒状感が目立つ110フィルムの特性も相まって、[[トイカメラ]]として一部で支持を受けた。カメラがない中、1990年代末期にコダックが126やディスクフィルムの製造を中止した以降も、これら一部の根強い需要により110フィルムの供給が続いていた。しかし、アグファフォトは2008年(平成20年)12月、コダックは2009年(平成21年)3月に110フィルムの製造販売を終了した<ref>[http://www.superheadz.com/110/news.html 110 filmに関する重要なお知らせ]、[[パワーショベル (企業)]]、2011年12月20日閲覧。</ref>。最後に残った[[富士フイルム]]の製品も、同年9月、110フィルムの生産を終了した<ref>{{cite web|title=Sayonara 110 – Fujifilm discontinues 110 colour negative film|url=http://www.japanexposures.com/2009/10/05/sayonara-110-fujifilm-discontinues-110-colour-negative-film/|work=|archiveurl=http://www.webcitation.org/5kLgT5ozh|archivedate=2009-10-07|deadurl=no|accessdate=2009-10-05}}</ref>。イタリアの{{仮リンク|フェッラーニア|en|Ferrania}}も同年に生産終了したとされており<ref>[http://www.frugalphotographer.com/info-110.htm The 110 "Pocket Instamatic" format] {{en icon}}, 2011年12月20日閲覧。</ref>、少なくとも2011年(平成23年)12月現在では、すでに生産終了したものと公式に述べられている<ref>[http://ferrania.jp/aboutus.html Ferrania社について]、{{仮リンク|フェッラーニア|en|Ferrania}}、2011年12月20日閲覧。</ref>。よって2012年現在では、フィルム製造は中止され、店頭販売もほぼ行われていない状況にある
 
2010年(平成22年)に{{仮リンク|アドックス|en|ADOX}}が発表したところによれば、翌2011年(平成23年)の中盤に新発売される白黒フィルム'''アドックスパン400'''では110フィルムも発売され、コダック製等が生産終了後久々の、また唯一の110フィルムとなるであろうということであった<ref>[http://www.adox.de/english/ADOX%20Films/Premium/ADOX-PAN-400/PAN400.html ADOX PAN 400] {{en icon}}, {{仮リンク|アドックス|en|ADOX}}、2011年12月20日閲覧。</ref>。しかしその後問題が発生し、発売は延期され、明確な日程はアナウンスできないとされている<ref>[http://www.adox.de/english/ADOX%20Films/110/110.html ADOX 110 Film]2011年12月25日閲覧。</ref>。
 
== 設計・技術110カメラ ==
ほとんどの製品は機能が省略されており、平凡なレンズ(トリプレットが多い)と基本的な露出制御しかもたない。後期に発売された[[トイカメラ]]では、単玉のレンズに焦点・絞り・シャッター速度とも固定であるのが一般的である。ただし、初期のカメラメーカーからは、高性能のマルチエレメントレンズや、電子制御露光システム、[[レンジファインダー・カメラ|連動距離計を備えた]]ものや、[[一眼レフカメラ]]など、洗練された高級な製品も提供されており、高画質の写真を生み出しうる性能を備えていた。これらの機種は、いまなお超小型写真愛好家に対する魅力を維持している。
[[Image:110film.jpg|thumb|ISO400フィルムのカートリッジは、高性能カメラが適切なフィルム速度を検出できるよう改良されている。]]
[[キヤノン]]や[[ミノルタ]]、[[ミノックス]]、[[ペンタックス]]、[[ローライ]]、[[フォクトレンダー]]等の割安生産・低価格カメラの分野にもっとも密接に関わっているフィルム規格であるが、コダックは、高性能のマルチエレメントレンズや、電子制御露光システムを備えた、洗練されて高価な110カメラを提供した。そのため、110フィルムは高画質の写真を生み出しうる性能を備えていた。極めて小型なこれらの機種は、いまなお超小型写真愛好家に対する魅力を維持している。
 
110カメラは、一般に、チープなつくりをしており、平凡なレンズと基本的な露出制御しかもたない。110フィルムの小さなネガフィルムは、うまく引き伸ばしをすることがなかなか難しい。110フィルムといえば、粒子が粗く、シャープさに欠けた仕上がり、とされている。カートリッジ自体がフィルムをフラットに保てず、高品質のネガを得られないものだという誤解につながっている。
 
コダックの指定によれば、110フィルムのカートリッジには、一端にプラスティック製のタブがついている(右写真)。カメラの設計技師は、このタブを使用して、フィルム速度を感知させるオプションを設け、高速度・低速度の切り替えができるようにした。タブが短ければ高速度、長ければ低速度である。コダックは、フィルム製造業者に、製品固有の速度の高低の決定を委ねたのである。この一歩進んだ機能は、一部の高価な写真機のみが搭載した。
 
コダックが製造した最後の110フィルム製品は、ISO400の感度であり、低速を感知させるカートリッジに充填されたものであった<ref>[http://www.frugalphotographer.com/cat110.htm Frugal Photographer]</ref>。適正スピードを感知させるために、カートリッジのタブを手で修正するようになっていた。
 
[[エステス インダストリーズ|エステス・インダストリーズ]]の[[モデルロケット]]には、単純な110カメラを先端に搭載した{{仮リンク|アストロカム|en|Astrocam}}があり、もっとも特筆すべき存在であるとともに、長期にわたり販売されている。アストロカムの110カメラにおけるシャッターは、ロケット本体から先端部分が切り離されるときに切られる仕組みになっている。
 
== フィルムのタイプ ==
いずれの110フィルム規格は一般もポジフィルムカラーネガの製品存在すほとんどであるが、コダックは、'''コダクローム110'''という・エクタクロームなどの[[カラーリバーサルフィルム]]や[[モノクロフィルム]]を1982年(昭和57年)まで製造していた<ref name="slide110">Marcus, Ted R., ''[http://www.tedsimages.com/text/comment8.htm APS, 110, "Disc," and Formats du Jour]'', Ted Marcus' Virtual Light Table. Article copyright date 2006, retrieved 2006-11-09.</ref><ref name="slide110b">Marcus, Ted R., ''[http://www.tedsimages.com/text/eurfd.htm Europe Through the Front Door]'', Ted Marcus' Virtual Light Table. Article copyright date 2004, retrieved 2006-11-09.</ref> 。また、富士フイルムも医療機器用として、リバーサルフィルムを特定の流通ルートで供給していた。
 
スタンダ110のリバドな[[映写機]]に収まるスタンダードなイズルフィルム用[[スライド (写真)|スライド]]があマウントは当初、35mm判などとは異なように、110スライドフィルムも小型スラのサドに現像することがきた。それにはあり特別な専用の{{仮リンク|回転式スライド映写機|en|Carousel slide projector}}が必要であっ発売されてい<ref name="slide110" />超小型スライドは超小型のマウントに収められ通常の映写機に小型マウントをかけるためのアダプターも存在した。このアダプターは完全に満足のいくものとは言えなかった。110スライドフィルム専用のプロジェクターでは、明るさの増したランプを使用することで改善された。後期には、35mm判と同じサイズのマウントが使用されている
 
== ギャラリー ==
<gallery>
File:Two Rolls.jpg|コダック、24枚撮り。
File:Agfamatic Pocket-4000.jpg|アグファマチック4004000
File:Кассета фотоаппарата Киев-30.JPG|[[キエフ (カメラ)|キエフ30]]、25枚撮り。
File:Minolta 110 Zoom SLR 2.jpg|{{仮リンク|ミノルタ110ズームSLR|en|Minolta 110 Zoom SLR}}。[[ズームレンズ]]搭載一眼レフの高級タイプ
File:Agfamatic Pocket-4000.jpg|アグファマチック400。
File:Kiev-vega.jpg|キエフ・ヴェガ。
File:Minolta 110 Zoom SLR 2.jpg|{{仮リンク|ミノルタ110ズームSLR|en|Minolta 110 Zoom SLR}}。
</gallery>